1.過敏性腸症候群(IBS)とは
過敏性腸症候群は、慢性的な腸の不調を感じる病気です。病気の詳細と、その原因について見ていきましょう。
1-1.過敏性腸症候群について
過敏性腸症候群とは、腸が刺激に対して過敏な状態になり、慢性的に腹痛や便通異常を感じる病気のことです。英語ではIBS(irritable bowel syndrome)と呼ばれます。
通常行なわれる検査では、潰瘍や炎症といった器質的な異常が腸に認められないのが特徴です。
日本では、10~20%ほどの人が過敏性腸症候群であると推測され、その多くは若い女性や働き盛りの男性とされています。しかし、日常的な腹痛や下痢の症状に気付きながらも病気とはとらえず、病院を受診しない潜在的な患者も多いと考えられています。
1-2.過敏性腸症候群の原因
過敏性腸症候群の原因には、次のようなものが挙げられます。
過敏性腸症候群になる人の多くは、繊細なタイプです。人間関係や環境変化といったストレスに過敏に反応し、自律神経のバランスを崩すのが原因と考えられます。不安や緊張によって生じた脳の興奮が、腸の運動にも影響をおよぼし、便通異常や腹痛、おなかの張りを引き起こします。
また、過労や生活リズムの乱れ、栄養バランスの偏った食事も原因の一つです。
2.【症状の分類】過敏性腸症候群ガス型とは
過敏性腸症候群では、すべての人が同じ状態になるわけではなく、人によってさまざまな不調が現れます。
ここでは、過敏性腸症候群のおもなタイプを4つ紹介します。
2-1.ガス型
ガス型の特徴は、腹部膨満感があり、おならやゲップが頻繁に出ることです。命に関わる病気ではないものの、おなかの張りやおなら、ゲップが出ることで、仕事や学校生活に支障が出て困る人は少なくありません。
ストレスによって悪化するため、大切な会議や試験など緊張や不安が強まるときに、おならやゲップなどが現れることがあります。
2-2.下痢型
下痢型では、軽い緊張感や不安を感じただけで、突然激しい下痢が起きます。「神経性下痢」とも呼ばれ、これまでは男性に多く見られるタイプでした。しかし最近では、仕事などのストレスを抱える女性にも多く見られるようになっています。
下痢型はストレスのほかに、下痢を招きやすい食品の摂取や胃腸に負担がかかる食事の仕方も影響していると考えられます。
2-3.便秘型
慢性的な便秘や小さくコロコロとした便は、便秘型の特徴です。比較的女性に多く見られるタイプで、便秘だけでなく腹部の不快感や腹痛をともないます。強いストレスがかかることで腸の収縮運動が悪くなり、便秘につながるとされています。
また、慢性的な食物繊維不足も便秘の悪化を促す要因です。
2-4.混合型(不安定型)
過敏性腸症候群のなかには、便秘や下痢のどちらも生じる人もいます。「交代制便通異常」とも呼ばれる混合型(不安定型)では、数日おきに下痢と便秘を繰り返すのが特徴です。
腹部の不快感や腹痛があり、便が十分に出ないこともあります。このタイプでは、状態により便がやわらかくなったり、硬くなったりを繰り返します。
3.過敏性腸症候群(IBS)の対処法
過敏性腸症候群は、精神的ストレスや生活習慣の乱れがきっかけで起こります。医師に相談のうえ、適切な対処法をとりましょう。
食生活の見直しは、腸の調子を整えることにつながります。食物繊維をはじめ、まんべんなく栄養が摂れる食事を一日3回規則正しく食べましょう。食生活を正せば、ストレスに対抗する力も底上げしてくれます。
暴飲暴食も過敏性腸症候群の一因です。食べすぎに注意して、脂っこい食べ物や香辛料は控えつつ、緑黄色野菜を毎日のメニューに加えるとよいでしょう。
また、生活リズムを整え、過労や睡眠不足といった過敏性腸症候群のリスクを減らしましょう。適度な運動習慣や趣味、リフレッシュの時間を持つことも大切です。
上記を踏まえつつ、興味のあることに挑戦してみたり、周りの人に悩みを相談したりするなど、自分に合ったストレス解消法を見つけることが大事になります。
過敏性腸症候群ガス型の改善には生活習慣の見直しが大切
おなかの張り・おなら・ゲップなどに悩まされる、過敏性腸症候群ガス型の発生にはストレスや生活習慣が関わっています。
そのため不調をやわらげるには、食生活や休養の取り方などの見直しが重要です。便通の悩みは生活に支障が出る人もいるため、おなかの不調に気付いたときは早めに対策しましょう。
監修者情報
氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。