ウィーン・フィルの団員になるには、まずウィーン国立歌劇場管弦楽団の一員として実力を証明しなければならない。
ウィーン・フィルの指す、“正しい音”とは何でしょう。ニューイヤー・コンサートの定番曲「ウィンナ・ワルツ」をウィーン・フィルが奏でると、2拍目が前のめりに走り、3拍目はためらいがちに遅れます。その“間”が、音符にならないウィーンの空気や色彩をはらみ、聴衆の耳にワルツの神髄を響かせているのです。それは技術を超えた、演奏者の内にある“ウィーン気質”の表れ、ウィーン・フィルならではのリズムを生みます。
もともと宮廷歌劇場のメンバーからスタートしたウィーン・フィル。現在も、ウィーン・フィルの団員になるには、まずウィーン国立歌劇場管弦楽団に入らなければなりません。歌劇場は、主にオペラが催される場所。セリフに音楽を合わせたり、舞台上の歌手の動きを見ながら演奏したり、いわゆる“場を読む”技術も必要とされます。そうした経験が団員の身体感覚にすり込まれ、オーケストラ演奏の際にも絶妙のハーモニーを生み出しているといえるのではないでしょうか。
ウィーン・フィルは、常任の指揮者を持たない楽団としても、まれな存在です。団員自らが公演プログラムを決め、コンサートごとに客演指揮者を招聘(しょうへい)します。団員によって自治運営されるウィーン・フィルは、音楽にも自主独立の精神を貫いているのです。