1.加齢で痩せにくくなる原因は?
ここでは、そもそも肥満とはどのような状態なのか、また、なぜ加齢とともに痩せにくくなるのかを解説します。
1-1.肥満の原因
食べ過ぎや運動量の低下などにより摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ると、余った分が脂肪として蓄積され、肥満につながります。
肥満度を判定する際は、国際的な指標として知られる「BMI」が用いられます。「肥満」と判定されるのは、「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」で算出された数値が25以上の場合です。
同じBMIでも、脂肪が多く蓄積している場所によって、どの程度健康に影響するかが変わってきます。そのため、25以上の数値であっても筋肉量が多い場合もあり、必ずしも減量を必要とする状態とは限りません。
1-2.肥満と体脂肪
肥満とは単に体重が重いことだけを指すのではなく、体脂肪が過剰に蓄積している状態をいいます。そのため、肥満であるかを考えるには体脂肪率が重要です。
最近は、家庭用の体重計にも体脂肪率が測定できるものが増えています。しかし、機種によって測定方法が異なったり、体内の水分量によって変動したりするため、正確な測定は難しいでしょう。市販の体重計で測った体脂肪率は、一つの目安として活用するのがおすすめです。
1-3.加齢による影響
肥満の要因として、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ることが挙げられますが、消費エネルギーは年齢を重ねると減少する傾向にあります。
一日の消費エネルギーのうち、大きな割合を占めるのは基礎代謝量(約60%)と身体活動量(約30%)で、残りが食後に発生するエネルギー(食事誘発性熱産生)です。
加齢により筋肉が衰えると、基礎代謝量だけでなく活動時の消費エネルギー量も減少し、全体の消費エネルギー量が少なくなります。これは、「加齢によって自然と痩せにくくなっていく」とも考えられるでしょう。
2.加齢により肥満のリスクが高くなる
ここでは、肥満になるとどのような影響があるのかを解説します。
2-1.肥満による悪影響
近年、日本でも食生活の欧米化や運動不足などの要因により肥満の方が増えています。肥満のタイプは大きく分けて2種類です。
一つは、筋肉の内側にある腹腔内に脂肪が多く付いてしまうタイプで「内臓脂肪型肥満」と呼ばれます。もう一つは、腰周りや太ももなどの下半身に皮下脂肪が多いが内臓脂肪は少ない「皮下脂肪型肥満」です。
なお、内臓脂肪型肥満のほうが、高血圧・糖尿病・脂質異常症などのリスクが高まることがわかっています。
2-2.加齢と肥満
人間は食事をして生み出したエネルギーで、脳や内臓を動かしたり、体温を保ったり、呼吸をしたりしています。日々の活動で消費するエネルギーと、食事による摂取エネルギーのバランスが取れていれば肥満にはなりません。
しかし、加齢にともない筋肉量が減少すると消費エネルギー量も減少するため、余った分のエネルギーを体脂肪として溜め込みやすくなるでしょう。
生活習慣病の要因にもなる肥満の予防・解消には、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスを改善することが大切です。
3.加齢による痩せにくい体を太りにくくする方法
ここでは、年齢を重ねても太りにくい体を維持する方法を紹介します。
3-1.運動を習慣にする
人間が一日で消費するエネルギーの約60%は基礎代謝であり、脳や内臓、筋肉で消費しています。内臓を鍛えることはできませんが、骨格筋であれば日々の活動によってある程度増やすことが可能です。
ジョギングやウォーキング、筋力トレーニングなどで少しずつ筋肉量が増えれば、毎日の消費エネルギーも増えていくでしょう。
3-2.食生活の見直し
加齢とともに筋肉量が減ると、基礎代謝量が減ることで消費エネルギーの低下につながります。筋肉量をなるべく維持するためには、食事をバランスよく取ることがとても大切です。
特に、たんぱく質は、筋肉だけでなく血液や骨など体を作る材料になります。そのため、たんぱく質を多く含む肉・魚・卵・大豆製品・乳製品などを、毎日の食事にしっかり取り入れましょう。
また、高齢者の場合はさまざまな要因により、食事の量が減ったり、同じメニューの繰り返しになったりして「低栄養」になる可能性があります。体重や体調に大きな変化があれば、自己判断せずにかかりつけ医や保健センターなどに相談しましょう。
食事と運動で太りにくい体を維持しよう
年齢を重ねると痩せにくくなるのは、消費エネルギー量の減少が要因の一つです。いくつになっても太りにくい体を維持するためには、運動習慣を身に付けて筋肉量の維持・増加に努めたり、食事内容を見直したりすることが大切です。
肥満は、生活習慣病のリスクを上げる要因にもなります。健康を保つためにも、この機会に生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。