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「カラヤン」のイメージ写真

こだわりの強いカリスマ指揮者 「カラヤン」

クラシック音楽は少々苦手、という方でも「カラヤン」という名前は聞いたことがあるのではないでしょうか。1954年の初来日以来、たびたび日本にも訪れたカリスマ指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤン(1908~1989年)。飛行機からさっそうと降り立つ、まるでハリウッドスターのようなカラヤンの姿をテレビで目にした方も多いでしょう。そして今年は、カラヤン生誕110年の年。なお衰えない人気の秘密に迫りつつ、サントリーホールとのエピソードもご紹介します。

「楽壇の帝王」と呼ばれた男

「ベルリン・フィルハーモニー」の画像

30年以上にわたりカラヤンが終身指揮者を務めたベルリン・フィルの本拠地、ベルリン・フィルハーモニー。

photographer : Mattias Hamren

巨匠としてのイメージが強いカラヤンですが、若いころは地方の歌劇場でキャリアを積んだり、失業してオーディションを受けたりと、才能を持て余した時期もあったようです。しかし27歳のとき、ローマ帝国時代から温泉保養地として栄えたアーヘン(ドイツ)の市立歌劇場音楽監督に就任。以降は、数々の伝説的な演奏を残してきました。

そして世間から贈られた異名は「楽壇の帝王」。世界トップスリーに数えられる名門ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(ベルリン・フィル)の終身指揮者および芸術監督をはじめ、モーツァルトやベートーヴェンの時代から続くクラシック音楽の聖地・ウィーンの国立歌劇場音楽監督、また世界でも指折りのアーティストたちが集う夏の祭典ザルツブルク音楽祭では芸術監督として・・・など、彼の存在なくしては「音楽界が動かない」と噂されるほどその影響力は絶大で、まさに帝王として楽壇に君臨していました。

「カラヤンの音楽」とは

「CD」のイメージ画像

レコードに続き開発されたCDの規格(収録時間74分42秒)決定の裏には、カラヤンの助言があったといわれている。

帝王と呼ばれるほどの名声を手にしたカラヤンの音楽の根底にあったものは、いったい何だったのでしょうか。それは、意外とシンプルな「美しい音へのこだわり」ではないかと思います。カラヤンはある対談のなかで、「わたしがオーケストラに要求するのは、作曲家が書いたすべての音符を完全に弾き切ることだ」と語っています。芸術に畏敬の念を抱き、時代やトレンドにおもねることなく、楽譜を“正確に再現すること”が彼の音楽の解釈であり、究極のこだわりでした。その正確さの追求が、人々を魅了する美しい音を奏でさせていたのではないでしょうか。そのため、リハーサルを徹底的に行うことでも有名でした。

そしてカラヤンの活躍は、録音技術の進歩とシンクロしています。カラヤンの奏でる音の正確さ、そして美しさが、新しいメディアとして19世紀後半に登場したレコードの特性とマッチしていたのでした。カラヤン自身も新しい機械に強い関心を示し、その後技術が進歩するたびに録音を重ねたそうです。そうして制作されたアルバムは900枚にのぼります。チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」は、より美しい音の再現を求めて7回も録音されたのだとか。

まるで音の宝石箱のようだ

「カラヤンと当時のサントリー社長 佐治敬三」の画像

サントリーホール建設の際、音響実験にも立ち会ったカラヤン(左)と、先頭に立って建設を進めた佐治敬三(右)サントリー社長(当時)。

このカリスマ指揮者カラヤンが設計段階から関わったのが、「世界一美しい響き」をコンセプトに東京初のコンサート専用ホールとして誕生したサントリーホールです。ベルリン・フィルの本拠地、ベルリン・フィルハーモニーと同じヴィンヤード(ブドウ畑)形式が日本で初めて採用され、演奏家と聴衆が一体となれるような臨場感を実現しました。

完成したサントリーホールでの演奏を聴いたカラヤンは、あまりの音の美しさに「まるで音の宝石箱のようだ」と称賛したそうです。ちなみに、サントリーホール前の広場はカラヤンにちなんで、「アーク・カラヤン広場」と名付けられています。カラヤンの名が付いた広場は世界に3カ所のみで、このほかにはカラヤンの故郷ザルツブルクとウィーンにあります。

カラヤン指揮の演奏をライブで聴くことはもうできませんが、膨大な録音を最新のテクノロジーで楽しむもよし、また(本コラムタイトルにもなっている)“音の宝石箱”サントリーホールでは、カラヤンの音へのこだわりを感じていただくことができるでしょう。

【参考文献】
『カラヤンとフルトヴェングラー』(幻冬舎)、『カラヤン 自伝を語る』(白水社)

「アダージョ・カラヤンDX」のCDジャケット
今月の1枚

全世界でシリーズ累計販売500万枚を超える大ヒットを記録した名盤「アダージョ・カラヤン」の最新決定盤には、20世紀最高のカリスマ指揮者カラヤンが遺した美しいメロディが満載です。アダージョに心癒やされる時間をぜひお楽しみください。
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団他:「アダージョ・カラヤンDX」

ウエルネスライフマガジン 2018年9月号掲載分

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