1.そもそも基礎代謝とは
人間は安静状態でまったく動かなくても、呼吸をする、体温を維持する、心臓といった臓器を動かすなどのためにエネルギーを消費しています。このような、人間の生命活動に最低限必要なエネルギーが基礎代謝です。
基礎代謝は体格に大きく依存するとされ個人差がありますが、一日の基礎代謝量は成人女性の場合約1,100kcal、成人男性の場合約1,500kcalと推定されています。
ただし、基礎代謝は性別を問わず加齢にともない低下するため、注意が必要です。
2.加齢によって基礎代謝が低下する理由
一般的に、加齢とともに基礎代謝は低下していきます。おもな理由は筋肉量の減少で、これは活動時におけるエネルギー代謝の低下にもつながるでしょう。
また、活動量の減少といったさまざまな要因が影響し合った結果、総エネルギー消費量も加齢により減少していくといわれています。
3.加齢により低下した基礎代謝を上げるメリット
人間が一日で消費するエネルギーの約60%は基礎代謝が占めています。基礎代謝を上げることができれば、睡眠中など動いていない間のエネルギー消費量も増えるため同じように生活していても太りにくくなるでしょう。
肥満は、高血圧症や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を含め、さまざまな病気の原因になりかねません。そのため、基礎代謝を上げて太りにくい体を維持することは、生活習慣病予防にも役立ちます。
4.加齢により低下した基礎代謝を上げる方法
年齢とともに基礎代謝が下がる要因の一つは筋肉量の減少です。ここでは、筋肉量の維持・増加に効果的な運動のポイントを解説します。
4-1.ウォーキング
ウォーキングは手軽に行なえて、全身の筋力アップが期待できる運動です。ウォーキングの効果をより高めるためには、以下のポイントを意識しましょう。
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ストレッチを行なう
ウォーキングの前に、まずはストレッチをして血流を良くします。筋肉が温まることで動かしやすくなり、ケガの防止につながります。加えて、ウォーキング後のストレッチもおすすめです。運動で緊張状態になっている筋肉がほぐれることで、疲労回復に効果があります。
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歩く速さを意識する
その日の体調や個人の体力に合わせた、無理のないペースで行ないましょう。効率が良く、ウォーキングが初めての方も取り組みやすいペースの目安は時速5km程度です。歩くことに慣れてきたら、徐々に速度を上げていくとよいでしょう。
4-2.ジョギング
ジョギングは6.4㎞/h未満で、ややゆっくり走る運動です。息が切れない程度に走ることで、疲れを溜めにくい状態で有酸素運動を行なえます。ウォーキングよりも筋肉や骨に負荷がかかりやすいため、より効率良く基礎代謝を上げられるでしょう。ジョギングを行なうときのポイントは以下のとおりです。
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ウォーミングアップ
いきなり走り出すとケガをしたり、筋肉痛が起こりやすくなったりするため、ウォーミングアップをして筋肉や靭帯をほぐしておきましょう。例えば、屈伸運動やアキレス腱伸ばし、腕回しなどがおすすめです。動作中は呼吸を止めず、心地良いと感じる範囲でゆっくり行ないましょう。
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心拍数を意識する
走るときは、ペースが速すぎても遅すぎてもよくありません。最適なペースを確認するためには心拍数を計測しましょう。
運動時の心拍数は1分間あたり「138-年齢÷2」が目安で、60歳であれば108です。ジョギングするときには、心拍数108をキープできる程度の速さで走ると運動効果が高まるでしょう。
4-3.筋力トレー二ング
筋力トレーニングは胸、背中、下半身など、大きな筋肉がある部分をまんべんなく使うことで効果の向上が期待できます。ただし、むやみに高い強度で行なう必要はありません。強度を上げる場合は、運動指導者に相談しながら安全に進めていきましょう。
また、なかなか運動する時間が取れない方は、日常生活のなかにいつもより筋肉を使う行動を取り入れるのもおすすめです。例えば、エレベーターやエスカレーターを控えて階段を使う、なるべく車やバスを使わず歩くなど、無理のない範囲で運動量を増やしましょう。
基礎代謝を上げるためには運動習慣を
基礎代謝は加齢とともに下がっていくため、動かなくても消費するエネルギーが減り、以前と同じ食事量でも太りやすくなることがあります。
加齢による基礎代謝低下の、おもな原因は筋肉量の減少です。そのため、筋肉量を増やすことができれば、基礎代謝が上がり、体型や健康の維持にも役立つでしょう。
有酸素運動や筋肉トレーニングなどをする時間がない方は、日常生活でこまめに動くことから始めてみてください。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。