1.加齢とは?老化との違い
「年齢を重ねると、誰もが老化する」といったように、加齢と老化は同じ意味を持つと誤解されることが多いようです。しかし、この2つはそれぞれ異なる意味を持つ言葉です。
加齢は、生まれてから今に至るまでの物理的な経過時間を指すため、生年月日が同じ2人なら、50年後にはともに50歳を迎えます。
対して老化は、加齢にともない体の機能が低下したり、外見が変化したりすることです。人によって同じ年齢であっても顔のシワや白髪のせいで老けて見える方もいれば、肌にツヤがあり、ハツラツとして若々しく見える方もいるでしょう。
つまり、加齢は全員同じスピードで進みますが、老化は個人差があるのが大きな違いです。老化のスピードは生活習慣や環境によって変化しますが、一般的には40歳代で加速するケースが多く、高齢になるにつれ個人差が大きくなる傾向にあります。
2.加齢にともなう体形の変化
体形が気になる方のなかには「歳をとってから体重が落ちにくくなった気がする」と感じている方もいるかもしれません。それには、加齢にともなう基礎代謝量の減少が関係している可能性があります。
人間が24時間に消費するエネルギー量(総エネルギー消費量)の構成要素は、大別して基礎代謝量(約60%)、身体活動量(約30%)、食事誘発性熱産生(約10%)の3つです。
このうち、食事誘発性熱産生は食事の摂取量によって決まるため、個人内の変動はあまりありません。また、身体活動量は、運動を習慣的に行なえば増加させることが可能です。
一方、基礎代謝量の場合は、男性なら40歳代、女性なら50歳代になると急激に減少するといわれています。原因としては、加齢にともなう筋肉量の減少や、さまざまな臓器における代謝率の低下などが考えられるでしょう。
人間は総エネルギー消費量のうち約6割を基礎代謝量が占めるため、加齢にともない基礎代謝量が減少すると、総エネルギー消費量全体の減少に大きく影響します。その結果、消費エネルギーが摂取エネルギーを下回ることが増え、太りやすくなります。
3.老化のスピードを左右する「活性酸素による酸化」
実年齢より老けて見える方と若々しく見える方、この差はなぜ生まれるのでしょうか。それには、老化の原因である「活性酸素」が深く関係しています。
3-1.活性酸素とは
人間は大気中に含まれる21%程の酸素を利用して生命活動を維持しており、酸素がなくては生きられません。
呼吸によって体内に取り込まれた酸素は、肺から血液を通して体の隅々に届けられ、それぞれの場所で体温を上げたり、筋肉を動かしたりするためのエネルギーを作ります。その際に生成される副産物が活性酸素で、酸化力が非常に強いのが特徴です。
過剰な活性酸素は、体を酸化させ、細胞を傷付けるといわれており、老化や生活習慣病などとの関連が注目されています。
ただし、適量の活性酸素は体内に侵入してきたウイルスや細菌などから体を守るといった重要な働きを担うため、やみくもに取り除けば良いわけではありません。
3-2.活性酸素が過剰に増える原因
活性酸素は人間の体にとって、ある程度は必要ですが、増えすぎてしまうと老化を進める原因となるでしょう。
活性酸素が過剰に増え、抗酸化防御機構とのバランスが崩れた状態を「酸化ストレス」と呼びます。酸化ストレスが引き起こされるおもな原因は下記のとおりです。
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・紫外線
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・タバコ
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・過度な運動
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・ストレス
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・睡眠不足 など
老化のスピードに個人差が出るのは、日常の生活習慣の差により酸化ストレスの度合いが異なるためと考えられるでしょう。
3-3.活性酸素による酸化ストレスを予防するために
酸化ストレスの予防には、日頃からバランスの良い食事や適度な運動習慣、十分な睡眠を心がけ、抗酸化防御機構を良い状態に保つことが大切です。
特に活性酸素の増え方に大きく影響するのが、お酒の飲み方や食事の内容です。お酒は節度ある適度な量にし、スナック菓子やお弁当の揚げ物などの酸化した油の摂り過ぎに注意しましょう。
また、ブルーベリーや大豆、ゴマなどに含まれるポリフェノールや、緑黄色野菜や果物などに含まれるカロテノイドといった「抗酸化物質」を積極的に摂るのも有効です。抗酸化物質には、活性酸素の発生や活動を抑制したり、活性酸素自体を取り除いたりする働きがあります。
老化や血管が硬くなることの予防に対しても効果があると考えられているため、抗酸化物質を含む食品を毎日の食事にしっかり取り入れましょう。
活性酵素を上手に取り入れていつまでも若々しく
加齢は誰でも平等に進みますが、老化は個人によりスピードが異なります。老化を遅くするには、活性酸素と上手に付き合うことが大切です。タバコやストレス、睡眠不足などは、活性酸素を増加させることがあります。
毎日の食事や運動、睡眠といった生活習慣を見直して、いつまでも若々しく元気に過ごしましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。