1.薄毛のおもな原因
薄毛に悩む方は共通して、毛根がうまく形成されない形態異常を持つことが考えられます。この形態異常を招く原因は人それぞれですが、ここではおもな原因を3つ紹介します。
1-1.食生活
髪の主成分はタンパク質です。また、鉄や亜鉛なども、頭皮や髪にとって大事な栄養素とされています。
これらの栄養不足が薄毛の原因になり得ると考えられており、食事制限などによる無理なダイエットによって食事の栄養バランスが悪くなり、薄毛につながるおそれがあります。
また、薄毛は高脂肪食との関連も指摘されています。調査によってこれまでに、肥満から男性型脱毛症につながるおそれがあることは示されていました。
肥満がどのように薄毛や脱毛に関わっているのか、その詳しいプロセスやメカニズムは明らかになっていませんでしたが、近年のマウスでの研究により高脂肪食が毛包のミニチュア化を発生させることがわかっています。
1-2.運動不足
運動不足は血流の悪化を引き起こします。
頭皮の血流が十分でない場合、髪に必要な量の酸素や栄養が供給されないため薄毛の原因になると考えられています。歩く習慣のない方、仕事などで座っている時間が長い方は注意してください。
1-3.睡眠不足
詳しいメカニズムはいまだに不明ですが、睡眠不足は薄毛や脱毛の原因としてよく知られているものです。これには、睡眠不足による自律神経の乱れが影響していると考えられるでしょう。
2.薄毛を引き起こすヘアサイクルの変化
私たちの髪には毛周期があり、「成長期」「退行期」「休止期」から再び「成長期」へと循環して成長しています。
休止期にあたる髪は頭髪の7~13%を占めるのが通常ですが、加齢にともないその割合が増えるため、年を重ねるほど薄毛を引き起こしやすくなるのです。
また、髪を育てる力も加齢にともなって衰えるため、髪が細くなるなど髪質の変化もあらわれます。
3.脱毛症の種類
薄毛には毛が細くなるものと、髪が抜けて少なくなるもののほかに、この両方が同時に起こるものもあります。ここでは脱毛症について、種類別に紹介します。
3-1.円形脱毛症
後天的に発生する脱毛症で、円形の脱毛班ができます。赤ちゃんから高齢者まで幅広い年代に生じることがあります。皮膚の免疫失調によるものと考えられており、肉体的、精神的ストレスが引き金となるとされていますが、明らかな誘因がないことも多くみられます。
1ヵ所だけまるい形に脱毛する単発型が基本ですが、複数の脱毛が見られる多発型もあります。頭全体の脱毛があるものを全頭型、眉毛やまつ毛、体毛も含めて全身の脱毛があるものを汎発型といいます。
3-2.薬剤性脱毛症
薬剤が原因の脱毛症です。
よく知られているのが、抗がん剤によって毛が抜ける脱毛です。また、抗うつ薬などは、休止期毛を増やすことがあるとされています。
3-3.男性型脱毛症
男性ホルモンの影響で生じる脱毛症です。
毛周期を繰り返すなかで徐々に休止期の髪が増えていき、十分に髪が成長しなくなることから、頭頂部や前頭部の髪が細く短くなっていきます。そして毛包が小さくなり、最終的には髪が生えなくなるのです。30代頃から薄毛を気にし始める方が増えますが、男性の場合は早ければ20代前半から脱毛を生じることもあります。
4.日常生活でできる薄毛の対処法
薄毛や脱毛の原因となる疾患を抱えている場合は、その病気の治療に専念することが重要です。そして、原因となる疾患がなく、薄毛の原因がわからない場合は生活習慣の見直しをしていきましょう。
生活習慣を見直す際には、バランスの取れた食事や適度な運動、良質な睡眠を意識してみてください。これらを毎日積み重ねることで、薄毛・脱毛の進行抑制や毛母細胞の活性化につながります。
また、毛周期の変化を抑えることで薄毛の進行を緩やかにするには、頭皮を健康に保つことも意識してみてください。洗いすぎに注意しながら、余分な皮脂を落とす丁寧な洗髪をし、頭皮の血流を良くしておくことも重要です。
髪の毛の健康を考えて生活習慣を見直そう
薄毛のメカニズムは、まだまだ明らかになっていない部分が多くあります。
しかしながら、健康的な生活が薄毛対策につながることはわかっています。ぜひ、食生活の乱れや運動不足、睡眠不足を解消し、自分に合った頭皮ケアをしていってください。
これを機に髪の毛や頭皮の健康を考えて、生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか。
監修者情報
氏名:松繁 治(まつしげ・おさむ)
2009年から整形外科医として病院に勤務。 現在はおもに整形外科中心に外来業務・手術業務などにあたる。 専門は脊椎手術・脊椎内視鏡手術など。