(上段左から)バイオリン、ヴィオラ、バイオリン(下段)チェロ
数多くの楽器編成が存在する「室内楽」の中でも、究極のスタイルと称されているのが弦楽四重奏です。その編成は、2つのバイオリンとヴィオラにチェロという4つの弦楽器で構成されるのが一般的。最も初期の弦楽四重奏曲は、イタリアの作曲家アレッサンドロ・スカルラッティ(1660-1725年)の書いた「2つのバイオリン、ヴィオレッタとチェロのためのソナタ」だと言われています。その後、他の作曲家たちもこのスタイルをまねて曲作りを始め、ヨーロッパ中に広まったその流れが“弦楽四重奏曲の父”と呼ばれたハイドンへと受け継がれることによって、弦楽四重奏の持つ可能性が一気に開花したのです。
ハイドンが遺した弦楽四重奏曲の数は68曲。贋作の疑いのあるものも含めた通し番号は83番にまで及びます。彼の後に続くモーツァルト(26曲)とベートーヴェン(16曲)による偉大な創作リレーによって、弦楽四重奏はクラシックの王道であるとみなされるようになり、後世の音楽家たちにも大きな影響を与えました。ではいったいなぜ作曲家たちは弦楽四重奏に惹きつけられるのでしょう。
その答えは無駄を省いた究極の姿にあるようです。例えば、オーケストラの規模を徐々に縮小していくと、最後に残る姿が弦楽四重奏だと考えられます。つまり弦楽四重奏には、オーケストラのエッセンスのような表現力があるのです。そう思えば、ザ・ビートルズが「イエスタデイ」の中に弦楽四重奏を取り入れて音楽の幅を広げたことにも納得です。