屛風をひらく ―鑑賞のキホンのキ―

伝統の高機能家具!

サントリー美術館は「生活の中の美」をコンセプトに、日本人が生活の中で愛でてきた絵画や工芸品をコレクションしてきました。“屛風はその代表選手”、と聞いても、ピンとこないかもしれません。今や屛風を見るのは、もっぱら美術館の展示ケースの中ですものね。そのほかは、結婚式やおひなさまの「金屛風」ぐらいでしょうか?

でもかつて屛風は、生活の中で使う「調度品」・「家具」だったのです。

「屛」という字は「ふせぐ」という意味。つまり「屛風」は、「風をふせぐ」ための家具です。もともと古代中国では、屛風を置いて、悪い気が玄関から入ってくるのを防いだそうです。日本の記録に屛風が初登場するのは、なんと『日本書紀』。そして平安時代以降、日本人の生活に溶け込んでいきました。

あれ?屏風の中に屏風が!お部屋の仕切りにしてたのかな?誰が袖図屏風

かつて日本家屋では襖や障子で仕切った室内に屛風を置いていました。「風よけ」になり、また美しい屛風は「室内装飾」でもありました。

美術館では屛風を左右均等に開き、ジグザグに展示してありますよね。でもじつは、置き方に決まりはありません。コの字形にしたり、まっすぐにしたりと、空間に合わせて好きなように置いてOK!木枠に紙や絹などを張ったものなので、折り畳めば自由に持ち運べます。

構造を大解剖!

屛風の下張りは何枚もの和紙を張り重ねてあるので、湿度の高い日には和紙が湿気を吸い、乾燥している日には湿気を放出してくれます。そのため、反ったり歪んだりしにくく、表面の絵がピンと張った美しい状態を保つことができます。おかげで何百年も前の屛風が伝わっているんですね。

糊付けは一部。和紙をひらひらさせたままに。縦向きと横向きの2層になっています。

[1]木で屛風の骨組みをつくる。
[2]骨組みに糊をつけ大判の和紙を張る。
[3]横長の和紙を、少しずつずらしながら何枚も貼り重ねる。骨組みの固さが表に響かないよう、
 和紙の層でふかふかの状態をつくる。
[4]大判の和紙の全体に糊をつけ、[3]を押さえるように貼り、表面を平らにする。
[5]A4版程度の和紙の端に糊をつけ、袋状に貼る。湿気や乾燥による紙の収縮で、
 屛風の表面が破れるのを防ぐ効果がある。
[6]裏打ちをした本紙(絵など)の全面に糊をつけて[5]の上に貼る。

こうしてできた細長い長方形のパネルを横につなげて屛風を作ります。
パネルは「扇(せん)」といい、右から順に、「第一扇」、「第二扇」……と呼びます。

屛風が自在に折り曲げられるのはなぜ?その秘密は、隣り合う扇をつなぐ「紙の蝶番(ちょうつがい)」にあります。扇の断面部分には糊をつけず、蝶番を互い違いに貼り付けているため、前後360度動かすことができるのです。

前にも後ろにもまがる秘訣!紙の蝶番(ちょうつがい)
知っておきたい屏風の呼び方

テーマもお洒落!
「留守模様」・「誰が袖図」の名品

屛風の下張りは何枚もの和紙を張り重ねてあるので、湿度の高い日には和紙が湿気を吸い、乾燥している日には湿気を放出してくれます。そのため、反ったり歪んだりしにくく、表面の絵がピンと張った美しい状態を保つことができます。おかげで何百年も前の屛風が伝わっているんですね。

着物を脱いだのはどんな人だろう?「誰が袖図」

こちらも「六曲一双」ですね。
「誰が袖図(たがそでず)」というなんとも優雅な名称は、近代の粋人が「古今集」の一首からつけたともいわれます。

色よりも香こそあはれとおもほゆれ  誰が袖ふれし宿の梅ぞも

衣桁(いこう)には脱ぎ捨てられた豪華な衣装、そして匂い袋。持ち主はさぞや素敵なお方なのでは……と想像が膨らみます。人物が登場せず、その面影をしのばせるこうした画題を「留守模様(るすもよう)」といいます。中でも衣装を描いたこうした「誰が袖図」は人気でした。近世初期、男女を問わず小袖を着るようになり、能楽も流行して、染織の技術が急速に発展。そうした時代に広く好まれたのです。こちらは中でも豪奢な名品です。 右隻の赤い小袖は特にきらびやか。布に金箔を貼りつける高価な「金摺箔(きんすりはく)」の技法で、霞と藤の花が表されています。一方、青い袴には意匠化された菖蒲模様。床には能面をいれる面箱。なるほど、どうやら持ち主は能をたしなむ人物のようですね。

こちらは女性のものかな?「誰が袖図」

一方、左隻の衣装はどれも可憐で、美しい女性を想像させます。床には盤双六(すごろく)があり、つい今しがた部屋を出て行ったのでしょうか。左端の屛風にもご注目。屛風はこうして衣装をかけたり、着替えるときの目隠しともなりました。
屛風の中に別の屛風を描きこむなんて、お洒落!「画中屛風(がちゅうびょうぶ)」といいます。華やかな金屛風の中に、濃淡を駆使した水墨画の屛風を描きこむ……絵師がご自慢の腕を披露、と言ったところでしょうか。安土桃山から江戸初期に活躍した武家出身の天才絵師、海北友松(かいほうゆうしょう)の水墨画に似ており、その周辺の作ともいわれます。

次回は、サントリー美術館「逆境の絵師 久隅守景 親しきものへのまなざし」展に出展された、守景渾身の屛風を軸に、押さえておくべき鑑賞ポイントをご紹介します。お楽しみに!

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