1.筋力維持に必要なこと
みなさんは、「サルコペニア」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。サルコペニアとは、ギリシャ語で「サルコ=筋肉」「ペニア=喪失」という言葉を組み合わせたもので、日本語では筋虚弱症(きんきょじゃくしょう)ともいわれています。
サルコペニアは、高齢になるにつれ、骨格筋量が減り筋力が低下する老化現象です。筋力が著しく落ちると日常生活にも支障が出るため、年齢を重ねても必要な筋力を維持することが重要といえます。
ここでは、筋力を維持するための重要なポイントを見ていきましょう。
1-1.適度な運動と健康的な食生活
人は年齢を重ねるにつれて、筋肉の合成機能が低下します。この要因は、運動だけではなく食生活にもあります。そのため、運動と食事の両面から意識することが大切です。
1-2.年齢を重ねても筋力の向上は可能
加齢によって筋力が衰えてきたからといって、決して悲観的に考える必要はありません。
筋肉を構成する筋繊維は、筋肉をずっと使わないままでいると細くなってしまいますが、年齢を重ねても大きく減少することはない組織です。細くなった筋繊維は、適切な運動やトレーニングによって鍛えることができます。
2.筋力維持に役立つ運動習慣(トレーニング)
筋繊維をしっかりと鍛えて、筋力を向上させるためにおすすめのトレーニングを紹介します。
2-1.QOL(生活の質)に大きく関わる筋肉を鍛える
太腿前の大腿四頭筋・お尻の大臀筋(だいでんきん)・腹筋群・背筋群など、日常動作の基盤となる筋肉を鍛えるトレーニングを、継続的に行なうことが重要です。
これらの筋肉は、加齢の影響で衰えやすい筋肉でもあるため、しっかりと鍛えることがQOLの維持・向上のために重要なポイントです。
2-2.レジスタンス運動を行なう
加齢により衰えやすい筋肉を鍛えるには、日常的に適度な運動、とりわけレジスタンス運動を継続的に行なうことが推奨されています。
レジスタンス運動とは、筋肉に負荷をかけた動作を繰り返し行う運動のことです。
具体的には、スクワットや腹筋・腕立て伏せなどで筋力強化を図ることで、サルコペニアの予防にもつながります。
2-3.日常生活のなかで活動量を上げる意識を忘れずに
サルコペニアの防止には、運動を行なうだけではなく、日頃から活発に元気良く過ごすことも大切です。以下のように、筋肉をしっかりと使うことを意識して生活しましょう。
これらは一部に過ぎませんが、日々の積み重ねで筋力アップが期待できます。できることからコツコツと積み重ねていきましょう。
3.筋力維持に役立つ食習慣
筋肉作りに欠かせない食事のポイントを紹介します。
3-1.「主食」「主菜」「副菜」をバランス良く摂取しましょう
運動を行なうには、エネルギーが必要です。そもそも栄養が十分に摂れていない状態で、運動や筋トレを行なっても逆効果になることもあります。筋力維持・アップのためには、特定の栄養に偏らず、主食・主菜・副菜のバランスを考慮した食事を心がけましょう。
3-2.たんぱく質が不足しないようにしましょう
筋肉作りのためには、栄養素のなかでも主菜にあたるたんぱく質を積極的に摂りたいところです。
たんぱく質は、体内で合成することのできない良質なたんぱく質でもある分岐鎖アミノ酸(BCAA)が多く含まれる食品からの摂取がおすすめです。筋肉量の低下防止のためにも不足しないように意識して摂取しましょう。
【分岐鎖アミノ酸の多い食品の例】
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• 鮭
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• 鯖
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• マグロの赤身
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• 卵
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• 牛乳
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• 納豆
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• 高野豆腐
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• 赤身肉
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• 鶏もも肉
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• 豚ロース など
3-3.回遊魚に含まれる「アンセリン」の摂取
「アンセリン」は、マグロやカツオなど回遊魚の筋肉中に多く含まれている成分です。時速100㎞で生涯泳ぎ続ける、マグロやカツオなどの活力源として、筋肉成分「アンセリン」の存在が挙げられます。筋肉の土台作りをサポートする成分なので、積極的に摂ることをおすすめします。
3-4.野菜に含まれる「ケルセチン」の摂取
「ケルセチン」は、野菜に多く含まれるポリフェノールの一つです。筋肉の構成成分との関わりも大きく、「アンセリン」とともに筋肉作りをサポートしてくれます。
筋力維持には運動や食事習慣を意識しましょう
年齢を重ねてからも、運動習慣や食習慣を意識することで、筋肉量の減少を食い止めることは可能です。
これからも元気に自分の足で歩き、生活の質を保つためにも、適度な運動や必要なエネルギー・栄養の摂取など、できることから取り組んでいきましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。