雪解けとともに芽吹き始める山菜たち。四季折々の大地の恵みを食材とする精進料理においては、春を待つ喜びの食材です。お祝いやおもてなしなどで作るちらしずしに山菜をちりばめた一品は、目にも鮮やかで春を元気に迎えるちからを与えてくれます。

ふきのとう、たらの芽、わらび、山うど、ふき、こごみ…。早春を待ちわびていたかのように、大地から顔を出してくる個性派ぞろいの山菜たち。私たちがその強い風味やほろ苦さを美味しいと感じるのは、この季節の体が求めている味であり、ちからを秘めているからでしょう。
山菜の香りや苦みには、冬の間に溜まったものを排出させて、体を冬の眠りから目覚めさせてくれる働きがあるといわれています。大地は、この季節の体に必要なものを与えてくれて、その恵みをいただく有り難さを改めて教えてくれます。

山菜は、味噌汁やおひたし、天ぷら、酢味噌和え、味噌炒め、きんぴらなど様々な料理に使われます。春を感じる食材をちらす、ちらしずしはおもてなしにもぴったりです。野菜や豆腐を中心とした材料で作る精進料理のちらしずしは、人参の赤、干し椎茸の黒、高野豆腐とれんこんの白、湯葉の黄、絹さやの緑を使った五色が基本。湯葉と絹さやの代わりに、山菜をたっぷりとちりばめます。

具材とともに、ちらしずしに欠かせない調味料が酢。爽やかな酸味は、食欲を増進させ、体の疲労回復や代謝を助ける働きがあるといわれています。
酢の中でも、特に黒酢は山菜と好相性。長い時間をかけて発酵・熟成された黒酢の深いコクと味わいが、山菜特有の香りやほろ苦さとよくなじみ、眠っていた体がシャキッと目覚めるような美味しさです。
山菜ちらしで、食卓にひと足早く春の息吹を呼び込んでみませんか。