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バイオリン

時を超えて弾き継がれる楽器 「バイオリン」

気品あふれる音色と、滑らかな曲線美を持つバイオリン。「セレブなお稽古事」というイメージもありますが、登場したときは意外にも「庶民の楽器」として親しまれていたのだとか。今回は、ピアノと並んでポピュラーで、耳にする機会も多い弦楽器・バイオリンの魅力について探ってみましょう。

バイオリンの聖地「クレモナ」

「ビオラ・ダ・ガンバ」のイメージ画像

18世紀後半、一旦は廃れたものの19世紀末以来の古楽復興運動により復活を遂げたビオラ・ダ・ガンバ。

バイオリンを愛好する方なら、「クレモナ」という地名に聞き覚えがあるかもしれませんね。イタリア北部ロンバルディア地方の小さな町クレモナは、2つの河川の合流地点からほど近くにあります。かつて物流の要衝として栄え、多くの良質な木材やニスの原料が運ばれたことから木工芸が盛んでした。そんなクレモナの小貴族で優れた木彫り職人でもあったアンドレア・アマティが、バイオリン開発者のひとりと言われています。当時(16世紀)主流の弦楽器だったリュートやビオラ・ダ・ガンバ(下図参照)は高価で扱いも難しく、主に王侯貴族のたしなみとしての楽器でしたが、アンドレアの手によって登場したバイオリンは比較的安価で音が出しやすく、庶民でも気軽に音楽を楽しめる楽器として広がっていきました。

その後アンドレアの孫にあたるニコロ・アマティが1683年に作製した、胴体の膨らみが特徴的なバイオリンは「アマティ型」と呼ばれ、一族が生み出したバイオリンの代表格となっています。

どこまでも木でできている楽器

バイオリンは木のパーツの集合体ですが、それぞれのパーツには役割に応じて異なった木材が使われています。表面の板には、4つの弦を支える駒(下図参照)から弦の振動がよく伝わるように柔らかい木(通常は松)が使われ、表板を支える側面や裏板は、弦の振動が表面で増幅し十分に共鳴するように堅い木(通常は楓)でできています。演奏時、指で弦を押さえる「指板(しばん)」の部分は摩擦による負担も大きいので、一層堅い黒檀などが用いられます。シルエットの優雅さもバイオリンの魅力のひとつですが、胴体部分のくびれは見た目の美しさのためではなく、両端の弦を弾く際に弓が胴体に当たらないようにという機能上の工夫でした。

そして最も重要なパーツともいえるのが、楽器の内部にある「魂柱(こんちゅう)」と呼ばれる木片。表板と裏板の間に垂直に立てられ、その位置を変えることで音色が変化します。フランス語やイタリア語でもこのパーツには「魂」を意味する言葉が使われていて、まさに楽器に命を吹き込んでいるのです。

バイオリン各部の名称

もはや芸術作品。12億円を超えるものも

フェスティバルのために来日した21挺のうちの3挺。

フェスティバルのために来日した21挺のうちの3挺。
(左)San Lorenzo
(中央)Rode
(右)Medici, Tuscan

Photographs© Jan Röhrmann

しばしば高額で取り引きされることから世界中にその名を知られるバイオリン、ストラディヴァリウス。オークションで値のついたこれまでの最高額は、2011年に落札された1721年製の「レディ・ブラント」で、日本円で約12億7千万円(当時)だそうです。

そんなとんでもない楽器を後世に残したアントニオ・ストラディヴァリ(ストラディヴァリウスはストラディヴァリのラテン語読みで、楽器を指す際にしばしば用いられる)も、元をたどれば「アマティ型」を生んだニコロ・アマティの弟子。やはりクレモナで90歳を超えて亡くなる直前までビオラやチェロも含めた弦楽器を作り続け、その数1,000挺(ちょう)以上。そのうち現存しているものは600挺程度のようですが、驚くべきは、およそ300年の時を経たそれらの楽器の多くが今も現役で活躍し、艶と深みをまとった美しい音色を紡ぎ出していることです。

時を超えて生き続けるストラディヴァリウスをさまざまな角度から体感できるクラシックフェスティバル「東京ストラディヴァリウス フェスティバル 2018」が、2018年7月から10月まで東京で開催されています。期間中、サントリーホールでは2挺のストラディヴァリウスが競演するリサイタルも開催されますので、この機会にその生音に触れてみてはいかがでしょう。

「プレリューディオ ~諏訪内晶子ベスト・セレクション」
今月の1枚

日本を代表するバイオリンの名手諏訪内晶子さんの使用楽器は、ストラディヴァリウスの中でも最も評価の高い1714年製の名器「ドルフィン」。彼女の前に使っていたのが伝説の名手ハイフェッツだったこともその価値を高めています。
「プレリューディオ ~諏訪内晶子ベスト・セレクション」/諏訪内晶子(バイオリン)他

ウエルネスライフマガジン 2018年8月号掲載分

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