レム睡眠行動障害とは?症状や対処方法などを解説

「寝ぼけて部屋のドアを壊してしまった」「一緒に寝ているパートナーが急に大声を上げて暴れ出した」という経験がある方は、レム睡眠行動障害の可能性があります。

発症には脳の一部の機能低下が関わっており、治療が必要なケースもあります。悪化すると、本人も周囲の人も怪我を負う危険性があるため、早めの対処が大切です。

今回はレム睡眠行動障害や発症のメカニズム、自分やベッドパートナーにその症状が見られた場合の注意点と対策を紹介します。

1.レム睡眠とは?

レム睡眠は睡眠段階の一つで、急速眼球運動(Rapid Eye Movements)をともなうことから、英語の頭文字をとってレム(REM)睡眠と呼ばれます。レム睡眠時には急速眼球運動のほか、骨格筋の弛緩がみられます。起きているときに似た脳波状態を示し、夢を見るのはおもにレム睡眠のときです。

睡眠段階にはレム睡眠とノンレム睡眠があり、ノンレム睡眠では脳の活動が低下しています。通常、夜間睡眠では90~120分ほどの深いノンレム睡眠のあとに、レム睡眠が現れます。起床時間に向かうにつれてレム睡眠が長くなっていきます。一晩を通して見ると、レム睡眠が占める割合はおよそ2割です。

睡眠は、脳や体の疲れを回復させるほか、精神安定や記憶の定着など重要な役割を果たします。睡眠不足は、注意力が低下することで仕事の効率が落ち、疲れが溜まりやすくなる原因です。また、人間が一生のうちに眠る時間は、25~30年にのぼるといわれています。

人生のなかでも、多くの割合を占める睡眠を快適にしたいものです。睡眠について悩みがある人は、早めに対策しましょう。

2.レム睡眠行動障害とその症状

レム睡眠行動障害とは、睡眠中に夢のなかと同じように行動してしまう病気です。いわゆる寝ぼけや夢にうなされている状態です。一般的には、次のような兆候が現れるとされています。

  • ・大声で寝言を発する、奇声を上げる

  • ・ベッドから転落する

  • ・同室者を叩く、蹴る 

  • ・ドアや家具を壊す など

症状が強く出ると、ベッドから離れて部屋のなかを歩き回ったり、窓から飛び降りて怪我をしたりするケースも報告されています。さらに、寝ぼけて暴れる結果、一緒に眠っているベッドパートナーに怪我をさせてしまうこともあります。

通常、レム睡眠時には骨格筋活動が低下しているため、体を動かすことができません。しかし、レム睡眠行動障害では抑制機構がうまく働かなくなることから、夢のとおりの行動を現実にしてしまうのです。抑制機構は脳と脊髄のつなぎ目にある脳幹に存在し、何らかの理由で障害されたり加齢にともなって弱まったりします。

レム睡眠行動障害は高齢の方に多く、子どもや若い人ではほとんどありません。特に50代以降の男性に多く、年を取るにつれて増える傾向です。また、レム睡眠行動障害はストレスで悪化するおそれがあります。

3.レム睡眠行動障害が自分に起きている場合の注意点

レム睡眠行動障害は、何らかの病気の初期の症状かもしれません。このような症状が出ている人のおよそ半分に、中枢神経の病気があると報告されています。また、現在使用している薬がレム睡眠に影響して、症状が出ることもあります。

レム睡眠行動障害の症状が見られる人は、現在もしくは将来の病気に関係している可能性があります。状況によっては薬による治療が必要になる場合もあるため、自覚がある場合は一度専門医に相談しましょう。

4.レム睡眠行動障害がパートナーに起きている場合の対処法

ベッドパートナーにレム睡眠行動障害が見られる場合、本人にそのつもりがなくてもあなたに怪我を負わせてしまうおそれがあります。

レム睡眠行動障害時に強い刺激を与えると、覚醒可能であることをあらかじめ知っておくとよいでしょう。異常な行動が見られたときは、大声で呼びかけたり、体を揺さぶったりすると起こすことができます。

また、安全確保のために寝室の環境を整えましょう。眠るときにベッドパートナーと一定距離をとる工夫も大切です。

レム睡眠行動障害で生活に支障があるときは医師に相談を

レム睡眠行動障害は、レム睡眠時の筋肉の緊張を下げる神経調節システムが障害され、夢のとおりに行動してしまう病気です。

ただの寝ぼけではなく、ときとして本人や周りの人が怪我をするおそれがあります。転倒によって自分が怪我したり、ベッドパートナーを殴るなどして怪我を負わせたりしないように、寝室の家具の配置やパートナーとの距離などを見直すとよいでしょう。

また、異常な行動の裏には、ほかの病気が隠れている可能性が少なくありません。このような行動に気付いたら早めに病院を受診して対策しましょう。

監修者情報

氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。