1.加齢による目の変化とおもな症状
まず、年齢を重ねるとどのような変化が目に起こるのか、加齢による目の変化と症状を解説します。
1-1.加齢による目の変化
加齢による目の老化現象は、多くの場合40歳頃から自覚される傾向があります。老眼は、老化として最初に感じる人が多い現象です。
目は水晶体と呼ばれるレンズの厚みを変えて、ピントを調整しています。例えば、水晶体を厚くすることで、新聞紙の小さな文字など近くのものがくっきり見えます。しかし水晶体は加齢によって硬くなるため、年齢を重ねるごとにピント調整が困難になります。その結果、水晶体を十分に厚くできなくなり、手元が見えにくくなる老眼を発症します。
1-2.加齢による目のおもな症状
加齢による目の変化によって、視界がぼやけて感じることがあります。これは、老眼の症状であるピント調整がうまくできないことが原因です。
老眼になると、本やスマートフォンなどを見る際にも、目から離さないと見えにくくなります。また、近くものから遠くのものへ視線を移す際にも、ピント調整がうまくできず視界がぼやけるようになります。
なお、光が眩しく感じる症状が出た場合、加齢によって起こる目の病気「白内障」の可能性があります。
2.加齢にともなう目の病気
加齢にともなう目の病気は、おもに白内障・緑内障・加齢黄斑変性の3つです。
ここでは、それぞれの特徴について解説します。
2-1.白内障
白内障は、加齢によって水晶体が濁ることで起こる病気で、年齢を重ねると誰でも発症する可能性があります。
白内障になるとおもに次のような症状が現れます。
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・視界がかすむ
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・いつもより光が眩しく感じる
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・二重に見える
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・メガネをかけていてもはっきり見えない
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・視力の低下
水晶体が一度濁ると目薬や内服薬では改善しないため、手術で水晶体を人工レンズと交換する治療になります。
濁った水晶体が除去されることで、かすみや視力の低下は改善されるでしょう。
2-2.緑内障
緑内障は、眼圧が極端に高まることで視神経に障害が起こり、視野に影響が出る病気です。遺伝や体質によって起こりやすい病気ですが、加齢が原因となることもあります。
緑内障の症状は視界の一部が欠けて狭くなることです。
緑内障は、「開放隅角緑内障」と「閉塞隅角緑内障」があり、開放隅角緑内障の場合、初期から中期の状態では、自覚症状が乏しく、視野の狭さを感じることはほとんどありません。
「閉塞隅角緑内障」の場合も自覚症状はありませんが、発作(急性緑内障発作)が起きると視界の悪化のほか目の痛みや頭痛が起こります。
なお、障害の起こった視神経は回復しないため、緑内障は完治が難しいです。症状が進行しないように眼圧を下げることが治療の中心となります。
緑内障は、根気よく治療を続けながら上手に付き合っていく必要があります。
2-3.加齢黄斑変性
加齢黄斑変性とは、網膜の中心部分に出血やむくみなどが起こり、視力に影響を与える病気です。網膜は、カメラのフィルムに該当する部分であり、色を見分けたり細かいものを認識したりする働きがあります。
加齢黄斑変性の原因は、老化で老廃物の処理能力が低下し、老廃物が網膜に沈着することが原因の一つとして考えられています。老廃物が網膜に沈着すると、細胞や組織に障害が起こり、視野の異常につながります。
加齢黄斑変性の症状は、次のとおりです。
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・視界の中心が暗くなる
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・視界が欠ける
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・ものが歪んで見える
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・色が認識できない
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・視力の低下
ダメージを受けた網膜は再生が困難であるため、症状が進んだ状態では視力を保てない可能性もあります。
そのため、早期に発見して、進行を食い止めることが大切です。
3.加齢による目の変化を感じた場合の対処法
加齢による目の変化を、単なる老眼だと思う方もいるでしょう。
しかし、老眼以外の目の病気を発症している可能性もあるため、まず眼科の医師に相談し、目の不調の原因を調べることが大切です。
老眼の場合は、利用シーンなどを考慮のうえ、用途や度数が合った老眼鏡を用意しましょう。
また、遠近両用のコンタクトレンズも市販されているため、メガネに抵抗がある方は、コンタクトレンズを使用してもよいでしょう。
ただし、遠近両用のレンズは、慣れるまで時間がかかるケースがあります。はじめのうちは家のなかだけで使用し、慣れてから日常生活で使うようにしましょう。
メガネやコンタクトレンズも重要ですが、目が疲れないようにするには適切な照明を使うことも大切です。
読書やパソコンなど目を使う作業の場合、部屋全体を天井灯で明るくし、電気スタンドで手元も照らしましょう。
暗い環境での作業は、眼精疲労の原因になることもあります。
加齢による目の変化を感じたら眼科専門医へ相談を
多くの場合、40歳頃から加齢による目の変化を感じるようになります。老化現象である老眼は、どのような人にも訪れる変化であり、治すことができません。
老眼になった場合は、老眼鏡を使ったり目を使う環境を整えたりして、なるべく視界が良好になるようにしましょう。
加齢による目の変化が老眼ではない可能性も考慮しておく必要があります。加齢によって、他の目の病気を発症していることもあるためです。
早期発見が重要な目の病気もあるため、目に異常を感じたらなるべく早く眼科へ相談することが大切です。きちんと対処して、クリアな視界を守りましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。