クラシックトリビア

「サントリーホール探訪」のイメージ写真

“ぶどう畑”で会いましょう! 「サントリーホール探訪」

ライブで音楽を楽しむために、コンサートホールを訪れる。ちょっとしたぜいたくですよね。非日常の空間に足を踏み入れるだけでも胸が高鳴りますが、ホールの歴史やこだわりを知れば、その体験は一層特別なものになるでしょう。今回は、1986年の開館以来トップレベルの音楽家たちを魅了するとともに、“大人の社交場”として音楽や文化を愛する人々と共に時を刻んできた「サントリーホール」(東京・赤坂)を、より楽しんでいただくためのトリビアをご紹介します。

エントランスに隠されたメッセージ

サントリーホール(以下、ホール)を訪れたことがある人ならば、入口付近のモニュメント(写真左下)をご記憶の方も多いでしょう。金色に輝く半円の重なりは、何を意味しているのでしょうか? 実は、漢字の「響」をグラフィック化したホールのロゴマーク(写真右下)を立体で形作っているのです。ホールが大切にしているそのコンセプト、“美しい響き”で来訪者を迎えているのです。

「入口付近のモニュメント」の写真

地面に接した断面部を起こすと、サントリーホールのロゴマーク「響」の文字に。

「ぶどう畑」がキーワード

「パイプオルゴール」の画像

毎日正午にも音楽を奏でるパイプオルゴール。市民の憩いの場を作っています。

開場の時刻(とき)を告げるパイプオルゴール。正面玄関の上壁から現れ、ぶどう畑で作業をする老人と少年が音楽を奏でます。ステージを囲むように客席が配置された大ホールの設計はヴィンヤード(ぶどう畑)形式と呼ばれ、創設当時は日本で初めて採用された様式(詳しくはこちら)で、「ぶどう畑」はホールの重要なキーワード。また、大ホールの“顔”でもあるオルガンを製作したメーカーが、そのパイプと同じ素材を使って作ったというこだわりのオルゴールなのです。

会場内に見え隠れする、サントリーの遊び心

「サントリーホール」という名前の通り、サントリーグループの文化活動の一環として建てられたコンサートホール。建物の内部には、サントリーの中核事業である「お酒」にまつわるモチーフが見え隠れしています。

「サントリーホールの手すりと舞台照明」の写真

階段の手すりの装飾はビールやウイスキーの原料、麦の穂がモチーフ(左)。シャンパンの泡とぶどうの葉をかたどった照明が舞台を照らす(右)。

このほかにも、大ホールの壁にはウイスキーの樽材と同じ材質のホワイト・オークが使われ、味わい深い音の響きを醸し出しています。

青いバラに込められた想い

「ブルーローズ(小ホール)入口上の一輪」の画像

長年の研究の末、サントリーは世界で初めて青いバラの開発に成功(2004年)。ブルーローズ(小ホール)入口上の一輪をお見逃しなく!

「ブルーローズ(青いバラ)」と呼ばれる、正面入口左手にある小ホール。自然界にはない青いバラの存在は“不可能を可能にする”象徴であることから、「すべての人の可能性が花開く場所となるように」という想いを込めてそう名付けられたそう(2007年改修後)。花言葉「夢かなう」の通り、多くのアーティストたちがここから夢を実現させました。

アーティストたちの素顔に触れる舞台裏

大ホール舞台裏のアーティスト・ラウンジには、ビッグネームの指揮者から新進気鋭の若手演奏家まで自筆のサイン色紙がずらりと並び、ロッカーは各国の出演者たちが記念に貼ったステッカーで埋め尽くされています。舞台の緊張から解放された彼らの素顔が垣間見えるような空間です。

「大ホール舞台裏のアーティスト・ラウンジ」の写真

世界のトップアーティストたちがここで出会い、新しい音楽シーンが生まれることも?

ベルリン・フィルハーモニーとミラノのスカラ座にも同じ手法で撮影、制作された写真

ベルリン・フィルハーモニーとミラノのスカラ座にも同じ手法で撮影、制作された写真がある。

楽屋エリアの廊下には、少し奇妙な写真が飾られています。大ホールの客席や舞台の演奏者をよく見ると・・・すべて同じ人? かと思いきや、1人だけ別人が紛れ込んでいるのだとか。それを聞いて、“間違い探し”に興じる出演者もいるそうです。ユーモアあふれる写真で「本番前の緊張が少しでも和らいだら」という、ホール側の配慮でもあるらしいのです。

※舞台裏の様子は、サントリーホールが開催する「バックステージツアー」に参加すると見学できます(事前申込制、応募者多数の場合は抽選、詳細はサントリーホールのホームページをご覧ください)。

マエストロの言葉が刻まれたプレート

「マエストロの言葉が刻まれたプレート」の画像

大ホールでの演奏を終えたカラヤンは、響きの美しさを「まるで音の宝石箱のようだ」とたたえたといわれている。

“世界一美しい響き”を求め、設計にアドバイスを仰いだのは、20世紀最高の指揮者の1人ヘルベルト・フォン・カラヤン。ホールの音の響きの素晴らしさは、彼の惜しみない協力のおかげともいえるでしょう。そのカラヤンから創設者・佐治敬三(サントリー2代目社長)に贈られた言葉が石盤に刻まれ、大ホールの外壁に掲げられています。

2017年に大規模リニューアルを終え、進化を続けるサントリーホール。これから迎える夏のシーズンには、親子で楽しめるワークショップや、現代音楽への取り組みなど趣向を凝らしたプログラムも交え、皆さんをお待ちしています!

文中画像提供:サントリーホール

「「川のささやき~辻井伸行サントリーホールLIVE![DVD]」辻井伸行(ピアノ)」のDVDジャケット写真
今月の1枚

“盲目の天才ピアニスト”辻井伸行が2008年1月に行ったサントリーホールでのリサイタルを収めたこの映像では、辻井伸行の素敵な演奏とともに、その音楽を美しく包み込むサントリーホールの情景が楽しめます。
「川のささやき~辻井伸行サントリーホールLIVE![DVD]」辻井伸行(ピアノ)

ウエルネスライフマガジン 2019年6月号掲載分

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