1.β-カロテンとは
自然界に広くあらゆるところに存在する黄色、または赤色の色素をカロテノイドといいます。カロテノイドはカロテン類とキサントフィル類の2つに分類されますが、カロテン類の代表的なものがβ-カロテンです。 β-カロテンはビタミンA活性を有しているため、ヒトが摂取した場合は体内でビタミンA(レチノール・レチナール・レチノイン酸)に変換されます。 具体的にはβ-カロテンは小腸粘膜上皮細胞から吸収されてレチナールになり、このレチナールが還元されればレチノール、酸化されるとレチノイン酸として体内に存在することになります。ビタミンAに変わる物質を総称してプロビタミンAといいますが、β-カロテンもその一つです。 ただし、体内に入ったβ-カロテンのすべてがビタミンAに変わるわけではありません。
2.β-カロテンのおもな働き
β-カロテンは成長に関する重要なビタミンで、レチノールとも呼ばれています。 そして、うす暗い環境下でクリアに活動ができない方は、レチノールが足りていない可能性があります。 またレチノールは、ビタミンAの食事摂取基準の数値(レチノール活性当量:㎍RAE)として使用されています。
2-1.レチノール
不飽和脂肪酸のうち、炭素間の二重結合を1つ持つのが一価不飽和脂肪酸です。オリーブ油に多く含まるオレイン酸が、一価不飽和脂肪酸として知られています。 血中のLDL(悪玉)コレステロール値を下げる作用があることから、健康維持に必要な栄養素だといえるでしょう。 なお、一価不飽和脂肪酸は必須脂肪酸ではないため、厚生労働省の定める食事摂取基準では摂取目標量や目安量が設けられていません。
2-2.カロテノイド
ビタミンAの機能以外の働きとして、ビタミンAに変換されず体内に蓄積した、カロテノイドとしての作用があります。 カロテノイド(カロテン類)は若々しさに欠かせない成分として知られており、美容や健康への関心が高い方に好まれています。
3.β-カロテンの摂取を考慮する場面
つぎに該当する場合、β-カロテン(ビタミンA)の摂取が必要である可能性があります。
通常の食事をしていれば、基本的にβ-カロテン(ビタミンA)が不足する危険性は低いと考えられています。しかし、無理なダイエットや長期的に下痢をおこしている方は、ビタミンAが不足することもありますので注意してください。
4.β-カロテンの一日摂取目安量
β-カロテン(ビタミンA)の食事摂取基準*1を紹介します。
性別
男性
女性
年齢等
推定平均必要量*2
推奨量*2
目安量*3
上限量*3
推定平均必要量*2
推奨量*2
目安量*3
上限量*3
0~5(月)
–
–
300
600
–
–
300
600
6~11(月)
–
–
400
600
–
–
400
600
1~2(歳)
300
400
–
600
250
350
–
600
3~5(歳)
350
450
–
700
350
500
–
850
6~7(歳)
300
400
–
950
300
400
–
1,200
8~9(歳)
350
500
–
1,200
350
500
–
1,500
10~11(歳)
450
600
–
1,500
400
600
–
1,900
12~14(歳)
550
800
–
2,100
500
700
–
2,500
15~17(歳)
650
900
–
2,500
500
650
–
2,800
18~29(歳)
600
850
–
2,700
450
650
–
2,700
30~49(歳)
650
900
–
2,700
500
700
–
2,700
50~64(歳)
650
900
–
2,700
500
700
–
2,700
65~74(歳)
600
850
–
2,700
500
700
–
2,700
75以上(歳)
550
800
–
2,700
450
650
–
2,700
妊婦初期(付加量)
+0
+0
–
–
妊婦中期(付加量)
+60
+80
–
–
授乳婦
+300
+450
–
–
*1 レチノール活性当量(㎍RAE)
=レチノール(μg)+β─カロテン(μg)×1/12+α─カロテン(μg)×1/24 +β─クリプトキサンチン(μg)×1/24+その他のプロビタミン A カロテノイド(μg)×1/24
*2プロビタミン A カロテノイドを含む
*3プロビタミン A カロテノイドを含まない
※推奨量:ある性・年齢階級に属する人々のほとんど(97~98%)が1日の必要量を満たすと推定される1日の摂取量
※目安量:推定平均必要量・推奨量を算定するのに十分な科学的根拠が得られない場合に、ある性・年齢階級に属する人々が、良好な栄養状態を維持するのに十分な量
※上限量:ある性・年齢階級に属するほとんどすべての人々が、過剰摂取による健康障害を起こすことのない栄養素摂取量の最大限の量
引用:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会「日本人の食事摂取基準(2020年版) 」
4-1.β‐カロテンの過剰摂取で生じうる症状
β-カロテンのプロビタミンAとしての過剰摂取による障害報告はないのが現状です。皮膚が黄色くなる柑皮症をまねくこともありますが、健康に有害ではないため障害とは考えられていません。 そのため、食事摂取基準におけるビタミンAの上限量は、β-カロテンを含めずに算出されています。 一方で、ビタミンAの過剰摂取では頭痛や吐き気、めまい等が引き起こされる可能性があります。また、過剰摂取の状態が長期間にわたる場合、脂溶性という性質もあいまって中枢神経系への影響や肝臓の異常等が起こることも知られています。
5.β-カロテンを含む食品
β-カロテンを多く含む食品は以下のとおりです。日々の食生活に上手に取り入れてみてください。
食品名
含有量(100gあたりg)
あまのり/ほしのり
38000μg
パセリ/乾
28000μg
とうがらし/乾
14000μg
にんじん/冷凍/油いため
11000μg
しそ/葉/生
11000μg
(文部科学省「食品成分データベース 」をもとに作成)
β-カロテンで健やかな毎日を過ごしましょう
カロテノイドの一種であるβ-カロテンについて紹介しました。 β-カロテンは体内に取り込むことで、ビタミンAに変換されるプロビタミンAです。 ビタミンAはレチノール・レチナール・レチノイン酸の総称ですが、そのうちのレチノールは、視細胞の光刺激反応に関与しています。 体内でビタミンAに変換されていないβ-カロテンは、カロテノイドとして若々しさに貢献してくれることが期待できるでしょう。 鮮明な毎日を送りたい方や、いつまでも若々しくいたい方におすすめの成分です。 適切な摂取量を守りながらβ-カロテンを取り入れ、元気に過ごしましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。 日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。