やきものは人類初の芸術作品!?

「侘び」を知る、やきもの鑑賞術

わたしたちの身近にあるやきもの。土、そして、火。
そこには、人の技だけでは作り出すことのできない自然の美が存在します。
美の栞では、やきものが作られた背景や、鑑賞する楽しみが倍増する
「目利きワード」を軸に、サントリー美術館所蔵の名品をご紹介していきます。

こちらは室町時代の花入。
細長い形から、「旅枕」という風流な名前がついています。
模様もないし、どんなふうに鑑賞したらよいのかわからない・・・
そんな方も多いのではないでしょうか。

旅枕花入、鑑賞ポイントはどこ!?

鑑賞のヒント、それは茶人たちに愛されてきたことにあります。この花入には茶の湯で尊ばれる「侘び」の美があるのです。「侘び」とは、質素なこと。
お茶は、鎌倉時代に禅宗とともに中国から伝わり、禅宗のお寺で行なわれました。その後、寺の外にも広まり、戦国大名は中国から伝来した豪華なお茶道具で茶会を開きました。その一方で、「茶の湯の祖」、村田珠光(むらたじゅこう)は精神性を重んじ、日本国内で作られた質素なお茶道具を使って心の豊かさを追求する「侘び茶」を生み出しました。

この花入のふるさとは、現在の滋賀県の「信楽」。室町時代末から、茶の湯で使うやきもの「茶陶」の生産が盛んになりました。その立役者が、珠光の弟子、武野紹鴎(たけのじょうおう)です。紹鴎は「侘び茶」を発展させ、茶会に「信楽」のやきものをたくさん取り入れたのです。のちにこの紹鴎の弟子、千利休が茶の湯文化を大成しました。

まるで謎解き!
やきものの魅力は細部に宿ります。

穴があったのはここ!

左上に見える茶色い丸。じつはこれ、穴をふさいだ跡です。
想像してみましょう。こんな来歴があるのかもしれません・・・
むかしむかし、この花入を手に入れたA氏は、しばし悩みました。
「うむ、渋くてきれいだなあ。さて、どちらを前にして飾ろうか」
そして正面を決めて、真後ろに金具をつけて壁に掛けました。
そのあと、この花入はB氏の手に渡ります。B氏は、「なんともいい
色合いじゃ。わしはこっちを正面にして飾るほうがよいのう。」とつ
ぶやいて、金具を取り外して穴を埋め、別の場所に金具をつけたの
でした。

表面には何の文様も施されていません。しかし、顔を近づけてよく
見ると、つやつやの部分やざらざらの部分など、さまざまな表情が
見られます。これを「景色」といいます。
金具を真後ろにして置くと、こんなかんじ。さきほどのお話でいえ
ば、これがB氏の「お気に入りの景色」というわけです。

ちなみに、ふさいだ穴の跡は、もう1か所見つかっています。持ち
主や時代によって、いろんな面を正面にして鑑賞されてきたのです
ね。うちに飾るなら、どこを正面にしようかな?・・・なんて想像
するのも、やきもの鑑賞の醍醐味ですよ!

唯一無二、
釉が生み出す景色を愛でましょう。

こうした景色はどうやって生まれたのでしょう。
ここで、【やきものの基本的な作り方】をご紹介します。

土でうつわを作り、乾燥させてから、低めの温度で「素焼き」をします。表面に色をつけない場合はこれで完
成。色をつける場合は「釉薬(ゆうやく/うわぐすり)」をかけます。乾燥させてから、いよいよ「本焼き」。
高温で数時間、時には何日もかけて焼きます。焼くと、釉薬が熱で溶けてつやつやしたガラス質の膜になりま
す。これで水漏れがしにくく、汚れもつきにくくなるんです。
そしていよいよ「窯出し」。割れていないかな?釉薬は思い通りの色になったかな?と、ドキドキの瞬間です。

こちらは鎌倉時代の壺。六古窯(ろっこよう)のひとつ

こちらは鎌倉時代の壺。信楽とともに、中世のやきも
のの6大産地、六古窯(ろっこよう)のひとつ、愛知
県知多半島の「常滑」産です。「く」の字のように張
った肩から直線的にすぼませた、算盤球(そろばんだ
ま)に似たかたち。これは、鎌倉期の「常滑」の特徴
のひとつだといわれています。

日本の陶磁史に欠かせない一品。

この壺はなんと奈良時代の作。表面に釉薬をかけて色をつけたやきものの中では、最古に近いものです。鮮やかな釉薬の技術は、当時、世界帝国として繁栄を誇った、中国、唐のやきもの「唐三彩(とうさんさい)」を手本にしたものです。奈良時代に暮らした日本人は、もっぱら土色のやきものを使っていましたから、色鮮やかな「唐三彩」の美しさにびっくりしたことでしょう。朝廷の工房で国を挙げて再現されたのがこうした壺で、神様を祀る儀式に使われていたともいわれています。

表面に釉薬をかけて色をつけたやきものの中では、最古に近い壺です。

やきものにはたくさん見どころがあるんですね。地味でとっつきにくい・・・そんなイメージが変わった方もいらっしゃるかもしれません。同じものを眺め、大切に愛でた人たちが、過去にどれほどいたでしょうか。そう考えると、なんだかワクワクしてきませんか?
次回は桃山時代の斬新なデザインが登場!通の鑑賞ポイントをお届けします。

ページの先頭へ