クラシックトリビア

オペラ 前編

国王も貴族も庶民も。みんな夢中! 「オペラ 前編」

クラシックの中でも、「オペラ」はとりわけ難しそう・・・と思っていませんか? でも、一度鑑賞したらはまってしまう方が多いのもオペラ。オペラは長い歴史の中で、人々の関心や文化を反映しつつ発展してきたエンターテイメント性の高い総合芸術です。今や古典から近・現代の作品まで幅広く楽しめるオペラ、食わず嫌いでは勿体ない! ということで、このコラムでは2回にわたってオペラの魅力を紹介します。前編の今回は、オペラの誕生から近代までの移り変わりを見てみましょう。

古代ギリシャ芸術の復興から生まれたオペラ

「仕事」や「作品」を意味するラテン語「opus」の複数形が「opera」で、「opera musicale」(音楽的作品)と呼ばれていたものが省略されて「opera」となった。

「仕事」や「作品」を意味するラテン語「opus」の複数形が「opera」で、「opera musicale」(音楽的作品)と呼ばれていたものが省略されて「opera」となった。

時は16世紀後半、ルネサンス(文芸復興)運動が盛んなフィレンツェ。「言葉と音楽の完全なる一致は、人間に深い感動を与える」という古代ギリシャ時代に信じられていた主張に基づき、知識人グループ「カメラータ」は“音楽と演劇の融合”に取り組んでいました。中世にも音楽劇はありましたが、常に複数人がハーモニーを奏でる「多声」スタイルで、セリフは聞き取りにくく、言葉は音楽の一部でしかありませんでした。

そこでカメラータは、言葉を中心に新しい歌唱スタイルを確立。「多声」の音楽ではなく、「単一」の声で歌われるセリフには劇的表現があり、そこに音楽と演劇が見事に融合した“音楽ドラマ”が生まれたのです。これが、オペラの原型となりました。

この様式を用いた最古のオペラ作品が、当時のフィレンツェの権力者メディチ家とフランス国王の結婚式で上演され好評を博し、以降宮廷や貴族の祝宴でオペラが催されるようになりました。オペラはフィレンツェからローマ、ベネチア、ナポリへと拡大。そして1637年にベネチアで初めて市民のためのオペラ劇場が誕生したことにより、オペラは王侯貴族だけのものではなく、一般市民も楽しめる娯楽としてヨーロッパ各地へ広がりました。

聴衆の好みに合わせ、変化するオペラ

ギリシャ神話など真面目な題材の「オペラ・セリア」が宮廷で好まれたのに対し、一般大衆には滑稽で風刺の効いた「オペラ・ブッファ」が人気だった。

ギリシャ神話など真面目な題材の「オペラ・セリア」が宮廷で好まれたのに対し、一般大衆には滑稽で風刺の効いた「オペラ・ブッファ」が人気だった。

オペラは王侯貴族から民衆の手へと移るにつれ、その性格も変わっていきました。宮廷オペラはギリシャ神話を題材にしたものや宗教色の強い道徳的なもの、勇者を讃える物語など「オペラ・セリア」(真面目なオペラ)が中心でしたが、一般市民が聴衆の中心になると「オペラ・ブッファ」(滑稽なオペラ)と呼ばれる、喜劇的要素が強くコミカルなドラマ運びのもの、権力者が身分の低い者に負かされる痛快なストーリーなどが人気となりました。

このオペラ・ブッファの新境地を開いたのが、天才作曲家モーツァルト。作品に盛り込まれた人間の生々しい感情や階級風刺を、モーツァルトは類いまれな才能で明快な音楽に包み込んでしまいます。18世紀後半には数々のオペラ・ブッファの傑作を残し、その代表作としておなじみなのが『フィガロの結婚』(1786年)や『ドン・ジョヴァンニ』(1787年)などです。

時代とともに近代化、そして世界へ

ヨーロッパ全土を駆け巡ったフランス革命の動乱は芸術分野にも影響を及ぼし、専制国家の消滅と民主主義の高まりは愛国的なオペラ作品を生んでいきます。18世紀後半までオペラといえばイタリア・オペラが中心で、台本も歌詞もイタリア語でしたが、上演される国や地方の言葉を使い、郷土の伝説や歴史を題材として扱うものも現れてきました。

また、社会の成熟とともに内容も多様化し、名作文学を原作とした人間哲学の追求や、型どおりのハッピーエンドのみならず複雑な人間悲喜劇なども登場。バロック時代に完成した古典オペラから近代歌劇の性質を持つオペラへと転換期を迎えたのがこの頃です。

そして万国博覧会の開催などで文化的な国際交流もはじまった19世紀後半には、東洋を舞台とした『蝶々夫人』や『トゥーランドット』など異国趣味のオペラも流行しました。

オペラ誕生からの流れ

さて、ここまで駆け足で振り返ってきたオペラの誕生とその歴史、いかがでしたか。文化・芸術は時代を映す鏡という意味においてオペラも例外ではありませんね。初心者の方でも気軽に楽しんでいただける人気のオペラ作品紹介は、「オペラ 後編」でお楽しみください。

【参考文献】
『オペラを知っていますか』(音楽之友社)、『3日でわかるクラシック音楽』(ダイヤモンド社)

モーツァルト:テオドール・クルレンツィス指揮、ムジカエテルナ演奏、歌劇「ドン・ジョヴァンニ」
今月の1枚

最近の小説でも話題の「ドン・ジョヴァンニ」。緊張感あふれる序曲や騎士団長殺しのシーン、そして最後のドン・ジョヴァンニが地獄に落ちるシーンまで、息をもつかせぬ怒涛の演奏をご堪能あれ。
モーツァルト:テオドール・クルレンツィス指揮、ムジカエテルナ演奏、歌劇「ドン・ジョヴァンニ」

ウエルネスライフマガジン 2017年5月号掲載分

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