人物・作品・仕事

コンサートマスター

指揮者と楽団員をつなぐプロ 「コンサートマスター」

オーケストラから作曲家の想いを引き出す役割として、以前このコラムで「指揮者」の仕事をご紹介しました。今回は、美しいハーモニーや名演奏を技術面から支える立役者、「コンサートマスター」に迫ります。指揮者とともにオーケストラになくてはならない存在のようですが、実際、何をする人なのか・・・? 現役コンサートマスターへのインタビューも交えて、探ってみました。

ときには指揮者の代役を務めることも

“もしも”のときには指揮者の代役を務めるコンマス。

“もしも”のときには指揮者の代役を務めるコンマス。

コンサートマスター(以下、コンマス)とは、一言でいうと指揮者と楽団員の意思疎通を図り、演奏の進行・調整役を務める人です。クラシックのオーケストラでは、多くの場合第1バイオリン※の首席バイオリニストがコンマスを務めます。指揮者に一番近い最前列に座り、演奏中、指揮者にアクシデントがあったり、指揮を続行できない状態になったときなど、コンマスが指揮者の代役を務めることもあるのだとか。

※オーケストラには、2つのバイオリンのパート(第1、第2)があります。第一バイオリンは、主に旋律(メロディー)パートを担当します。

一流のマネジメント能力と演奏技術が求められるコンマス

現在、新日本フィルハーモニー交響楽団と兵庫芸術文化センター管弦楽団でコンサートマスターを兼任する豊嶋泰嗣さん。

現在、新日本フィルハーモニー交響楽団と兵庫芸術文化センター管弦楽団でコンサートマスターを兼任する豊嶋泰嗣さん。

通常の場合では、指揮者とコンマスとの間にどのような役割分担があるのでしょうか。現在、2つの楽団でコンマスを兼任する豊嶋泰嗣さんにお話を伺いました。「音楽的・芸術的な方向を示すのが指揮者で、演奏のタイミングやテクニカルな指示を出すのがコンマスでしょうか」。サッカーチームの監督とキャプテンのような関係だそうです。ゲームの流れを作るのは監督=指揮者ですが、ゴールにボールを持っていくまでの細かい戦略を立て、臨機応変にプレイヤーを動かすのがキャプテン=コンマスなのだそうです。

演奏中以外では、リハーサルでのボウイング※や演奏前の楽器のチューニングをリードします。そして演奏中、バイオリンのソロパートを務めるのもコンマス。演奏者としての腕前もプロ中のプロでなくてはならないようです。

※ボウイング・・・弦楽器演奏における弓の動かし方の技法。弓を動かす方向や速度、あてる場所などによって、音量や音質などが変化します。

リハーサルは情熱的に。本番は、冷静に

短期間で奏者の呼吸を合わせるリハーサルは、指揮者にとってもコンマスにとっても重要な場。

短期間で奏者の呼吸を合わせるリハーサルは、指揮者にとってもコンマスにとっても重要な場。

コンマスの仕事は多岐にわたりますが、どんなところに面白さがあるのでしょうか。 「ある曲を演奏するとき、オーケストラの中には、ベテランもいれば、今日初めてその曲を弾くという新人もいます。さまざまなバックグラウンドを持つ奏者の呼吸を短期間で合わせ、指揮者とともにひとつの音楽にまとめていく。その過程に醍醐味(だいごみ)があります」。すべての奏者が超一流、というオーケストラでコンマスを務めることもある豊嶋さん。でも、キャリアも実力もバラバラな楽団でゼロから音楽を作り上げていく方が面白いんだそうです。

指揮者と意見が対立した時はどうするのでしょう?「“100人いれば100通りの音楽がある”と考え、できるだけ相手の音楽を尊重するようにしています」。コンマスには、器の大きさも求められるのですね。

本番中ももちろん気が抜けません。「本番は、何が起こるか分からない。演奏中に楽器が壊れたり、衣装が引っ掛かったり、アクシデントはたくさんあります。そんなとき、素早く判断して、冷静に対応する。指揮者や楽団員にとって、『この人が居るから安心して演奏できる、いい音が出せる』と思ってもらうことが、コンマスの一番の仕事かもしれませんね」。

今度オーケストラを聴くときには、多くの役割を担いつつ華麗に演奏をリードするコンマスの動きに、ぜひ注目してみてください。

リムスキー=コルサコフ:ワレリー・ゲルギエフ指揮、キーロフ歌劇場管弦楽団 交響組曲「シェエラザード」
今月の1枚

コンマスが活躍する曲といえば、この「シェエラザード」が筆頭。第2楽章「カランダール王子の物語」の冒頭で奏でられる美しいバイオリンソロ“シェエラザードのテーマ”は、コンマスの腕の見せどころです。
リムスキー=コルサコフ:ワレリー・ゲルギエフ指揮、キーロフ歌劇場管弦楽団 交響組曲「シェエラザード」

ウエルネスライフマガジン 2017年2月号掲載分

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