1.日本人の平均睡眠時間
現代の日本人は、どのくらい睡眠を取っているのでしょうか。
2021年に、総務省が行なった社会生活基本調査(※1)によると、10歳以上の日本人における一日あたりの睡眠時間の平均は、7時間54分という統計が出ています。2016年のデータと比べると、睡眠時間は14分増加していることがわかりました。
過去20年間の睡眠時間の変化を見ると、これまでは減少傾向にあった睡眠時間が2021年には増加に転じています。この傾向は特に、在宅勤務をしていた人に見られることもわかりました。
※1 出典:総務省統計局「令和3年社会生活基本調査結果」
2.睡眠が不足するとどうなる?
ここからは、睡眠が不足することで私たちの体にどのような影響があるのかを解説します。
2-1.現代人の睡眠不足問題
先述したように、データ上では睡眠時間が増加傾向にありますが、慢性的に睡眠不足が続いている方もいるでしょう。現代には、長時間通勤やシフト勤務、インターネットやゲームとった娯楽など、睡眠不足を引き起こすリスク要因が多くあります。
先ほどの資料(※1)にて、年齢ごとの睡眠時間の傾向を見ると、20~30代の若年層の平均睡眠時間は7~8時間で、働き盛りの世代である40~50代では7時間程度です。そして、性別ごとに見ると、女性は男性に比べて睡眠時間がやや短い傾向にあります。
また、2011年の社会生活基本調査(※2)を見ると、子ども(10代前半)の平均就寝時間は、曜日に関係なく遅いことが明らかになっています。子どもの遅寝や睡眠不足は、学習能力や精神状態などへ悪影響をおよぼす可能性が示唆されているため、早めの対策が必要といえるでしょう。
※1 出典:総務省統計局「令和3年社会生活基本調査結果」
※2 出典:総務省統計局「平成 23 年社会生活基本調査」
2-2.睡眠不足が健康へもたらす影響とは
睡眠不足が続くことで、私たちの体にはどのような影響が起こるのでしょうか。
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日々の不調の要因となる
睡眠不足の状態が続くと、日中に眠気が起こりやすい、意欲の低下、記憶力の低下などを引き起こすだけでなく、自律神経の不調も招くことがわかっています。
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心の健康に影響する
睡眠が不足していると、心の健康を損なうリスクが示唆されています。心が不健康であると、さらに睡眠をとっても十分に休んだ感覚が得られない状態や不眠を招き、悪循環につながります。
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生活習慣に関連する病気のリスクが高くなる
寝不足が続くと、食欲増加の要因となることがわかっています。これは睡眠不足によって、食欲を高めるホルモンの分泌が促され、食欲を抑えるホルモンの分泌が減少しやすくなるためです。
慢性的に睡眠に障害があると、高血圧や脂質異常症、高尿酸血症など、あらゆる生活習慣に関連した病気のリスクを高めることがわかっています。
たかが睡眠と放置せず、睡眠をうまく取れない日が続いたり体調に不安を感じたりしたら専門医に相談しましょう。
3.睡眠の質を高めるポイント
睡眠不足が続くと、体や心にあらゆる悪影響をおよぼすことがわかりました。ここでは、睡眠の質を良くするためのポイントを解説します。
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規則正しい生活を心がける
睡眠の質を良くするためには、毎日なるべく同じ時間に就寝し、規則正しい生活を送ることが大切です。
私たちの体には体内時計と呼ばれるものがあり、これを整えると睡眠がスムーズに行なわれます。太陽の光は体内時計を整える働きがあるため、朝起きたらまず日光を浴びることを習慣にしてみましょう。
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入浴の時間や湯温を工夫する
入浴によって体温を上げることで快眠につながることがわかっています。寝付きを良くするには、寝る2~3時間前に入浴を済ませるのが理想的です。
お湯の温度が高すぎると体に負担がかかるため、なるべく控えましょう。38~39度のお湯であれば腹部まで30分程度、42度のお湯であれば5分ほど浸かることで、睡眠の質の向上が期待できます。
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運動習慣をつける
適度な運動は、睡眠の質を向上に役立ちます。たまに運動するよりも、継続的に運動を行なうとより効果的です。
とはいえ、運動であればなんでも良いわけではありません。激しい運動は逆に睡眠を妨げるため、避けましょう。この場合には、ウォーキングやランニングなど、体への負担が少ない有酸素運動を行なうのがおすすめです。
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睡眠に適した照明の工夫
睡眠を促進するメラトニンというホルモンは、明るい光をたくさん浴びると分泌が妨げられてしまいます。そのため、入眠前には寝室の照明の明るさを抑えましょう。
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体に合った寝具を選ぶ
睡眠の質を高めるには、寝具を整えることも大切です。寝ているときに快適な状態を保てるよう、保温性や吸湿・放湿性の良い寝具を選びましょう。
健康のために睡眠時間は十分に取ろう
現代の日本では、長時間の仕事やインターネットの利用などで、常に睡眠不足のリスク要因にさらされている人は多いでしょう。慢性的な睡眠不足は体だけでなく心の不調も招き、また生活習慣に関連した病気のリスクを高めるといわれています。
睡眠の質を高めるためには、規則正しい生活のほかに適切な入浴や運動習慣、寝る環境を整えるなどの方法があります。
健康的な毎日を過ごすためにも、まずは今の生活習慣を見直してみてください。そして、今回お伝えしたなかで、できそうなものを実践してみましょう。
監修者情報
氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。