クラシックトリビア

「ウィーン少年合唱団」のイメージ写真

“天使の歌声”はいかにして生まれるのか 「ウィーン少年合唱団」

“天使の歌声”と親しまれ、世界中でその公演が心待ちにされるウィーン少年合唱団。日本でも、「親子3代にわたってファン」という方がいるほどの人気を誇っています。1955年に初来日して以来たびたび日本でも公演が行われ、定番で歌われる「ふるさと」では、少年たちのハーモニーに合わせて観客も大合唱。2019年は日本オーストリア友好150周年にあたる年ということで、今回はオーストリアの無形文化遺産にも登録されている音楽大使、ウィーン少年合唱団の魅力に迫ります!

ハプスブルク家の芸術振興。その流れを継ぐ合唱団

「マクシミリアン1世」の画像

武勇に秀でると同時に芸術への造詣も深く、「中世最後の騎士」と呼ばれたマクシミリアン1世。

ウィーン美術史美術館 所蔵

ウィーン少年合唱団の前身となる宮廷聖歌隊が誕生したのは、1498年のヨーロッパ。時の権力者で、芸術保護に積極的だったハプスブルク家出身の神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世が、ウィーンの王宮礼拝堂のために宮廷楽団と聖歌隊を創設しました。その聖歌隊にいた6人の少年で編成された合唱隊が、ウィーン少年合唱団の原点です。その後、若き日のハイドンやシューベルトも合唱メンバーとして活躍し、モーツァルトはミサ曲をつくり、ブルックナーはオルガニストとして合唱隊と共演しています。後に大作曲家となったこの4人の名前は、現在、ウィーン少年合唱団を構成するグループ名となっています(ハイドン組、シューベルト組、モーツァルト組、ブルックナー組)。

第一次世界大戦終結とともにハプスブルク家が崩壊すると、合唱隊も解散の危機に。しかし、当時の宮廷楽長だった神父が私財を投じ、1924年、「ウィーン少年合唱団」として活動を再開しました。今やトレードマークともなったセーラー服が制服として定着したのも、このとき以降だそうです。

少年たちの美しいハーモニーの源泉は・・・

「王宮礼拝堂」のイメージ画像

ウィーン旧市街にある王宮礼拝堂でのミサは、ウィーン少年合唱団の活動の柱のひとつ。

さて、話を現代に戻しましょう。ウィーン少年合唱団には、10歳から14歳の少年たち約100名が、先ほど紹介した4つの組に分かれて在籍しています。言語も文化も違う、世界中から集まった歌の大好きな少年たちが、全寮制の学校で音楽はもちろん、一般教養を学びます。実はこの“全寮制”の生活様式こそが、美しいハーモニーを生み出すカギなんだとか。

少年たちは寝起きを共にしながら、1年間に44回行われる王宮礼拝堂のミサ、300回にもおよぶコンサートやイベントを一緒に行います。合唱は究極の共同作業。どんなに歌がうまくても、協調性に欠ける子がいると“天使の歌声”は完成しません。そのため、入団前には寮生活になじめるかどうかの見極めがなされるそうです。

組のメンバーは卒業までの4年間入れ替わることなく、また「カペルマイスター」と呼ばれる指導者が合唱の技術はもちろん、少年たちの体調や心理面までサポートし、家族同然に過ごします。そうしてできた強い信頼関係が、本番の舞台でのびのびと安定感のあるハーモニーを引き出しているのでしょう。何よりも「調和」を重んじるウィーン少年合唱団だからこそ、寮での共同生活は欠かせない伝統となっているのですね。

合唱団での貴重な経験が、少年たちを成長させる

「稲穂」の画像

立派に実をつけた稲が穂先を垂らすように、一流の人ほど謙虚な姿勢であることを、体験を通して学ぶウィーン少年合唱団の少年たち。

ウィーン少年合唱団の少年たちは、世界を回り、偉大な音楽家と共演したり、国賓と接する機会も多くあります。合唱団を卒業したある青年は、そうした経験を通して「一流とはどういうことかを学んだ」と言います。第一線で活躍している人ほど謙虚で、常に“学ぶ姿勢”を忘れないということを肌で感じたそうです。日本にも、「実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな」ということわざがありますが、こうした美徳に触れた彼らは、音楽的才能だけでなく、どのような状況にも適応できる人間力やコミュニケーション力を身に付けて卒業していくのだとか。そして、それぞれ別の道を歩んだとしても、ウィーン少年合唱団で過ごした日々は、いつまでも強い絆として彼らをつないでいるそうです。

時代は、平成から令和へ。変わりゆく時代のなかで、500年を越えて変わらない美しいハーモニー、澄んだ川の流れのようなすがすがしさを持つウィーン少年合唱団の歌声に触れてみませんか。

【取材協力】 株式会社ジャパン・アーツ

「シュトラウス・フォーエヴァー」のCDジャケット写真
今月の1枚

ウィーンを象徴する作曲家シュトラウス一家のワルツやポルカは、1920年代から歌い継がれているウィーン少年合唱団の得意曲。ウィーンフィルのニューイヤー・コンサートでもお馴染みの名曲を天使の歌声でお楽しみください。
「シュトラウス・フォーエヴァー」(ウィーン少年合唱団)

ウエルネスライフマガジン 2019年4月号掲載分

インフォメーション