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パイプオルガン

オーケストラにも匹敵する? 「パイプオルガン」

クラシック音楽の世界では、オルガンといえば「パイプオルガン」。その誕生は紀元前260年頃までさかのぼります。昔、学校の先生が弾いていた“あの”オルガンは「リードオルガン」で、19世紀以降に出てきた新参者です。教会や音楽ホールなどで、正面にどんと構えるパイプオルガンを目にしたことがある方も多いでしょう。圧倒的な存在感と大音響、さらにはオーケストラにも匹敵するさまざまな音色を一台で出せることから、「楽器の王様」と呼ばれています。

今回は、そんなパイプオルガン(以下、オルガン)の魅力を探ってみましょう。

パイプが音を出し、ストップで音色を変える

鍵盤を押すと、パイプに空気が送り込まれるオルガンの構造。

鍵盤を押すと、パイプに空気が送り込まれる
オルガンの構造。

鍵盤だけを見るとピアノの親戚にも思えるオルガンですが、仕組みはリコーダー(縦笛)など管楽器と同じ。リコーダーは穴を指で押さえ、息を吹き込み音を出しますが、オルガンは鍵盤を押すとパイプに空気が送られ、その振動で音が出ます。1本のパイプでひとつの音を出すので、複数の音を出すには大きさの異なる、たくさんのパイプが必要になります。中には全長10メートルを超すパイプから小指程度(数センチ)のものまで、何千本ものパイプを備えた巨大なオルガンも。

さらに“ストップ”と呼ばれるレバーで音色が切り替わり、フルートやトランペットのような音を出すことができます。鍵盤(手と足、両方に鍵盤があります!)とパイプ、ストップが相互に作用し豊かで美しい音を繰り出す楽器、それがオルガンなのです。

オルガン演奏の面白いところは? オルガニストに聞いてみました

サントリーホールのパイプオルガンに魅せられオルガンの世界に足を踏み入れた山口綾規さん。

サントリーホールのパイプオルガンに魅せられオルガンの世界に足を踏み入れた山口綾規さん。

手と足で鍵盤を押し、ストップで音色を変え…想像以上に複雑な動きを要するオルガン。奏者はどのように操っているのでしょうか? これまでさまざまなオルガンを演奏してきたオルガニスト、山口綾規さんにお話をうかがいました。

「ホール正面の壁を飾る巨体。そびえたつパイプは堂々としてシャンデリアのように美しく、はじめは『これほど威厳のある楽器は他にないな』と思いました。その音を聴いているうちにどうしても自分で演奏してみたくなったんです」。

山口さんは、大学1年の時にサントリーホールではじめてオルガン・コンサートを聴き、荘厳な見た目と響きに惹かれ、いつしかオルガニストの道へ。実際に演奏してみると楽器としての満足感はもちろんのこと、“装置”を操るような感覚は、「とてもワクワクする体験!」なのだそうです。

奏者であると同時に、指揮者のように…オルガニストの役割

手・足・頭をフル回転させて演奏するオルガン。

手・足・頭をフル回転させて演奏するオルガン。

一台一台、構造も個性も微妙に違うオルガン。通常はホールに鎮座し動くことのない楽器ですので、奏者は行く先々のホールでオルガンと対峙し、その場で音を作り上げます。

「丁寧に呼吸するように、鍵盤を扱います。鍵盤を強く押したからといって大きな音が出るわけではありません。特に重要なのは指を離すタイミング。それで音の印象も変わってきます」。山口さんは、まず頭で出したい音をイメージし、鍵盤やストップを駆使しながら観客に届く音の響きを想像し、ホールの広さも考慮しつつ演奏する音色を決めるといいます。

「さまざまな種類の音を組み合わせながら、残響や客席との距離も計算して…手・足・頭をフル回転させて演奏します。オルガニストは奏者でありながら、音楽全体をオーガナイズする指揮者に似ているかもしれませんね」。オルガンの演奏は、全身の神経を研ぎ澄ませ、一期一会の真剣勝負。とても体力を消耗するそうです。毎回、最高の音を作れるように、日々の健康管理は欠かせないんだとか。

サントリーホールでは年間を通じてさまざまなオルガンのコンサートが開催されています。
 山口さんが「魅せられた」という荘厳なその響きに触れてみませんか?

バッハ:「トッカータとフーガ~J.S.バッハ・オルガン名曲集」
今月の1枚

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ウエルネスライフマガジン 2016年8月号掲載分

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