クラシックトリビア

吹奏楽のイメージ

その応援が力になる! 「吹奏楽」

日本人のおよそ10人に1人が吹奏楽経験者ともいわれる、「吹奏楽大国」日本。学生時代、青春のすべてを吹奏楽部にささげコンクールを目指した・・・という方も少なくないでしょう。体育祭や文化祭を盛り上げる吹奏楽部は、熱い指導や厳しい練習でしばしば“体育会系”文化部と形容されますが、それでも多くの人を引きつけてやまない吹奏楽。今回は、身近なわりに知られていない吹奏楽の始まりや歴史について見てみましょう。

高校野球の応援に欠かせない! 吹奏楽

高校野球のワンシーン

いまや高校野球の応援に欠かせない吹奏楽による応援。

毎年、春・夏と高校球児たちによる熱戦が繰り広げられる甲子園球場では、応援席でのもうひとつの戦い、吹奏楽部員たちによる応援合戦も見逃せません。吹奏楽は、楽曲のジャンルを選ばないオールマイティな演奏形態。各校の応援曲を聴いていると、クラシックから懐メロ、J-POPやゲーム音楽まで、本当に幅広い音楽が楽しめます。野球の強豪校は吹奏楽コンクールの常連校である場合も多く、その美しい爆音(?)を聴きに観戦に訪れる方もいるそうです。

スポーツの試合などで見かける吹奏楽団の演奏風景。その活気あふれる演奏に、聴いているこちら(観客)まで胸が高まってきますね。こうした吹奏楽はいつどこで生まれ、どのように発展してきたのでしょうか。

始まりは、戦いの士気を高めるための音楽として

イギリスの陸軍軍楽隊の隊長フェントン指導のもと正式に吹奏楽を伝習した薩摩藩の藩士たち。

イギリスの陸軍軍楽隊の隊長フェントン指導のもと正式に吹奏楽を伝習した薩摩藩の藩士たち。

出典:丸善雄松堂刊『The Far East』1870年7月16日号

古代エジプトの壁画には、すでにラッパや太鼓を鳴らし行進する人々が描かれていたそうですが、吹奏楽の編成らしきものが現れたのは11世紀末の中世ヨーロッパ。十字軍との戦いで、トルコ軍の楽隊が、打楽器やシンバルなどのけたたましくも勇壮な演奏で味方の兵士たちを鼓舞し、十字軍を悩ませたのだとか。ここから「戦いの士気を高める」ための軍楽隊が隆盛し、木管楽器や金管楽器、打楽器から成る吹奏楽団の形に。戦場での、歩きながら、ときには馬上からの演奏にも対応した“演奏のしやすさ”が、吹奏楽の楽器編成の元になったとも考えられますね。

一方、日本で正式な吹奏楽団が作られたのは、明治時代になってからのこと。薩摩藩の藩士たちがイギリスの軍楽隊の隊長に指導を受け、明治天皇の御前で演奏したのを契機に、陸・海軍の軍楽隊によって多くの西洋音楽が紹介されていきました。

戦後になると私設の吹奏楽団や、警察・消防の音楽隊による公園や広場でのセレモニー的な吹奏楽演奏も増え、文化活動としても普及していきます。

めざすは、『吹奏楽の甲子園』

「全日本吹奏楽コンクール」の練習風景

吹奏楽の甲子園、「全日本吹奏楽コンクール」を目指し夏から猛練習が始まる。

しかし日本に吹奏楽を根付かせた大きな要因は、学校内での吹奏楽活動といえるでしょう。1912(明治45)年には、当時の小学校や旧制中学校に、全国で約34団体の音楽隊が存在した記録があります。次第にこうしたスクール・バンドの数も増え、1939(昭和14)年には全日本吹奏楽連盟が発足。その翌年には全国区のコンクールが開かれ、太平洋戦争で一時中断したものの1956(昭和31)年に復活、今年で65回目を数えます。

この「全日本吹奏楽コンクール」は、“吹奏楽の甲子園”ともいわれるアマチュア吹奏楽者にとって憧れの舞台。毎年夏に地区予選が始まり、予選を勝ち抜き、支部大会を経て、全国から吹奏楽奏者の精鋭たちが一堂に会します。そこでは吹奏楽少年・少女たちが泣き、笑い、高校野球さながらさまざまなドラマが生まれているそうです。

遠い異国の地で戦いの士気を高揚させる音楽を発端とした吹奏楽は、現在さまざまな形で進化し、日本で愛好されています。今後は、試合を盛り上げる名脇役・吹奏楽の演奏にもぜひ注目してみてください。

【参考文献】
『新版 吹奏楽講座7 吹奏楽の編成と歴史』(音楽之友社)、『吹奏楽の歴史』(ミュージックエイト)、『ブラバン甲子園大研究』(文藝春秋)

「ブラバン! 甲子園 THE BEST」のCDジャケット
今月の1枚

吹奏楽の大ヒットアルバム「ブラバン! 甲子園」シリーズの魅力を1枚にまとめたアルバムです。甲子園球場の応援席を揺るがす大応援団の熱気がそのまま伝わってくる音楽の数々は、ブラバン※の魅力を堪能するのにぴったり!
「ブラバン! 甲子園 THE BEST」

※ブラスバンドの略。正式には金管楽器のみで編成される楽団を指すが、日本においては吹奏楽団と同義で使用されるのが一般的。

ウエルネスライフマガジン 2017年8月号掲載分

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