1.薄毛の原因
髪は伸びることと抜けることを繰り返していますが、この循環のことを「ヘアサイクル」といいます。若い人はこのサイクルが規則的で髪の寿命も長く元気である人が多いでしょう。
正常なヘアサイクルは、髪が伸びる時期である「成長期」が2~6年、髪の成長が止まる「退行期」が2~3週間、髪が抜ける時期の「休止期」が3~4カ月ほどであり、成長期が長くなっています。
その一方で、何らかの原因でサイクルが乱れてしまうと、髪の寿命が短くなり、成長しきることなく抜けてしまったり、新しい髪がなかなか生えてこなかったりして、薄毛が目立ちやすくなるでしょう。薄毛の人のヘアサイクルは、正常なときと比べると不規則で成長期が短くなりやすい傾向があります。
薄毛の原因としては遺伝的要素だけでなく、頭皮の環境が悪化していることや、睡眠不足や食生活の偏り、パソコン作業による眼の疲れや肩こりなど、生活習慣の乱れも関わっていると考えられています。
2.薄毛改善のために気を付けるべき生活習慣
頭頂部は心臓よりも高い位置にあり、血液が届きにくくその分栄養も不足しがちです。これが抜け毛の要因の一つといわれています。そのため、なるべく頭皮の血行を良くするための生活習慣が大切です。
以下に、血行不良をまねきやすい習慣や、その他の気を付けたい習慣を解説します。
2-1.頭皮の血行不良をまねく生活習慣
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パソコン作業が多い
眼の疲れや肩こりをまねき、血液の流れを悪くさせて薄毛のリスクを高める可能性があります。対策としては、パソコンやスマートフォンなどの長時間利用は避けるようにし、休憩を挟みながら作業したり、ストレッチを取り入れたりして血行の悪化を防ぎましょう。
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喫煙習慣がある
煙草の煙は血管を収縮させて血流悪化をまねきます。抜け毛や薄毛が気になるという人は禁煙するようにしましょう。
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冷たいものをよく飲む
冷たいものばかり飲んでいると、体を冷やしやすくなり、血行不良をまねきます。常温か温かい飲み物を飲むようにして、冷たいものはなるべく避けましょう。
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運動不足である
運動不足が続いていると、血液の流れが悪くなる傾向があります。ウォーキングやストレッチなどで体を動かす習慣をつけましょう。また、頭皮そのものにやさしく手を当てて動かし、血流改善を図ることもおすすめです。
2-2.頭皮の栄養不足をまねく生活習慣
2-3.頭皮自体に悪影響を与える生活習慣
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ドライヤーによる乾燥
髪を乾かすときにドライヤーを使っている人は多いでしょう。しかし、頭皮が乾燥しすぎるとかゆみや炎症をまねくといわれています。ドライヤーを当てるときは熱を一ヶ所に集中させずに分散させ、できる限り冷風で乾かすとよいでしょう。
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紫外線による日焼け
紫外線は頭皮の皮脂の酸化や、発汗によるかゆみを引き起こします。外出時は帽子や日傘などで対策しましょう。
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整髪料を落とさずに寝てしまう
ヘアワックスを使って髪をセットした日に、髪を洗わずに寝てしまっていませんか。ヘアワックスの成分が髪や頭皮に残っている状態でいると、雑菌が繁殖しやすくなります。しっかりシャンプーで洗いましょう。
頭皮を守るためのシャンプーの仕方にもコツがあります。以下は、正しいシャンプーの手順です。
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1. シャワーのお湯で地肌についた汗やホコリなどの汚れを落とす。
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2. シャンプーを髪の根元で泡立て、指の腹を使い、首・耳の上・額の生え際からそれぞれ頭頂部にかけて髪にもみ込む。
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3. 指の腹を頭皮につけたまま円を描くように頭頂部・額の生え際・側頭部・耳の後ろを洗い、最後にシャワーでしっかりとすすぐ。
シャンプーを泡立てずにごしごしと洗ってしまうと頭皮が傷つきやすく、かゆみや炎症をまねくおそれがあります。しっかりと泡立ててから洗いましょう。
2-4.不摂生な生活習慣
薄毛が気になってきたら早めに生活習慣の見直しを
薄毛はヘアサイクルの乱れや血行不良などによって引き起こされます。
髪が生えている範囲は心臓よりも上にあり、血液や栄養がスムーズに行き届かない場合があるため、生活習慣を見直し血流の改善に努めることが大切です。
見直すべき生活習慣のなかには、薄毛に限らず、身体的な健康を守るためにも有効なものもあります。髪の健康について考えることをきっかけに、身体的な健康にも気を配ってみるのもおすすめです。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。