肌のハリとは?ハリがなくなる原因と対処法について解説

ハリは肌の健やかさを示す指標の一つで、内部にあるコラーゲンやヒアルロン酸などの働きによって作られます。柔軟でハリのある肌は若々しく健康的な印象を与えますが、年齢を重ねると肌のハリが失われていくと感じる方も多いでしょう。

この記事では、肌のハリを維持するメカニズムや、ハリが低下する原因、対処法について解説します。

1.肌のハリとは

肌のハリは、若々しい肌を維持するうえで重要な要素の一つです。肌のハリについて理解するために、まずは肌の構造を見ていきましょう。

人間の肌は、表面に近いほうから「表皮」「真皮」「皮下組織」で構成されています。このなかで肌のハリに関わっているのは、肌の土台ともいえる真皮です。真皮には、肌の弾力を維持するコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸、プロテオグリカンなどの成分があります。

コラーゲンは、真皮の約70%を占めるタンパク質です。網目状の構造で、上にある表皮を支えてハリを生み出します。また、エラスチンは伸縮性や弾力性に優れた線維で、肌に柔軟性を与える働きがあるといわれる成分です。

保水成分であるヒアルロン酸とプロテオグリカンは、大量の水分を蓄えて肌に潤いを与えます。「肌のハリがある」とは、これらの成分がしっかり生成され、肌の弾力を支える構造が維持されている状態といえるでしょう。

2.肌のハリが低下するおもな原因

肌のハリを低下させる原因には、加齢、紫外線、生活習慣の乱れなどが挙げられます。

肌のハリを維持するために重要なコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸などは、真皮中に存在する「線維芽細胞」から作り出される成分です。しかし、線維芽細胞は加齢とともに、働きが低下するとされています。その結果、肌のハリを維持するために必要な成分が十分に作り出せなくなり、肌のハリが失われていくでしょう。

また、紫外線も、肌のハリを低下させる危険因子の一つです。紫外線によるシミ、シワ、たるみなどの肌トラブルは「光老化」と呼ばれ、肌が老化する原因の80%を占めるともいわれています。

地表に届く紫外線には、波長が長いUVAと波長が短いUVBの2種類があり、このうち肌のハリと深く関係しているのはUVAです。UVAはUVBよりエネルギーは弱めですが、波長が長いため肌の真皮まで到達し、線維芽細胞を破壊して肌の弾力を低下させます。

また、偏った食生活や睡眠不足などの生活習慣の乱れも、肌の状態を悪くし、ハリを失わせる要因といえるでしょう。

3.肌のハリを維持、向上するための対処法

肌のハリを維持するためには、UVケアを徹底し、肌に浴びる紫外線の量を減らすことや、食生活、睡眠などが重要になります。

3-1.紫外線対策

日焼け止めの効果を表す指標には、「SPF」と「PA」の2つがあります。このうち、特に肌のハリと関係しているのは、真皮にダメージを与えるUVAをカットするPAです。PAは+~++++の4段階表記で、+の表記が多いほどUVAを防ぐ効果が高まります。

日常の買い物や散歩でも、PA++程度の日焼け止めは塗るようにしましょう。紫外線の強い季節にレジャーやスポーツなどで長時間屋外にいるときは、PA++++の日焼け止めが適しています。

ただし、生活シーンに合った日焼け止めを使っていても、使用する量が少なすぎると、十分な効果を発揮できません。顔に塗る日焼け止めの量の目安は、クリームタイプならパール1粒分、液状タイプなら1円玉大です。顔全体にまんべんなく伸ばし、さらに同じ量をもう1回重ね付けしましょう。

一般的に、冬は夏より紫外線が弱くなりますが、冬に紫外線対策をしなくても良いわけではありません。UVBなら冬は夏の5~6分の1程度に弱まりますが、UVAは冬でも夏の半分程度の強さがあることが報告されています。

また、雪の反射で紫外線の暴露量は2倍程度大きくなるため、冬であっても油断は禁物です。紫外線対策は1年を通して、欠かさずに行ないましょう。

3-2.バランスの取れた食生活

肌の細胞にきちんと栄養が届くよう、バランスのとれた食事を心がけることも大切です。特に、コラーゲンを構成するアミノ酸や、コラーゲンの生成に関わるビタミンCなどをとるとよいでしょう。

ビタミンCは、ピーマンやブロッコリー、かんきつ類などに多く含まれています。水溶性かつ熱に弱い栄養素のため、生のまま食べるか、スープなどで煮汁も摂取するのがおすすめです。

加えて、腸内環境を整えることでも、美肌効果が期待できます。腸内に善玉菌が増えると腸の運動が活発になり、お通じが良くなるでしょう。食物繊維やオリゴ糖が含まれる豆類、善玉菌が含まれる発酵食品などを、毎日の食生活に積極的に取り入れてみてください。

また、コラーゲンペプチド、エラスチンペプチド、プロテオグリカンなどを配合した美容食品を一日1回、12週間継続して摂取すると、肌のたるみやシワが改善されたという報告もあります。肌のハリを維持するために、食品からの栄養補給と併せて、美容食品やサプリメントなども活用するとよいでしょう。

3-3.十分な睡眠時間

美しくハリのある肌を作るためには、睡眠をしっかり取ることも大切です。睡眠不足になると、肌のダメージをきちんと回復できません。十分な睡眠時間を確保するとともに、睡眠の質を低下させる就寝前の喫煙は控え、アルコールやカフェインの摂取なども節度ある適度な量にするようにしましょう。

また、スムーズに眠りにつくためには、体内の温度を適度に下げる必要があります。暑すぎると汗をかいても体温調節がうまくできず、逆に寒すぎると熱を保持しようとして体内の温度が下がりません。季節に合わせて寝室の温度や湿度を適切に保ち、快適な環境を作りましょう。

なお、寝る前は、明るすぎる照明や白っぽい色味の光を避けることも良い睡眠につながります。

3-4.ストレスの発散

ストレスも美肌の大敵です。過度なストレスは、肌のダメージ回復を遅らせるだけでなく、肌と関係が深い臓器である腸の働きも低下させます。ゆっくりとお風呂に浸かるなど、心身ともにリラックスできる時間を確保しましょう。

肌のハリには紫外線対策やバランスのいい食事が大切

肌のハリを維持しているのは、真皮に含まれるコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などの成分で、それらを作り出すのは真皮にある線維芽細胞です。加齢や紫外線などの影響で、線維芽細胞の働きが低下すると、肌のハリを維持する構造が保てなくなり、たるみの原因になります。

肌のハリを維持するためには、日頃から紫外線対策を行ない、栄養バランスのとれた食事や十分な睡眠など規則正しい生活を心がけましょう。

監修者情報

氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。