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食のちから 第51回:氷頭なます

食のちから 体を養い心を磨く
参考/『あおもりの春夏秋冬 郷土の料理』(千葉彩子著 東奥日報社)
取材協力/青森県東京事務所

美のちからを秘めた郷土食

秋になると産卵のために、
生まれた川に戻ってくる鮭。
昔から〝捨てるところのない魚〟といわれ、
身や卵以外の部分も工夫して食されてきました。
その一つが、頭部を使った青森の「氷頭なます」。
実は今、この郷土食に熱い視線が集まっています。
その理由は、「氷頭」には美肌を支える
自然のちからが凝縮しているからです。

地元ならではの伝統的な軟骨料理

 「氷頭」とは、鮭の鼻先から目の部分までの軟骨と皮の部分。氷のように透明感があることからそう呼ばれています。食材としての歴史は古く、平安時代に朝廷へ献上された記録が残っています。
 「氷頭なます」は、この氷頭を薄く切って、細切りにした大根やにんじんと一緒に甘酢に漬けたものです。青森では郷土食として知られており、お好みでイクラやから炒りしたタラコなどを加えていただきます。
 氷頭のコリッとした小気味いい食感が身上で、お酒の肴にぴったり。北海道や岩手県、新潟県などでも作る地域が多く、紅白の縁起物として正月の祝い膳にもよく登場します。

注目の美肌成分「プロテオグリカン」!

 氷頭には、コラーゲンやコンドロイチンなど、肌や軟骨に大切な成分が豊富に含まれていますが、さらに近年、注目を集めているのが、プロテオグリカンという成分です。
 氷頭に含まれるプロテオグリカンには、年齢とともに減少するコラーゲンやヒアルロン酸をサポートする働きが確認されたことから、美容分野の機能性素材としても大いに期待されています。

郷土食が導いた新しい美の可能性

 実は、このプロテオグリカン研究が進むきっかけも「氷頭なます」でした。氷頭からどうやって成分を抽出するかが課題でしたが、なますにすると氷頭が軟らかくなることが大きなヒントに。酢の効果でプロテオグリカンが溶け出すことが判明し、抽出に成功しました。
 郷土食に使われていた食材にこそ、美肌を支えるすごいちからが秘められていたのです。

新巻鮭で作る青森の郷土食「氷頭なます」

秋鮭の多くは塩漬けにされ、新巻鮭として店頭に並びます。先人の保存の知恵ですが、今も新巻鮭の頭で作る家庭は多いようです。

材料(5人分)

新巻鮭の頭 ・・・・・ 1個
・・ 1/2カップ
大根 ・・・・・ 250g
にんじん ・・・・・ 30g
・ 小さじ1と1/2
漬け汁用  
・・・ 大さじ5
濃い目のだし汁 ・・・・ 大さじ3
砂糖 ・・・ 大さじ3
・・ 小さじ1/2

作り方

(1)
氷頭の部分を皮ごと極薄切りし、酢に1時間漬け、水分を切っておく。
(2)
大根とにんじんは4cmくらいの千切りにし、塩を混ぜて20分ほどおいたら、手早く水洗いし、軽く絞っておく。
(3)
漬け汁の材料を軽く煮て冷まし、(1)(2)を加え、一日以上おく。

※ 砂糖はお好みで加減してください。

※ 生鮭の頭を使っても美味しく作れます。

※ 氷頭を薄切りにして調味酢に漬けた商品も通信販売などで入手できます。

古い歴史を持つなます料理。刺し身やたたきのルーツです。

「なます」とは本来、生の魚介類や鳥獣肉を細く刻んだ料理のこと。『万葉集』には肉や肝を使った「膾(なます)」の名が見られ、魚が主材料の時は魚へんの「鱠」をあてるようになりました。現在は、素材を細切りにして調味酢などで和えた料理を指すのが一般的で、紅白なますや柿なます、沖なますなどが知られています。

全国的におなじみ「紅白なます」

大根とにんじんの細切りを甘酢で漬けたなますで、祝いの象徴として正月料理やお祝い事全般に用いられます。

柿の甘みがアクセント「柿なます」

大根なますや紅白なますに生の柿や干し柿を加えたもの。
柿の甘みがアクセントになっています。

江戸時代から伝わる「沖なます」

生魚をおろして包丁でたたき、味噌などで味付けした料理。
沖で獲った魚を船上でなますにしたことが名前の由来。