「ロイシン」の働きとは?
役割や含まれる食べ物、一日の摂取量について解説

私たちの体を構成する要素として一番多くを占める物質は、水です。
そして、水の次に多い物質が、今回ご紹介する「ロイシン」が属するアミノ酸になります。

アミノ酸は全部で20種類あり、そのなかでも、体内で合成できない9種類を必須アミノ酸と呼びます。ロイシンはこの必須アミノ酸の一つで、おもに筋肉量を増やしたり、維持したりすることに関与する栄養素です。

ここからは、そのロイシンの具体的な役割や摂取目安量について詳しくみていきましょう。

1.ロイシンとは

ロイシンは、必須アミノ酸のうちの一つです。

必須アミノ酸はロイシンのほか、バリン・イソロイシン・リジン・メチオニン・フェニルアラニン・トレオニン(スレオニン)・トリプトファン・ヒスチジンの9種類で、これらは体内で合成できないため、日々の食事から摂取しなければなりません。

とはいえ、ロイシンはほとんどのたんぱく質に含まれるため、通常の食事をしている限り不足することは考えにくいとされています。必要量の摂取に関して、過度に敏感になる必要はないでしょう。

また、9種類の必須アミノ酸のうち約30~40%を占めているのが、ロイシン・バリン・イソロイシンで、この3種をまとめて分岐鎖アミノ酸(BCAA)と呼んでいます。必須アミノ酸のなかでも、筋肉に深く関与するのがこのBCAAです。

特にロイシンは、アミノ酸のなかでも最も多くの量を必要とする栄養素であることから、その具体的な役割や摂取目安量について知っておくと、筋肉量を意識し、理想的な体づくりを目指したい人には有用といえるでしょう。

2.ロイシンのおもな働き

ロイシンを含むBCAAは、おもに筋肉に対して重要な役割を担っている物質です。ここからはロイシンを中心に、その具体的な働きについて解説します。

2-1.たんぱく質同化作用を誘引

ロイシンは必須アミノ酸のなかでも、筋肉量の維持・増加につながるたんぱく質同化作用が強いことが知られています。

人体における筋量を左右しているのが、たんぱく質の同化作用と異化作用です。栄養摂取や運動により同化作用が高まり(筋量増加)、その一方で空腹やストレスにより異化作用(筋量低下)が働き、筋量はそれぞれの作用のバランスによって決定されます。

しかし、酸化ストレスなどの原因で異化が強まり、その刺激が同化を上回ると、筋肉は委縮傾向に陥ることになります。ロイシンをはじめ、必須アミノ酸は、筋肉に関与するたんぱく質合成を促進することによって同化作用を誘引する働きを持つことから、筋肉量を維持することに一役買っているのです。

2-2.たんぱく質の合成の促進

筋肉を肥大させたい方にとってもロイシンは欠かせません。筋肥大を目指すには、相応のトレーニングに併せ、適切なタイミングでの必須アミノ酸の摂取が必要です。

具体的には、トレーニング開始直前とトレーニング終了時にたんぱく質や必須アミノ酸などを摂取することが有効とされています。このときに摂取した栄養素による筋たんぱく質の合成促進には、ロイシンが深く関与しているという見方があるのです。

2-3.筋肉のエネルギー代謝

通常、人が運動する際に消費するエネルギーの供給元は糖質と脂質です。ただし、ハードな運動などをこなした際に代謝されるエネルギーは、たんぱく質やアミノ酸からも供給されると考えられています。

ロイシンを含むBCAAは、その際のエネルギー源になりやすい物質です。高強度の運動はもちろんのこと、運動の習慣のない人が軽度な運動を行なった場合でも血中のBCAAは減少するため、体を動かすときにBCAAを補給し代謝させることで、持久力のアップなど、効率的な運動を行なう際に有用とされています。

3.ロイシンの一日摂取目安量

年代別に見るロイシンの一日あたりの目安量は、以下のとおりです。食事における摂取量の目安にしてください。なお、目安量に関して男女で差はありません。

年齢(歳) 必要量(mg/kg 体重/日)
0.5 73
1~2 54
3~10 44
11~14 44
15~17 42
18以上 39


※1歳未満は目安量
※推奨量:ある性・年齢階級に属する人々のほとんど(97~98%)が1日の必要量を満たすと推定される1日の摂取量
※目安量:推定平均必要量・推奨量を算定するのに十分な科学的根拠が得られない場合に、ある性・年齢階級に属する人々が、良好な栄養状態を維持するのに十分な量
※上限量:ある性・年齢階級に属するほとんどすべての人々が、過剰摂取による健康障害を起こすことのない栄養素摂取量の最大限の量
引用:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会「日本人の食事摂取基準(2020年版)

上記を踏まえ、次章では、ロイシンを含む食べ物について紹介します。

4.ロイシンを含む食べ物

ロイシンを含む食べ物を、動物性食品と植物性食品にわけて紹介します。普段の食事に上手に取り入れてみてください。

4-1.動物性食品

にしん/かずのこ/乾 100g 中 7300mg
とびうお/煮干し 100g 中 6400mg
かつお節 100g 中 5900mg

(文部科学省「食品成分データベース」をもとに作成)

4-2.植物性食品

小麦たんぱく/粉末状 100g 中 5400mg
大豆たんぱく/繊維状大豆たんぱく 100g 中 5200mg
大豆たんぱく/濃縮大豆たんぱく 100g 中 5100mg

(文部科学省「食品成分データベース」をもとに作成)

5.ロイシンの安全性について

食品衛生法(昭和22年法律第233号)第11条第3項の規定に基づき、人の健康を損なうおそれがないと定められた物質を「対象外物質」と呼びます。ロイシンは、この対象外物質に該当する栄養素です。

2012年にも各種評価書等を用いて再び審議がされていますが、結論は変わらず安全性の高い栄養素であるとされています。

ロイシンは筋肉の構成成分

私たちの体を構成する重要な要素である必須アミノ酸。
なかでもロイシンはバリン・イソロイシンとともにBCAAと呼ばれ、筋肉における重要な働きを担う栄養素です。

ロイシンはほかのアミノ酸と同じように、たんぱく質の構成成分としての役割を果たすだけでなく、たんぱく質同化作用という筋肉の維持・増加を助ける働きを持ち合わせています。
また、筋肉のエネルギー代謝にも深く関係していることも知られています。

ロイシンは体内で合成できないため、食事で摂取しなければなりません。
通常の食生活を送っていればロイシンを不足させることはほとんどありませんが、運動をする機会が少ない方など筋量低下が気になる方は、ロイシンを多く含む食事を心がけてみてはいかがでしょうか。

監修者情報

氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。