クラシックトリビア

究極のアンサンブルに酔いしれる 「室内楽の魅力に迫る その1」

皆さんこんにちは。クラシックソムリエの田中泰です。前回の「オーケストラを聴いてみよう!」、お楽しみいただけましたか? 今回と次回は、美しいメロディが満載の「室内楽」の魅力に迫ります。レッツ・エンジョイ・クラシック!

チェンバーミュージックってどんな意味?

宮廷の広間(Chamber)で演奏された音楽が語源といわれるチェンバーミュージック。

クラシックの中でも特に奥行きの深いジャンルと言われる「室内楽」は、美しい旋律の宝庫だということをご存じでしょうか。本来は王侯貴族の館で演奏される音楽の総称である「室内楽」は、英語ではチェンバーミュージックと呼ばれて親しまれています。

その内容は、複数の奏者が共演するスタイルを基本に、小規模な管弦楽編成までをカバーする、いわばクラシック音楽のエッセンスをギュッと詰め込んだようなジャンルなのです。弦楽器はもちろん管楽器や打楽器に歌声など、その組み合わせは自由自在。古今の作曲家たちの創作意欲を刺激するに充分な土壌がここにあると言っても過言ではありません。

そのためでしょうか、「室内楽」分野の作品数は、クラシックの全てのジャンルの中で最大です。代表的な編成としては、デュオ(二重奏)、トリオ(三重奏)、クァルテット(四重奏)、クインテット(五重奏)、ゼクテット(六重奏)、ゼプテット(七重奏)、オクテット(八重奏)などが挙げられますが、その内訳となる楽器編成がさまざまなのも「室内楽」の面白さ。例えばトリオ(三重奏)を例に挙げてみると、ピアノ・トリオ(ピアノ、バイオリン、チェロなど)や、弦楽トリオ(バイオリン、ヴィオラ、チェロなど)のほか、クラリネット・トリオ(クラリネット、バイオリン、チェロなど)のような編成が存在します。ちなみに同じピアノ・トリオでもジャズの世界では、ピアノ、ドラムス、コントラバスの組み合わせがスタンダードになるのも押さえておきたいポイントです。

室内楽を聴くならこれがお薦め

ヌーヴェル・ヴァーグの旗手、ルイ・マル監督『恋人たち』で一躍有名になったブラームスの「弦楽六重奏曲第1番」。

さて「室内楽(チェンバーミュージック)」の大枠を理解したところで、次は聴くべき代表曲をご紹介しましょう。膨大な作品の中から選ぶためには、何かの理由があった方がわかりやすいということで、映画に使われた名旋律をテーマにセレクトしてみたいと思います。

まずは、映画『プラトーン』で使われたバーバーの「弦楽のためのアダージョ」。この曲はケネディ大統領の葬儀に使われたことをきっかけに有名になった作品です。続いて映画『ウェディング・プランナー』に使われたパッヘルベルの「カノン」。パッヘルベルはこの1曲のみで音楽史に名を刻んだとも言えそうです。そして映画『恋人たち』(1958年)に使われたブラームスの「弦楽六重奏曲第1番」。この曲の第2楽章は、「恋人たち」と呼ばれるにふさわしい美しさ。さらに、映画『ニキータ』に使われたモーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」は、モーツァルトの全作品の中でも最も有名な曲の1つでしょう。

そして最後は、映画『シックス・センス』に使われたシューベルトのピアノ五重奏曲「ます」。この曲は、ピアノにバイオリン、ヴィオラ、チェロ、そこにコントラバスを加えた独特の編成が特徴です。ご紹介した5曲に共通するのがメロディの印象的な美しさ。「室内楽」が美しいメロディの宝庫であることを実感できること請け合いです。

チェンバーミュージック・ガーデンを散策しよう

演奏家が互いに音を聴き合いながら作品を作り上げるプロセスを間近で体験できるのは、少人数編成の室内楽演奏ならでは。

さあ、次の段階は生演奏に触れること。というわけで「室内楽」の魅力をたっぷりと味わえる公演をご紹介しましょう。「チェンバーミュージック・ガーデン」は、サントリーホールのブルーローズ(小ホール)を舞台に2011年以降毎年初夏に展開される室内楽の祭典。まさに美しいメロディの数々を生演奏で味わう絶好のチャンスです。親密な空間の中、演奏者の息遣いまでが伝わってくる臨場感にも是非ご注目あれ!

シューベルト:ピアノ五重奏曲「ます」、弦楽四重奏曲「死と乙女」
今月の1枚

シューベルトの室内楽の中でも特に人気の高い2曲をカップリングしたこのアルバムは歌心満載の名盤中の名盤。「チェンバーミュージック・ガーデン2016」ではキュッヒル・クァルテットが演奏しますので予習にいかがでしょう?
シューベルト:ピアノ五重奏曲「ます」、弦楽四重奏曲「死と乙女」

ウエルネスライフマガジン 2016年4月号掲載分

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