行動変容とは?5つのステージモデルについて解説

「行動変容」という言葉をご存じでしょうか。
行動変容とは、健康的な心身を目指すために、生活習慣などの改善を行なうことです。そして、改善に至るまでには、5つのステージがあるとされています。

では、5つのステージとはどういったものなのでしょうか。

この記事では、行動変容の概要を踏まえ、5つのステージモデルについて解説します。

1.行動変容とは

行動変容とは、健康の保持・増進を目的として、ライフスタイルや行動を改善することを指します。

行動変容の具体例には以下のようなものがあります。

  • 1. 新しい行動を始める

  • 2. 過去に経験したことがある行動を再開する

  • 3. 好ましくない行動を止める

  • 4. 行動を修正する

  • 5. 1~4の行動を継続して行なう

行動変容に影響する要因には、次の個人的要因と環境要因があります。私たちの行動は、これらによって左右されています。

【個人的要因】

  • ・性別、年齢、職業、学歴などの社会経済的なもの

  • ・受診や通院、食事療法などの個人の体調に関するもの

  • ・保有する知識

  • ・意見や信念、価値観などの態度

【環境要因】

  • ・地域や医療体制、施設までの交通網といった社会資源

  • ・家族や友人、職場の人間など関係者の援助

  • ・健康に対する社会や職場の取り組みといった社会基盤

2.行動変容の5つのステージモデルについて

ここからは、行動変容の5つのステージについて解説します。

2-1.無関心期

無関心期とは、6カ月以内に何らかの行動を起こして行動変容を目指す、という気持ちがない時期のことです。改善すべき行動や生活習慣を認識していない状態であり、その状態を放置した結果がどのようなものになるのかも気付いていません。なかには、行動を変えようと思ったものの、失敗してあきらめてしまったケースもあります。

この時期は、問題を認識するために、そのままの生活が続くと良くない結果につながるという焦りを抱かせることが大切です。

問題を解決しようという意識を高めるために、身体活動で得られるメリットを理解したり、周囲へ与える影響を考えたりすることも重要です。

2-2.関心期

関心期は、行動変容のために6カ月以内に行動をしようと思っている時期です。行動を変えるべきだと感じてはいるものの、行動を変えることでのメリット・デメリットを天秤にかけて、迷っています。このステージでは、悩んだまま行動に移せない方が多いでしょう。

関心期で重要なことは、行動をしたときの自分に良いイメージを持ち、行動していないときの自分に対して悪いイメージを持つことです。

2-3.準備期

準備期は、行動変容のために1カ月以内に動こうと考えている時期を指します。まだ行動変容は行なっていないものの、必要なものを購入したり関連するイベントに参加したりしている状態です。

例えば、行動変容に関係する分野の本や、実施に必要なウェアなどを購入します。また、実施することについて「○○に興味がある」と、家族や友人、知人などの周囲の人に話していることも多いでしょう。

この時期には、行動することへ自信を持ち、周囲へそのことを周知することが重要です。

2-4.実行期

実行期は、継続して6カ月未満ではあるものの、明らかに行動変容をしている時期です。

習慣として定着はしていないため、継続を妨げるような行動をすることもあります。また、デメリットが見つかれば途中で止めることも考えられます。

2-5.維持期

維持期は、継続して6カ月以上経過し、明らかに行動変容をしている時期を指します。変わるための行動を、努力して続けている状態です。

例えば、モチベーションを保てるように同じ目標を持つ仲間を集めたり、外食をする場合でも健康的な食事を提供するレストランを探したりします。

実行期と維持期では、不健康な習慣・行動を健康的なものへ置き換えることが重要です。行動を継続するためには、周囲の人のサポートを得たり、継続できたことに対して自らにご褒美を与えたりすることも大切です。また、より継続しやすくするために、環境を整える必要もあります。

以上が、行動変容における5つのステージです。

なお、このステージは必ずしも、順を追って進行するわけではありません。順調に次のステージへと進んでいたはずなのに、前のステージに戻ることもあります。

行動変容を行ない、しっかりと習慣化していくためには、自己効力感を高めることがポイントです。そのためには、モデリングと成功体験が必要になります。

モデリングとは、年齢や性別、生活スタイルなどが自分に近い人から、継続する方法を聞いたり真似したりすることです。そして、成功体験を積み重ねるためには、達成できる可能性が高い小さな目標を立てて、それらをこなしていきます。

これにより、自分にもできるという自信につながるでしょう。

行動変容ステージモデルに合わせた働きかけが大切

私たちが行動を変えるときには5つのステージがあり、それぞれのステージで本人の意思が大きく異なります。そのため、自身が現在どのステージに属しているのかをきちんと理解し、そのステージに合わせた行動をとることが大切です。

5つのステージは、順調に進んでいたと思っていても、逆戻りするケースもあるでしょう。その際、大切なのはそこであきらめないことです。

自身に近い人からコツを聞いたり、少しずつ成功体験を積み重ねたりして自己効力感を高め、しっかりと習慣化していきましょう。

監修者情報

氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。