脂質異常症に自覚症状はある?
脂質異常症の原因や診断基準について解説

健康診断で、コレステロールが高めと言われたことはないでしょうか。コレステロール値が高すぎる場合は、「脂質異常症」と診断されます。

脂質異常症を放置すると、命に関わる病気の引き金になりかねないため、脂質異常症と診断されたら早めに医師へ相談したほうがよいでしょう。

今回は、脂質異常症の原因や診断基準、兆候の有無についてまとめています。検査結果が悪かった方は、今後の健康作りにお役立てください。

1.脂質異常症とは?

まずは、脂質異常症について理解を深めていきましょう。

1-1.脂質異常症

脂質異常症とは、血液検査の脂質の数値が基準値から外れた状態のことです。

血液中には、4つの脂質(コレステロール・中性脂肪・リン脂質・遊離脂肪酸)があり、特にコレステロール(LDL・HDL)や中性脂肪(トリグリセライド)の値が異常な状態を指します。

具体的には、次の3つのタイプがあります。

  • 高LDLコレステロール血症

    血液中のLDLコレステロール値が高い状態です。LDLコレステロールは、「悪玉コレステロール」としても知られており、過剰に増えると血管壁に蓄積して血管を硬くさせ、体に害をおよぼします。

  • 低HDLコレステロール血症

    血液中のHDLコレステロール値が低い状態です。HDLコレステロールは「善玉コレステロール」として知られており、血管壁のコレステロールを回収して、血管が硬くなるのを抑える働きがあります。そのため、HDLコレステロールが少なくなると、体に悪影響が現れます。

  • 高トリグリセライド血症

    血液中の中性脂肪(トリグリセライド)値が高い状態です。中性脂肪が増えると、LDLコレステロールが増加し、HDLコレステロールが減少しやすくなるため、血管が詰まりやすくなる環境を進行させてしまうのです。

1-2.脂質異常症のおもな原因

脂質異常症のおもな原因には、以下が挙げられます。

  • ・食べすぎ・飲みすぎ

  • ・運動不足

  • ・肥満

  • ・飽和脂肪酸の多い食事(肉の脂身・鶏皮・バター・ラード・インスタントラーメンなどの加工食品・生クリームなど)

  • ・糖分・脂質の多い高カロリーな食事

  • ・喫煙(タバコには、中性脂肪を増やしHDLコレステロールを減らす作用がある)

  • ・ストレス

  • ・遺伝

  • ・高血圧など他の生活習慣病の合併症

  • ・甲状腺機能低下症・肝臓病により起こるもの

2.脂質異常症に自覚症状はある?

脂質異常症には多くの場合、はっきりとした自覚症状がありません。そのため、気付かずに放置してしまうことが多くあります。

なかには、コレステロールが蓄積して、顔や手足に黄色腫という白い斑点状のできものが現れたり、アキレス腱が厚くなったりする人もいますが、自覚症状が現れる頻度は低いです。

脂質異常症は、より早く発見して対処をすることが大切です。自覚症状がほとんどないため、定期的に血液検査を受けて、数値を確認しましょう。

3.脂質異常症と診断される基準について

脂質異常症は、次の基準をもとに診断されます。

【脂質異常症の診断基準】

脂質異常症の種類 検査項目 数値
高LDLコレステロール血症 LDLコレステロール 140mg/dl以上
境界域高LDLコレステロール血症 120~139㎎/dl
低HDLコレステロール血症 HDLコレステロール 40㎎/dl未満
高トリグリセライド血症 中性脂肪(トリグリセライド) 150㎎/dl以上 (※空腹時採血)
175㎎/dl以上 (※随時採血)
高non-HDLコレステロール血症 Non-HDLコレステロール 170㎎/dl以上
境界域高non-HDLコレステロール血症 150~169㎎/dl

※空腹時採血は、10時間以上の絶食時の採血結果を基本とします(カロリーのない水・お茶は可)
※随時採血は、空腹時かどうか確認できないときの採血結果とします
参照:e-ヘルスネット「脂質異常症

ただし、上表の診断基準値に当てはまる場合であっても、すぐに治療が必要になるとは限らないため、医師の指示に従いましょう。

脂質異常症は、そのまま放置しておくとさまざまな病気のリスクを高めるため、生活習慣を見直す努力が必要です。

健康な毎日を過ごすために定期的な血液検査を

脂質異常症には「高LDLコレステロール血症」「低HDLコレステロール血症」「高トリグリセライド血症」の3タイプがあります。脂質異常症のおもな原因は、暴飲暴食・運動不足・肥満・ストレス・喫煙といった、生活習慣の乱れです。その他、遺伝的な要因、肝臓や甲状腺の病気の合併症として現れるケースもあります。

明らかな自覚症状がない場合が多く、気付かずに放置してしまうことが少なくありません。しかし、脂質異常症は心臓や脳で起こる命に関わる病気のリスクとなるため、放置は危険です。

定期的に血液検査を受け、脂質異常症を早期発見・早期治療につなげることが大切です。いつまでもイキイキと過ごせるよう、日頃から生活習慣に気を付けましょう。

監修者情報

氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。