虫歯予防におけるフッ素(フッ化物)の活用について解説

「フッ素はどうして虫歯の予防に効果的なの?」
「フッ素とフッ化物はどう違うの?」
歯の健康を意識する方のなかには、フッ素に関心を持っている方も多いのではないでしょうか。

フッ素は自然界に存在する元素であり、これが陰イオンの状態物をフッ化物と呼びます。フッ化物は、虫歯菌に溶かされにくい歯を作り、歯の再石灰化を促したり口内の酸性化を抑制したりするため、虫歯予防に効果的です。

今回は、フッ素とフッ化物の違いや、有効活用する方法について解説します。

1.フッ素・フッ化物とは?

フッ素とフッ化物の違いや、おもな働きを解説します。

1-1.フッ素について

フッ素は、広く自然界のあらゆるものに存在する元素です。強い反応性を持つため、単一の元素では自然界に存在せず、化合物として存在します。そのため、日本で「フッ素」と呼ぶ場合、フッ化物を指すことが少なくありません。

1-2.フッ化物について

前述したように、自然界にある場合、フッ素は他の物質と結合してフッ化物になっています。歯科では、歯質の強化対策などを目的にフッ素が用いられますが、実際にはフッ素ではなく、化合物であるフッ化物を使用しています。

フッ化物が歯のエナメル質に取り込まれると、フッ化ハイドロキシアパタイトやフルオロアパタイトという物質になり、歯の脱灰(だっかい)を抑制します。脱灰とは、歯垢のなかの細菌が酸を作って歯のリン(P)やカルシウム(Ca)を溶出させてしまう反応のことで、フッ化物を取り込んだ歯は酸に溶けにくく脱灰しづらい状態となるのです。

また、フッ化物は歯の再石灰化を促すため、脱灰した歯がカルシウムイオンなどを効率的に取り込めるようになります。さらに、虫歯の原因菌が作り出す代謝酵素を抑制し、口内環境の酸性化を防いで虫歯になりにくい状態へと導きます。

2.虫歯予防におけるフッ素(フッ化物)の活用

フッ素(フッ化物)が虫歯予防で実用される場面を解説します。

2-1.フッ化物歯面塗布

フッ化物溶液を歯に塗布する方法です。この処置は歯科医師と歯科衛生士だけが行なえるもので、歯科医院や市区町村の保健センター、保健所などで受けられます。

フッ化物歯面塗布は古くから、子どもの虫歯予防の目的で実施されてきました。虫歯の予防効果を得るには、年に2回以上の処置を定期的に受けなければなりません。

2-2.フッ化物洗口

比較的低濃度のフッ化物水溶液で口をすすぎ、フッ化物を歯に直接作用させる方法です。フッ化物洗口の取り組み方には、洗口を週に5回行なう毎日法と、週に1回行なう週1回法があり、フッ化物の濃度と1回に使用する洗口液量がそれぞれ異なります。

毎日法は週1回法よりも低濃度で洗口液量も少ないため未就学児に、週1回法は小学生以上に向いています。

2-3.フッ化物配合歯みがき剤

フッ化物を配合した歯みがき剤を用いて歯をみがき、口のなかにフッ化物を供給する方法です。幼い子どもや高齢者でも簡単に実施でき、自宅でも手軽に取り入れられます。

なお、フッ化物イオンの濃度は、薬用歯みがき類製造販売承認基準により年齢別に定められています。そのため、フッ化物配合歯みがき剤を購入する際は、使用者の年齢に合った製品を選びましょう。

フッ素を使って虫歯を予防しよう

フッ素は自然界に広く存在する元素で、フッ素が他の物質と結び付くと、虫歯予防に役立つフッ化物になります。

フッ化物の活用法には、歯科でのフッ化物歯面塗布や家庭などのフッ化物洗口、フッ化物配合歯みがき剤の使用などがあります。

フッ化物は、幼い子どもから高齢者まで幅広い年齢層で利用できるため、積極的に活用しましょう。

監修者情報

氏名:福田尚美(ふくだ・なおみ)
歯科医師臨床研修終了後、審美歯科・ホワイトニング専門医院に勤務。現在は一般歯科・小児歯科非常勤勤務のかたわら歯科医師としての知識と経験を生かし、歯科医師webライター、歯科企業やオンラインセミナーのサポートなども行なっている。