• メールで送る

食のちから 第48回:冷や汁

食のちから 体を養い心を磨く

監修

森 松平先生(もり しょうへい)[郷土料理研究家]

昭和13年生まれ。宮崎市内で郷土料理店を営みながら、郷土料理の研究と創出に情熱を傾ける。宮崎の生活文化企画編集委員会委員を務め、新聞・雑誌などでの執筆も多い。県が制作した書籍『みやざきの味と花101』(宮崎日日新聞社)部会委員。著書『黒潮の恵み―杉の子味ごよみ』(鉱脈社)で宮日出版文化賞受賞。

宮崎に伝わる夏の滋養食

ご飯にかけてさっぱりいただく「冷や汁」は、
夏の暑い盛りに欲しくなる味覚の一つ。
地域によって作り方もいろいろですが、
よく知られているのが九州・宮崎の「冷や汁」です。
素朴な料理に見えて、実はその調理法には
夏の健康を支える栄養成分をバランス良く
摂るための知恵と工夫が凝縮されています。

高温多湿の風土で生まれた郷土料理

 宮崎では、夏の定番料理として親しまれている冷や汁。その起源には諸説ありますが、郷土料理研究家の森松平さんに伺いました。
 「冷や汁と似た料理は、瀬戸内海の港町に〝さつま〟という名前で残っており、その名から江戸時代に鹿児島から伝わったと推察されます。当時、年貢米の取り立てでなかなか米を食せなかった農民が、麦飯をいかに旨く食べるか、高温多湿の農繁期をいかに簡単な食事で乗り切るか、いろいろと工夫を重ねたものが、その後も郷土食として受け継がれてきたのでしょう」

食欲が落ちる時期、夏の健康維持にうってつけ

 冷や汁の材料は身近な物ばかりですが、実際は手の込んだ料理です。
 頭と腹わたを取った煮干しと麦味噌をすり鉢でよくすりつぶし、火に当てて焼き味噌を作ります。だし汁でのばし、具には、焼いてほぐした魚の干物と豆腐により、動・植物性のタンパク質が加わります。きゅうり、みょうが、青じそなど、体内に熱をためない夏野菜をふんだんに加えることで、ビタミン・ミネラルも補えます。さらに、ゴマに含まれるセサミンや、麦味噌の植物由来の乳酸菌は、夏をのりきるための頼もしい成分です。
 麦飯にたっぷりかければ食が進み、エネルギー源の炭水化物がしっかり摂れます。栄養的にも実に理にかなった滋養食といえるでしょう。

冷たい汁と熱い麦飯が生む絶妙な旨さが後をひく

 地域や家庭によってそれぞれ具や味付けの特徴がありますが、冷たい汁を温かい麦飯にかけて食べるのが伝統的な食べ方。
 「熱い麦飯に冷たくした汁をかけると、ちょうど人肌のぬくもりになり、焼き味噌の香ばしさが立って絶妙な味のハーモニーが生まれます。冷えた飯では、冷や汁の味がよくなじみません」(森さん)
 ほどよい温度と食感でさらりと流し込め、後をひく美味しさ。体をやさしく冷ましてくれる冷や汁で、暑さを乗り切りましょう。この夏、ぜひ試してみませんか?

元気と涼を呼ぶ夏の味 「冷や汁」の作り方

元気と涼を呼ぶ夏の味 「冷や汁」の作り方

美味しくつくるコツは、下準備をていねいにすること。煮干しは下ごしらえをし、野菜は水にさらしてあくを抜く、といったひと手間で、風味も口当たりもぐんと良くなります。

材料(4人分)

かけ汁

煮干し ・・・・約50g
麦味噌 ・120~150g
だし汁(または水) ・・・・720cc

薬味

みょうが ・・・・2本
青じそ ・・・・4枚
切りゴマ ・・・・適宜

干物(アジ・かますなど) ・・・・適宜
木綿豆腐 ・・・100g
きゅうり ・・・・1本
麦飯(またはご飯) ・・・2合分

作り方

作り方

(1)
煮干しの頭と腹わたの部分を取り除いてすり鉢ですり、粉末状にする。
(2)
麦味噌をすり鉢ですり、(1)を加えてさらによくすり合わせたら、クッキングペーパーにのばし、オーブントースターなどでうっすら焼き目がつく程度に火を通す。
(3)
冷やしておいただし汁で、(2)を好みの濃さに溶く(普段の味噌汁よりやや濃い目が目安)。
(4)
きゅうりは0.5mmぐらいの小口切りにする。みょうがと青じそは千切りにし、水にさらしてあくを抜く。豆腐は手でつぶし、干物は焼いて身をほぐす。
(5)
よく冷やした(3)(4)と切りゴマを加え、温かい麦飯にたっぷりかける(麦飯に具や薬味をのせ、冷たいかけ汁をかけてもよい)。

※ 麦味噌が定番ですが、米味噌を代用しても美味しくいただけます。

地域によって加える具もいろいろ

 水で戻した切干し大根や焼きなすを具に加えたり、落花生をすりつぶして薬味にする地域や、にらや青ねぎ、とうがらしを入れる家庭もあります。

 また、冷や汁用の焼き味噌は、そのまま温かいご飯にのせたり、もろきゅうのつけ味噌にしても美味。茶碗に焼き味噌を入れて熱いお茶を注いだ味噌汁を、南九州では「茶節」と呼んでいます。