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「レナード・バーンスタイン」のイメージ写真

アメリカが生んだスーパー音楽家 「レナード・バーンスタイン」

2018年、生誕100年を迎えるレナード・バーンスタイン(1918~1990年)は、日本を代表する指揮者の小澤征爾や佐渡裕の師であり、20世紀後半のクラシック界をけん引した音楽家の一人です。指揮者、作曲家、ピアニスト、そして教育者としても活躍したバーンスタイン。そのパワフルな生き方の源泉をクローズアップします。

「アメリカらしさとは何か」を追求した若き日々

バーンスタインの写真

ハーバード大学でピアノと作曲を学んだバーンスタイン。

出典:岡野弁『バーンスタイン わが音楽的人生』 (作品社)

生涯を通じて精力的に活動したバーンスタインの音楽の中心には、自由や平等への希求、そして人間を信じ、愛するという温かい核のようなものがあります。それは、ウクライナ系ユダヤ人移民の子としてアメリカに生まれ、国家と個人、民族のアイデンティティという問題を問い続けた彼の人生観を映し出しているように思えないでしょうか。

ハーバード大学でピアノと作曲を学んだバーンスタインは、学士論文のテーマを『アメリカ音楽への民族的要素の導入』としました。音楽のなかに「アメリカらしさとは何か」を求め、“ジャズ”にその糸口を見出し、多民族国家における“民族主義”を定義づけることに挑戦したのです。異なる人種間の異なる音楽性が融合し、統合された時、そこに普遍的な音楽様式(スタイル)を見出すことで、確固とした文化的基盤を持たないアメリカ(の音楽)に“アメリカ的精神”が生まれ得るとしたその考察は、その後の彼の音楽人生の出発点となったようです。

ニューヨーク・フィル初! アメリカ生まれの指揮者

ディヴィッド・ゲフィン・ホールの写真

ニューヨーク・フィルハーモニックの本拠地、リンカーンセンター内にあるディヴィッド・ゲフィン・ホール。

Photo: By kind permission of Lincoln Center. ©Iñaki Vinaixa

音楽家としてその名が一躍全米に知れ渡ったのは、ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団(現在のニューヨーク・フィルハーモニック)の副指揮者を務めていた20代半ば、体調を崩した客演指揮者ブルーノ・ワルターの代役を務め、大成功を収めたこの公演がラジオで放送されたことによります。そして39歳で常任指揮者兼音楽監督に就任。クラシック音楽の多くがヨーロッパから輸入され、指揮者もヨーロッパから招かれることがほとんどだった当時、アメリカ生まれの指揮者が常任となるのは初めてでした。バーンスタインとニューヨーク・フィルは息の合った演奏を見せ、同オーケストラの黄金時代を築き上げます。

端正な顔立ちに、舞台上での派手なパフォーマンス(演奏がのると指揮台の上でジャンプすることもあった)、また舞台から下りても気さくで大らかなキャラクターで、その音楽性に加えて人間性でも聴衆を魅了していきました。

世界的な大ヒットとなった『ウエスト・サイド・ストーリー』

『ウエスト・サイド・ストーリー』の関係図

2つの異なる民族の非行少年グループの抗争と、その犠牲となった若い男女の恋愛を描いた『ウエスト・サイド・ストーリー』。

指揮者として多忙を極めるなか、バーンスタインは作曲家としても新たな境地をひらいていきます。代表作『ウエスト・サイド・ストーリー』は、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』をベースに、ニューヨークにおける民族グループ抗争に翻弄される若い男女の恋愛を描いた作品。1957年にブロードウェイで初演され、1961年に映画化、世界的に大ヒットしました。ミュージカルにクラシックの要素を組み込んだバーンスタインの音楽が、愛、憎しみ、死という人類共通のテーマを扱いながら、当時アメリカが抱えていた人種対立問題の本質を巧みにあぶり出したストーリーをいきいきと展開させます。

バーンスタイン自身が持ち続けた人種や民族に対する葛藤と時代の空気感がピタリと合い、移民という立場や民族紛争に苦しむ世界中の若者をはじめ、多くの人々の共感を呼びました。

生前、「芸術家だけが“かたちのないもの”を“実在”に変えることができる」と語っていたバーンスタイン。かたちを持たない音楽が、いつの日か民族同士の争いや国境のない世界、真に平和的な世界をつくると信じて、その情熱を傾けていたのでしょう。バーンスタイン生誕100年を迎えた今、世界は彼の望んだ方へ向かっているでしょうか。音楽の可能性を、もう一度問い直す時なのかもしれません。

【参考文献】
『バーンスタイン わが音楽的人生』(作品社)
『レナード・バーンスタイン』(アルファベータ))

:「バーンスタイン:ウエスト・サイド・ストーリー」のCDジャケット
今月の1枚

バーンスタインの名を永遠不滅のものとした大ヒット作の自作自演盤。テ・カナワ&カレーラスという当時望み得る最高のキャストをそろえたこのアルバムによって、作曲家&指揮者の両面でバーンスタインの素晴らしさを体験できます。
レナード・バーンスタイン指揮、キリ・テ・カナワ(ソプラノ)、ホセ・カレーラス(テノール)他:「バーンスタイン:ウエスト・サイド・ストーリー」

ウエルネスライフマガジン 2018年1月号掲載分

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