ハーブの魅力や身近な楽しみ方をお伝えする
『ハーブズ コラム』。
今回は、クリスマスにぴったりのハーブクラフト“フルーツポマンダー”をご紹介しましょう。
日本では、あまりなじみがないかもしれませんが、ヨーロッパではクリスマスが近づくと、街のあちこちで「香り玉」とも呼ばれる、フルーツポマンダーを見かけるようになります。これは、ヨーロッパの家庭に古くから伝わるお守りのようなもので、家族みんなが健やかに過ごせるように…という願いを込めて手づくりされているものなのだとか。
ボツボツとした表面に、コロンとまるい不思議なフォルム。
この正体はいったい、何だと思いますか?
それは、フレッシュなオレンジと、香辛料として知られるクローブ。オレンジの果皮にクローブをびっしりと刺し、シナモンパウダーをまぶして乾燥させたものなんです。飾っておくと、柑橘の爽やかな香りとクローブやシナモンのスパイシーで温かい香りがお部屋いっぱいに広がり、幸せな気持ちにさせてくれるんですよ。
クリスマスムードが高まるこの時期、フルーツポマンダーづくりに挑戦してみませんか?
ポマンダーの歴史はとても古く、中世のヨーロッパにまで遡ります。その語源は、丸いものの象徴とされた“pomme(リンゴ)”と、当時頻繁に使われた香料“amber”。金や銀製で穴のあいた丸い容器に抗菌や防虫に役立つハーブやスパイスなどを詰め、貴族たちが魔除けのために持ち歩いたものを指していました。
植物の香りを心身の健康に活用する“アロマセラピー”という言葉がなかった時代ですが、当時の人々も香りが流行病などの悪いものから自分を守ってくれると知っていたのですね。この習慣はやがて庶民にも広まり、果物でつくって代用したものがフルーツポマンダーです。
放っておけば傷んでしまうフルーツが腐らないのは、果皮に刺さったクローブが持つ植物のちからのおかげ。果実の水分を吸い上げ、腐らせずにしっかり乾燥させてくれるのです。アロマセラピーでは、沈みこんだ気持ちをやさしく押し上げ自身を取り戻すためにクローブが用いられます。ちょうど釘に似たかわいい形で、心の穴を埋めて修復してくれる心強いスパイスです。
ポマンダーは、混沌の時代に病や情勢の不安から心を守る意味もあったのでしょう。いつしか“幸運のお守り”と捉えられるようになり、クリスマスの風物詩として今なお受け継がれているのです。
飾っている時にもオレンジとスパイスの混ざった甘い香りを楽しめますが、つくっている間のアロマ効果も魅力のうち。クローブを刺すたびに部屋中に温かみのある香りが広がります。ご家族やお友達と一緒につくって、絆を深めるのもよいですね。できあがったものをお部屋やツリーに飾れば、いつものクリスマスをいっそう華やかに演出してくれますよ。
それでは早速、フルーツポマンダー作りに挑戦しましょう。
フルーツは柑橘類であれば何でもOKですが、形が丸いものを選ぶほうが、美しく仕上がります。クリスマスツリーやリースのオーナメントにする場合は、カボスやスダチなどの小ぶりな果実を使ってください。
クローブやシナモンは、主にスパイス専門店や大型スーパーなどで販売されています。クローブはホールのものを、シナモンはパウダー状のものをご用意ください。
・ オレンジなどの柑橘 ・ クローブ
・ シナモンパウダー
・ マスキングテープ ・ 竹串
・ 袋 ・ ガーゼ ・ リボン、飾り
オレンジにマスキングテープを貼り、覆われていない部分に竹串で穴を開け、クローブを刺します。
すき間なくクローブを刺したらテープを外し、袋に入れてシナモンパウダーを全体にまぶします。
ガーゼに包み、風通しの良い場所に吊るして、2~3週間乾燥させます。
クローブで美しい模様をつくったり、リボンの柄や結び方にひと工夫加えたり、手づくりならではの個性豊かな仕上がりも楽しいもの。クリスマス時期に間に合わせるには、今このタイミングが始めどきです。
ウエルネスライフマガジン 2014年11月号掲載分