楽器・ホール・イベント

幸せの空間を探訪する「コンサートホール その1」

 皆さんこんにちは。クラシックソムリエの田中泰です。前回の「指揮者」特集はいかがでしたか?華やかな指揮姿の裏には大変な努力があったのですね。さて今回からは、2回にわたって「コンサートホール」を取り上げ、クラシック音楽を楽しむ上でとても重要なコンサートホールの魅力をたっぷりとお伝えしていきます。レッツ・エンジョイ・クラシック!

コンサートホールっていったい何?

東京初のコンサート専用ホールとして1986年に開館したサントリーホール。

東京初のコンサート専用ホールとして1986年に開館したサントリーホール。

美味しい料理も、素敵なお店で食べればさらに美味しく感じられるはずです。それはクラシックのコンサートでも同様、素敵なホールで楽しむコンサートは、きっと忘れられない思い出になることでしょう。音楽辞典には「コンサートを行う会場」などと書かれているコンサートホールですが、現在では、クラシックコンサート専用ホールを指す言葉として使われることが多いようです。

つまりオペラハウスやライヴハウス、劇場兼用のホールなどは、コンサートホールとは呼ばないということです。王侯貴族の楽しみであったコンサートを一般市民も楽しめるようになったのは19世紀以降。その頃からヨーロッパではコンサートホールが盛んに造られるようになりました。代表的なところでは、初代ベルリン・フィルハーモニー(1882年)、二代目ライプツィヒ・ゲヴァントハウス(1884年)、ウィーン楽友協会大ホール(1870年)などが挙げられます。日本に大型のコンサートホールが誕生したのは1982年、大阪のザ・シンフォニーホールが最初でした。

そして30年前の1986年には東京にサントリーホールが完成、その音響の素晴らしさと公演実績によって、今や世界有数のコンサートホールに数えられるほどの高い評価を得ています。

サントリーホールはぶどう畑!?

(上)ヴィンヤード(ぶどう畑)形式 (下)シューボックス(靴箱)形式

(上)ヴィンヤード(ぶどう畑)形式
(下)シューボックス(靴箱)形式

さて、そのサントリーホールが“ヴィンヤード(ぶどう畑)形式のホール”と呼ばれているのをご存じでしょうか。客席をぶどう畑のようにブロックで分割してステージを囲むように配置したスタイルのホールの総称です。このスタイルによって、多くの客席をステージから遠くない位置に配置できることから、視覚的にも優れたより一体感のあるコンサートが実現できます。一方、伝統的な直方体の箱型をしたコンサートホールは“シューボックス(靴箱)形式のホール”と呼ばれています。

こちらのスタイルは横幅がせまく、天井が高いことが特徴で、より豊かな音が響くと言われています。代表的なところでは、ウィーン楽友協会大ホールや、東京オペラシティ コンサートホールなどがあります。ここまで紹介してきたコンサートホールはすべて1500以上の客席を持つ大ホールですが、800席程度の中ホールや500席以下の小ホールにも優れたコンサートホールが数多く存在します。

“もう1つの楽器”とまで言われるコンサートホールの選び方によって、クラシック音楽の楽しみ方は大きく変わります。

音楽に合うコンサートホールで楽しみたい

ピアニストの指の動きを見たいならステージに向かって前方左側の席がお薦め。

ピアニストの指の動きを見たいならステージに向かって前方左側の席がお薦め。

というわけで、いよいよコンサートホールの選び方です。素敵な音楽を楽しむためにはそれに合ったコンサートホール選びが求められます。さらにはホールのどこで聴くかによっても音楽の印象は大きく変わります。大型のホールでオーケストラを聴く楽しみは、様々な楽器の音が混じり合った音のシャワーに身を浸すこと。そのためにはやや後方の席や2階席がお薦めです。

小編成のアンサンブルやピアノ・ソロなどは、演奏者の息遣いまでが響き渡る小さめのホールで聴きたいものです。歌手の場合は、美しい声をストレートに聴けるかぶりつきの席、ピアニストの指の動きを見たいならステージに向かって前方左側の席がお薦めです。変わったところでは、指揮者の正面に座るサントリーホールのPブロック。

ここでは自分がオーケストラの一員になったかのような気分を味わえます。お気に入りのコンサートホールは、きっとあなたにとっての“幸せの空間”となるはずです。

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲全集(3枚組)
今月の1枚

今年10月に予定されるウィーン・フィル来日公演に同行するピアノの巨匠ブッフビンダーによるピアノ協奏曲の金字塔。ライヴ録音ならではの緊張感に満ちたベートーヴェンを聴くことができます。
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲全集(3枚組)

ウエルネスライフマガジン 2016年1月号掲載分

インフォメーション