楽器・ホール・イベント

サマーフェスティバル

気軽にクラシック音楽を楽しむチャンス 「サマーフェスティバル」

ロック、ジャズ、そしてもちろんクラシックも、夏はさまざまな音楽祭(サマーフェスティバル)が開催される季節。正装して会場へ、という普段のクラシックコンサートと違い、サマーフェスティバルは野外などで催されることも多く、より気軽にクラシックを楽しめるチャンスです。今回は、ヨーロッパの“フェス事情”や、日本で楽しめるサマーフェスティバルを紹介します。

オフシーズンの楽しみ? サマーフェスティバル

人口約15万人の町に、毎年25万人以上のクラシックファンや観光客を惹きつけている「ザルツブルク音楽祭」

人口約15万人の町に、毎年25万人以上のクラシックファンや観光客を惹きつけている「ザルツブルク音楽祭」

©Tourismus Salzburg

クラシックの本場ヨーロッパでは、通常のクラシックコンサートやオペラのシーズンは9月頃に始まり、翌年の6月頃に終了します。北欧では夏至祭※が来る前の6月中旬、オーストリアをはじめとした中欧は6月末にそのシーズンの最終公演を迎えます。シーズンを終えた楽団員や歌い手の多くは都市部を離れ、ヨーロッパ各地の避暑地やリゾート地で行われる大小さまざまなサマーフェスティバルに参加します。

なかでも、ウィーン・フィルをはじめ世界のトップアーティストが集まる華々しい音楽祭として有名な「ザルツブルク音楽祭」。1920年に誕生したその背景には、歌劇場や所属する楽団の拠点となるホールが閉鎖される夏の間“無職”となるアーティストたちの生活を救済する、という事情もありました。観客は避暑や観光も兼ね訪れた地で音楽を楽しみ、アーティストたちは年間を通じて活動の場を得る、という仕組みでサマーフェスティバルは発展してきたのです。

※長い冬を過ごす北欧の人々が夏の到来を祝う伝統的行事で、毎年6月下旬ごろに行われる

サマフェス、もうひとつの役割

長野県は小澤征爾の母校とも所縁が深く、松本市も「セイジ・オザワ松本フェスティバル」に全面的に協力している。

長野県は小澤征爾の母校とも所縁が深く、松本市も「セイジ・オザワ松本フェスティバル」に全面的に協力している。

©ほそがや博信

さて、日本ではどんなサマーフェスティバルが開催されているのでしょうか。

長野県松本市で毎年夏に開催される「セイジ・オザワ 松本フェスティバル(OMF)」(旧サイトウ・キネン・フェスティバル松本)は、世界的指揮者・小澤征爾の呼びかけで世界中から優れた音楽家が集まり、オペラや室内楽など多彩なプログラムを展開。運営には多くのボランティア市民も参加し、音楽による人々の交流や町の一体感を味わえます。

また、30年近くにわたり爽やかな夏の北海道で開催されている「パシフィック・ミュージック・フェスティバル(PMF)」は、本コラムでも紹介したレナード・バーンスタインが提唱して1990年に始まったフェスティバル。札幌市内のホールで行われる演奏会のほか、野外ステージで繰り広げられる「ピクニックコンサート」が名物となり、多くの人々を魅了しています。

夏の開放的な雰囲気のもとクラシック音楽を楽しむということのほかに、これらのフェスティバルに共通しているのは“若手音楽家の育成”です。アカデミーを創設したり、子どもたちをオペラに招待するなど、優秀な音楽家の発掘や早期の音楽体験を促す役割も担っています。

都会でも楽しめる サマーフェスティバル

クラシック音楽をはじめ、映画音楽や童謡、CMソングや校歌・社歌の作曲など幅広いジャンルで活躍した芥川也位寸志。

クラシック音楽をはじめ、映画音楽や童謡、CMソングや校歌・社歌の作曲など幅広いジャンルで活躍した芥川也位寸志。

サントリーホールが2018年夏に開催する「サントリーホール サマーフェスティバル 2018」では、20世紀の音楽や最新の作品が取り上げられます。“世界初演”や“日本初演”といったまだあまり知られていない逸材の紹介などもあり、未知のクラシックに触れる、貴重なひと夏の体験となるでしょう。

なかでも作家・芥川龍之介の三男で、戦後を代表する作曲家のひとり、芥川也寸志の功績を記念して創設された「芥川作曲賞選考演奏会」では、新進気鋭の日本人作曲家の作品から公開選考会を経て、最優秀者が選出されます。次世代を担う大物作曲家誕生の場に立ち会うかもしれませんね。

さらに注目は、現在「世界中から依頼が殺到する」といわれているイェルク・ヴィトマンの(ソロ奏者としての)クラリネット演奏、指揮と演奏を同時にこなす“吹き振り”、そして自身の作曲作品も披露されるぜいたくなプログラム。この機会は、“ヴィトマンを味わい尽くす”チャンスとなるでしょう。

「クラシックコンサートは未体験」という方も、より気軽に楽しめるサマーフェスティバルで音楽の新しい体験をしてみてはいかがでしょうか。

「ルガーノ・フェスティヴァル・ライヴ2016」
今月の1枚

2002年のスタート以来大きな話題を集めてきた「ルガーノ・フェスティヴァル」ですが、2016年のライブ録音は豪華絢爛。アルゲリッチのもとに集まった名手たちによる、フェスティバルならではの一期一会の名演奏が楽しめます。
「ルガーノ・フェスティヴァル・ライヴ2016」/マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)他

ウエルネスライフマガジン 2018年7月号掲載分

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