クラシックトリビア

オペラ 後編

はじめてのオペラは歌で選ぶ! 「オペラ 後編」

数あるオペラの中から、初めに何を観るべきか? なかなか難しい問題ですが、今回は人気作品の中でも「一度は聞いたことがある」アリア(独唱)やアンサンブル(重唱)を含む3作品をご紹介します。「オペラは話が難しそう」と思われがちですが、有名オペラの多くは“愛と死”がテーマのメロドラマ。大衆娯楽としての歴史が長いオペラですので・・・百聞は一見にしかず! 気になる作品があったら、まずは気軽に鑑賞してみることをおすすめします。

オペラ誕生と変遷の歴史について知る「オペラ 前編」はこちら

オペラの帝王ヴェルディの名アリアが甘く切ない『椿姫』

『椿姫』のクライマックス、愛しいアルフレードの腕の中で息絶えるヴィオレッタ。(2003年藤原歌劇団公演) 画像提供 公益財団法人 日本オペラ振興会

『椿姫』のクライマックス、愛しいアルフレードの腕の中で息絶えるヴィオレッタ。
(2003年藤原歌劇団公演)

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公益財団法人 日本オペラ振興会

イタリア・オペラの黄金期(1816~1926年)を築いた作曲家のひとり、ヴェルディの代表作に数えられるオペラ『椿姫』。パリ社交界の華・高級娼婦ヴィオレッタは田舎貴族の青年アルフレードの純愛に触れ、一度は幸せを手にしますが身分の違いから別れを決意、最後は彼の腕の中で病死するという悲恋の物語です。

出会いのパーティーで歌われる「乾杯の歌」は恋の始まりを予感させ、二人の仲を裂くアルフレードの父とヴィオレッタの二重唱はかなわぬ恋の切なさを増し、病床のヴィオレッタが歌う美しいアリアが涙を誘う・・・“泣ける”オペラの代名詞『椿姫』ですが、単純なメロドラマと片付けるのは尚早です。階級社会への風刺や普遍的な愛のテーマが巧みに盛り込まれた作品は、分かりやすいのに、深遠。それこそが時代や国を超え、『椿姫』が超ロングランを更新している理由なのではないでしょうか。

天才作曲家モーツァルトの魔法にかかる『魔笛』

鳥刺しパパゲーノとそのパートナー・パパゲーナなど、個性的なキャラクターが音楽の力でいきいきと描き出される『魔笛』。

鳥刺しパパゲーノとそのパートナー・パパゲーナなど、個性的なキャラクターが音楽の力でいきいきと描き出される『魔笛』。

晩年のモーツァルトが死の直前に書き上げ、ウィーンでの初演が大成功を収めた『魔笛』。その後1年の間におよそ100回も上演され、モーツァルトが残した数多くのオペラの中でも最も大きな反響を呼んだ作品として現在でも愛され続けています。

その内容はというと、主役のタミーノ王子が囚われのパミーナ姫を、数々の試練を乗り越え助け出すハッピーエンドなのですが・・・正義の味方と悪役が入れ替わったり戻ったり、話のつじつまが合わずハチャメチャで、筋が通らないことこの上なし。それにも関わらず絶大な人気を得たのは、まさにモーツァルトの“音楽の力”。タミーノとパミーナをはじめ、夜の女王、高僧ザラストロ、鳥刺しパパゲーノなど、登場人物のキャラクターをいきいきと浮かび上がらせる音楽が作品全体に魔法をかけ、荒唐無稽なストーリーを素敵な冒険ファンタジーに仕立て上げています。

そしてこのオペラ最大の見どころが第二幕、夜の女王のアリア「復讐の心は地獄のようにわが胸に燃え」。音程が目まぐるしく変わる歌唱法が駆使され、超・超高音が出てくるこのアリアでは、ソプラノ歌手の超絶技巧をじっくりと堪能できます。

人を虜(とりこ)にする名曲の宝庫『カルメン』

『カルメン』第一幕。魔性の女カルメンとホセの出会いのシーン。
(2004年藤原歌劇団公演) 画像提供 公益財団法人 日本オペラ振興会

『カルメン』第一幕。魔性の女カルメンとホセの出会いのシーン。
(2004年藤原歌劇団公演)

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公益財団法人 日本オペラ振興会

作曲家ビゼーと聞いてピンと来なくても、『カルメン』の官能的なメロディといえば思い浮かぶ方も多いでしょう。自由に生きる女カルメンに魅了され、勤勉な兵士から密輸団員、ついには殺人を犯し身を崩すドン・ホセの愛憎と破滅を描いた作品。今では人気の『カルメン』も初演当初(1875年)はあまりに刺激的なストーリーとジプシー風のリズムが聴衆に受け入れられず、酷評されました。しかしビゼーの死後、親友の作曲家ギローにより演出の一部が手直しされたことに加え、時代とともに人々の異文化に対する興味や理解も広がり、だんだんと人気を得ていったのでした。

カルメンが赤い花を口にくわえホセを誘惑する「ハバネラ」の歌。枯れた花を胸に抱きホセが切々と歌う「花のアリア」。雄々しく歌い上げられる「闘牛士の歌」。一度聴いたら忘れられない名曲が次々と繰り出される『カルメン』は、今や“オペラ史上最大の人気作品のひとつ”です。

情報技術の発達した現代では、衛星放送にDVD、インターネットなど、オペラを気軽に楽しむ方法もさまざま。画面を通してももちろん楽しめますが、オペラ歌手たちの迫力ある歌声や華やかな舞台を体感できるのは、劇場鑑賞ならでは。ぜひともライブで、オペラの魅力に触れてみてください。

【参考文献】
『オペラを知っていますか』(音楽之友社)、『ようこそオペラ!』(春秋社)

「オペラ ベスト・オブ・ベスト」/ルチアーノ・パヴァロッティ(テノール)他
今月の1枚

『椿姫』『魔笛』に『蝶々夫人』ほか、オペラ史上に残る名作オペラ満載のこのアルバムは豪華絢爛。もちろんオペラ入門にも最適です。きっとどこかで聞いたことがあるメロディに出合えること間違いなし。
「オペラ ベスト・オブ・ベスト」/ルチアーノ・パヴァロッティ(テノール)他

ウエルネスライフマガジン 2017年6月号掲載分

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