1.免疫力とは
空気中には病気を起こすウイルスや細菌、カビなど病原体が浮遊しています。そのため、常に病原体が身体の中に侵入してきています。病原体が身体の中に侵入して増殖した状態が「感染」です。しかし、普段は身体の中に病原体が侵入してもすぐに発症には至らず、私たちの免疫力により病原体を撃退しています。
この病原体を撃退する際に重要になってくる物質が、白血球、マクロファージ、樹状細胞、NK細胞などの血液中の免疫細胞です。これらはそれぞれが異なった役割を担うことで、私たちの複雑な免疫システムを維持しています。
おたふく風邪やはしか(麻疹)などに見られるように、一度感染した病気にかかりにくくなるのは、免疫力が侵入した病原体を覚えて、効率よく撃退する仕組みを持っているからです。
2.免疫力が低下してしまう原因
免疫力は、20代をピークにして加齢とともに低下するほか、ストレスもその機能低下に関与しているとされています。
免疫は、自律神経によってコントロールされています。自律神経は無意識に働き、免疫だけでなく、呼吸や体温、血管、内臓などの働きを調節していますが、過度なストレスなどでその働きが乱れることがあります。その結果、免疫力の低下につながるといわれているのです。
慢性的に微熱が続く、風邪をひきやすい、疲れやすいなどの状態である場合は、加齢や日々のストレスの蓄積などにより、免疫力が低下している可能性があります。次章から紹介する方法を参考に、免疫力アップを目指しましょう。
3.免疫力アップのための5つの方法
免疫力をアップさせるためには、生活習慣の改善が重要です。こちらでは、免疫力をアップさせるのに適した生活習慣について解説します。
3-1.適度な運動
夜、なかなか寝付けない方には、以下のような対策がおすすめです。
3-2.十分な睡眠
免疫力にも関与する自律神経の乱れを取り除くためにも、十分な睡眠を確保したほうが良いでしょう。睡眠中は、免疫細胞が活性化し、免疫力が高まります。
3-3.栄養バランスのとれた食事
免疫力アップには食事への意識も欠かすことはできません。1日3食を毎日食べるように心がけましょう。とくに玄米や野菜、たんぱく質を中心とした、栄養バランスのとれた食生活を実践するのがおすすめです。
3-4.身体を温める
体が冷えると免疫力が低下して、風邪などの病気になりやすくなります。そのため、身体を温めることが、免疫力アップに効果的です。身体を温めるには、運動だけでなく入浴することも良いでしょう。ゆっくり入浴することで、身体を温めて血流をよくします。約38℃~40℃のお湯に20分ほど入浴するのがおすすめです。
3-5.笑う
笑うことでストレスが減少し、免疫力のアップにつながることが知られています。具体的には、笑いによって免疫細胞の一つであるNK細胞の活性化が認められているようです。日頃から、思いっきり笑うことも意識してみてください。
4.免疫力を高めるとされる食べ物
免疫力には、腸内環境や食べ物の抗酸化作用が関係していることが知られています。
ここからは、免疫についてのそれぞれの仕組みと、免疫力を高める食べ物について解説します。
4-1.腸内環境を整える食べ物
口から肛門まで消化器は一本の管でつながっているため、病原体が侵入する入り口である口や鼻などから離れていても、小腸や大腸にまで病原体が達する危険にさらされているのです。そのため、小腸や大腸には、体内の免疫細胞の60~70%が集まって、病原体の侵入に備えています。
このことから、免疫力の維持のためには腸内環境を整えることが大切になります。
腸内環境を整える食べ物として、発酵食品や食物繊維を豊富に含んでいる食材があります。発酵食品は、ヨーグルトやチーズ、納豆、味噌などです。とくにヨーグルトやチーズ、納豆などには善玉菌である乳酸菌やビフィズス菌が豊富に含まれている一方で、腸内に定住させることができないことから、毎日の食事に取り入れてみると良いでしょう。
また、腸内環境を整えるには、便秘の解消も必要です。食物繊維は、便の体積を増やす材料になるだけでなく、腸内環境の改善に関与する腸内細菌を増やす作用があります。そのため、お通じが気になる場合には積極的に摂りたい栄養素です。食物繊維が多い食べ物としては、そば、さつまいも、かぼちゃ、ごぼう、ひじきなどがあります。
4-2.抗酸化作用がある食べ物
呼吸によって取り込んだ酸素のなかで、活性化された一部の酸素は活性酸素と呼ばれます。この活性酸素は、ストレスや激しい運動などによって過剰に生成され、免疫力の低下を招くとされています。抗酸化作用がある物質が体内にあると活性酸素の生成が抑制されるので、抗酸化作用のある栄養素を意識して摂取してみてください。抗酸化作用のある栄養素としてビタミンAやビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどがあります。
抗酸化作用のある食べ物の一例としては、以下のものがあります。
生活習慣を改善し免疫力をアップさせよう
免疫力は、体内に侵入した病原体を撃退する働きがあります。病気にならないようにするためには、免疫力を高めることが重要です。免疫力は、加齢とともに低下しますが、過度なストレスなどによる自律神経の乱れでも低下します。そのため、免疫力を低下させないように、ストレス対策や生活習慣の改善が重要です。
また、免疫力をアップさせるためには、腸内環境を整えたり、抗酸化作用のある食材を摂ったりすることも良いでしょう。腸内環境を整える食材には発酵食品や食物繊維の多い食材があり、抗酸化作用のある食材としては、緑黄色野菜や果物、アーモンドなどがあります。
免疫力を高めるために、食事の栄養バランスを見直したり、生活習慣を改善したりしてみてください。
監修者情報
氏名:西原 佑一(にしはら・ゆういち)
2018年慶應義塾大学医学部外科学大学院卒業(医学博士)。
現在は関東の病院で外科医として勤務。おもにがん治療 ・外科手術 ・教育などの外科医療を提供している。