1.平均寿命と健康寿命について
平均寿命とは「0歳時点での平均余命」です。人がこの世に生まれてから何年生存できるかという期待値で、特定地域における包括的な健康度を示す指標として、長年使われてきました。
一方、健康寿命は「健康に関する問題で日常生活の制限が生じない期間」のことを指します。こちらは、世界保健機関(WHO)が2000年に新しく提唱したものです。
従来の平均寿命は、介護が必要な期間(寝たきりなど)も含めて算出されるため、一生における健康な時期とのギャップが問題となっていました。平均寿命と健康寿命との差は、いわば「健康的に生活できない期間」です。
そのため、健康寿命という定義が広まって以来、単に長生きするだけではなく、健康的に生活できる期間を延ばせるかどうかが重視されています。厚生労働省が取り組んでいる「健康日本21」をはじめ、日本でも健康寿命の延伸を目指した施策が進められています。
日本は平均寿命・健康寿命どちらも世界トップクラスですが、平均寿命は今後も伸びると予測されているため、健康寿命も延ばして差を縮小することが重要です。
2.日本人女性の平均寿命について
厚生労働省が公開している「令和3年簡易生命表」によると、2021年における日本人女性の平均寿命は87.57歳です。過去最高値を更新した2020年に比べて0.14年下がっていますが、世界的に見ると女性の平均寿命がかなり長い傾向にあります。
なお、2021年の日本人男性の平均寿命は81.47歳です。前年より0.09年下がっていますが、男女差は0.05年縮小しています。
平均寿命の年次推移は、以下のとおりです。
西暦 |
男性 |
女性 |
男女差 |
1947年 |
50.06 |
53.96 |
3.90 |
1950~1952年 |
59.57 |
62.97 |
3.40 |
1955年 |
63.60 |
67.75 |
4.15 |
1960年 |
65.32 |
70.19 |
4.87 |
1965年 |
67.74 |
72.92 |
5.18 |
1970年 |
69.31 |
74.66 |
5.35 |
1975年 |
71.73 |
76.89 |
5.16 |
1980年 |
73.35 |
78.76 |
5.41 |
1985年 |
74.78 |
80.48 |
5.70 |
1990年 |
75.92 |
81.90 |
5.98 |
1995年 |
76.38 |
82.85 |
6.47 |
2000年 |
77.72 |
84.60 |
6.88 |
2005年 |
78.56 |
85.52 |
6.96 |
2010年 |
79.55 |
86.30 |
6.75 |
2015年 |
80.75 |
86.99 |
6.24 |
2020年 |
81.56 |
87.71 |
6.15 |
2021年 |
81.47 |
87.57 |
6.10 |
(単位:年)
参照:厚生労働省「令和3年簡易生命表 平均寿命の年次推移」
日本でこのような長寿化が実現した背景には、国民皆保険制度の導入や医療システムの発展があります。実際、日本の医療は世界中から高く評価されており、フィリピンやベトナムなど導入を試みる国も存在するほどです。
3.寿命を延ばすためにできること
健康寿命を延ばすためのポイントを紹介します。
3-1.運動習慣をつける
日頃から適度に運動することは、生活習慣病の予防に欠かせません。また、健康寿命の縮小につながる転倒や骨折を防ぐという点でも、運動習慣をつける必要があります。
運動とひと口にいっても多種多様ですが、健康寿命を延ばすことが目的なら「有酸素運動」と「レジスタンス運動」がおすすめです。
有酸素運動にはウォーキングやジョギング、水泳などがあります。軽く息が弾む程度の運動を1日20~60分、週3回以上のペースで行ないましょう。
一方、レジスタンス運動はスクワットや腕立て伏せ、ダンベル体操など、筋肉に抵抗(レジスタンス)をかけて動かすトレーニングです。こちらは1セット10~15回程度を最大3セット程度、週2~3回のペースで行ないましょう。
3-2.心臓に関する病気を予防する
日本人が亡くなる原因で多い、心臓に関する病気を予防することも健康寿命の延伸において大切です。
予防方法としては、以下のような対策が挙げられます。
-
・生活習慣を整える
-
・魚や野菜をよく食べる
-
・塩分・脂質・糖質を抑える
-
・禁煙する
-
・睡眠をしっかりとる など
また、定期的に健康診断を受けることも忘れないようにしましょう。
健康寿命を延ばして豊かな人生を実現しよう
日本は世界トップクラスの長寿国で、平均寿命は男女ともに上昇傾向が続いています。しかし、本当の意味で「豊かな人生」を実現したいなら、単に長生きすることではなく、健康的に生活できる状態を維持したまま長生きすることが大切です。
継続的な運動・食生活の見直し・禁煙・睡眠時間の確保など、日常生活を改善するだけでも健康寿命は延ばせます。ぜひ取り組んでみてください。
監修者情報
氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。