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指揮者とはいったい何をする人!?「指揮者」

皆さんこんにちは。クラシックソムリエの田中泰です。前回の「クリスマス、ジルヴェスター&ニューイヤーの楽しみ」はいかがでしたか? 年末年始を素敵なクラシックと共に過ごしていただけたら幸いです。さて今回は、オーケストラを自在にドライヴする「指揮者」の魅力に迫ります。レッツ・エンジョイ・クラシック!

指揮者の成り立ちとその役割は?

作曲家の想いをオーケストラから引き出し、聴衆に伝えるのが指揮者の役目。

作曲家の想いをオーケストラから引き出し、聴衆に伝えるのが指揮者の役目。

その昔、「総理大臣と指揮者は男子たるもの一度はやってみたい仕事のひとつ」などと言われていた指揮者。確かに、指揮棒1本でオーケストラを思い通りにコントロールする姿は格好良さの極み。ある種権力の象徴のように見えるのかもしれませんね。

そもそも指揮者はいったい何をしているのでしょう。まずはその歴史を紐解いてみたいと思います。バッハやヴィヴァルディが活躍していたバロック時代(17世紀初頭から18世紀半ば)には指揮者は存在せず、通奏低音を演奏するチェンバロ奏者や、バイオリンの首席奏者が全体をまとめる役割を果たしていたようです。

一説によればバイオリニストの弓が指揮棒に進化したとも言われています。変わったところでは、フランスの作曲家リュリが背丈ほどの金属製の杖で床を叩いて指揮をしていましたが、誤って自分の足を突いてしまい、その傷がもとで命を落としたという逸話が残っています。その後、作曲家が自らの作品を指揮していた時代を経て現代のような専門職としての指揮者の時代に移行した背景には、オーケストラのレパートリー拡大と聴衆の存在が欠かせません。作曲家たちの想いをオーケストラから引き出して聴衆に伝えること、それが指揮者に求められる役割と存在意義なのです。

指揮者の立場は会社組織に例えれば取締役!?

指揮者であり作曲家、ピアノやオルガンなど鍵盤楽器の演奏と、多彩な活躍で注目を浴びる鈴木優人氏。

指揮者であり作曲家、ピアノやオルガンなど鍵盤楽器の演奏と、多彩な活躍で注目を浴びる鈴木優人氏。

さて、現代の指揮者は何を考えながら指揮台に立っているのでしょう。今、最も注目すべき若手指揮者で鍵盤楽器奏者、鈴木優人氏にお話を伺いました。

「指揮をする上で心掛けていることは、楽譜に込められた作曲家の想いをストレートにオーケストラに伝えることです。そこに変なフィルターが掛からないように気をつけています。オーケストラを統括するためには、前もって正しい方向性や目的地を示すことがポイントです。指揮台の上ではごまかしがききません。100人ものベテラン奏者たちが、目の前の指揮者の資質をあっという間に見抜くわけです。その意味では音楽的な能力もさることながら、音楽に対して強い信念を持つことが重要だと思います。指揮者の立場を会社組織に例えると取締役ですね。作曲家が株主です。取締役は会社を取り仕切っているように見えて、実は株主の意向に従わなければならない。何でも自分で決められるトップの存在ではないのです。ただしカリスマ性は必要です。カリスマ性のない指揮者というのは存在しないと思います」

いやはや大変な仕事です。それだけにやりがいもあるし達成感も大きいのでしょう。

指揮者による音楽の違いを体験する

左上)ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、右上)ヘルベルト・フォン・カラヤン、下)カルロス・クライバー

左上)ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、右上)ヘルベルト・フォン・カラヤン、下)カルロス・クライバー

カリスマという言葉が出たところで、過去のカリスマ指揮者を紹介しておきましょう。古いところでは、没後60年以上経った現在も人気が衰えないヴィルヘルム・フルトヴェングラー。そして“楽壇の帝王”と謳われたヘルベルト・フォン・カラヤン。さらには、指揮をすること自体がニュースになるほどのカリスマ性を誇ったカルロス・クライバーあたりが筆頭です。

彼らの指揮によって音楽はどのように変わるのでしょう。作曲家の想いを再現しようという共通の目的があるにせよ、個性やキャラクターの違いによって描き出される音楽はさまざまです。それがクラシック音楽の楽しみにもつながっているのでしょうね。

試しに彼ら3人の録音でベートーヴェンの「運命」を聴き比べてみてください。きっとその違いに驚かれますよ。

ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」&7番
今月の1枚

カリスマ指揮者クライバーの実力を世界中に知らしめた記念碑的なアルバムがこれ。既存の「運命」が色あせて聴こえるほどのスピード感と力強さを併せ持った演奏は、新時代の幕開けを感じさせます。
ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」&7番

ウエルネスライフマガジン 2015年12月号掲載分

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