ハーブこぼれ話
ハーブにまつわる逸話や知られざる歴史など、 ついつい人に話したくなるようなマメ知識や雑学をご紹介します。
18 enherbハーバルセラピスト 石井佑果のハーブ産地探訪記 -チリ・ローズヒップ 前編-

ハーブの知られざる魅力や楽しみ方をご紹介する『ハーブズ コラム』。
今回は、このコラムを担当するハーバルセラピスト石井佑果の、
ハーブ産地探訪記をお届けします。
訪れたのは、南米チリの首都・サンティアゴから南に400kmほど
下ったところにある小さな町・チヤン。“ビタミンCの爆弾”とも呼ばれる
ハーブ「ローズヒップ」の収穫・加工が行われているところです。

ローズヒップが自生するチヤンってどんなところ?

ローズヒップが自生するチヤンは南アメリカ、チリのちょうど中央に位置しています。 南米の最南端に位置するチリ。地図で見てみると、約5,000㎞にもおよぶ縦に細長く伸びた地形に驚かされます。日本からの距離は約17,000㎞。時差は13時間あり、まさに地球の裏側に当たる国です。
細長い地形の理由は、長く連なるアンデス山脈を隣国アルゼンチンとの国境としているため。北は砂漠地帯、南は南極を目前にしたパタゴニアの氷河。西は太平洋、東はアンデス山脈。国全体が自然のバリアに囲まれているんですね。
生息する動植物の外敵や病原菌などが侵入しづらく、安定した自然環境を保つことができる稀少な地域だといわれています。

サンチアゴ、チヤンの街並みをご紹介します。   

ローズヒップが自生するチヤンは、チリ中部の中でも気候条件のよい地域にあります。四季のはっきりとした温暖な気候で、降水量が少なく乾燥した夏が特徴的。アンデスから吹き下ろす冷涼な風や豊富な陽光、昼夜の気温差が大きいことも、植物の生育によい影響をもたらしています。チリといえば美味しいワイン・・!と、思い浮かべた方もいらっしゃるかもしれません。チヤン周辺にも素敵なワイナリーがありましたよ。   

ローズヒップの聖地を守り抜く人々の切なる想いに触れて。

「ワイルドクラフト(自然栽培)」を守り続ける収穫地では、収穫以外、人の手が加わえられることはありません。 ハーブティーとして楽しむローズヒップは、バラ科の一種「ドッグローズ」の偽果(花が咲き終わったあとにできる実状のもの)から種を取り除いて乾燥させたもの。大人の背丈ほどの低木で、鋭いトゲがある枝に真っ赤な実をつけます。実の収穫時期は3~5月。この時期になると他の地域からもたくさんの人手が集まり、最盛期には約2万人がローズヒップ産業に従事するのだとか。世界に流通するローズヒップの約60%はチリ産です。そのうちの約半分がこのチヤンで収穫・加工されています。 今回わたしが訪れたのは“ワイルドクラフト(自然栽培)”を守り続ける収穫地。実を収穫すること以外、ローズヒップに人の手が加えられることはありません。

ローズヒップの低木が点々と生える広大な土地。農薬や肥料を与えたり、雑草や虫を退治したりすることもなく、すべてが自然のままに放置されています。土壌にのびのびと根を張り、逞しく育ったローズヒップには、植物本来の力がみなぎっているのですね。

ハーブ専門店「エンハーブ」では、“ワイルドクラフト”にこだわり、世界中から良質なハーブを厳選して仕入れています。今回チヤンを訪れてみて、収穫までの間に人の手が加えられることはないとはいえ、自然の恩恵を守り続けるために、さまざまな人が努力を重ねていることが分かりました。

「ワイルドクラフト」に関わるすべての人々の想いと努力の連なりがなければ、良質なハーブが私たちの手に届くことはありません。 生息地の環境を見守る人、収穫のために集うピッカー、その人たちを束ねるエージェント、すばやく加工し産業を担う人・・・。こうした人の想いと努力の連なりがなければ、わたしたちの手に“ワイルドクラフト”のローズヒップが届くことはありません。

想像よりもはるかに手間のかかるローズヒップティーづくりの裏側。
次号で詳しくお伝えします。

上記コラム内でご紹介しているローズヒップのハーブティーは、「エンハーブ」の店舗およびオンラインショップでお買い求めいただけます。

ウエルネスライフマガジン 2015年4月号掲載分