1.女性ホルモンと体の不調の関係
女性ホルモンは、体の各部位で健康を維持するために欠かせない役割を担っています。
脳などの中枢神経や心臓・血管・乳腺・皮膚・毛・子宮や卵巣などの生殖器・骨といった各組織の機能調節をしているのです。
このホルモンバランスが崩れると、女性ホルモンが作用していた各組織の機能低下を引き起こし、さまざまな不調が生じます。
例えば、月経前に心身の不調が現れるのは、月経周期にともない女性ホルモンのバランスが大きく変動するためです。
また、閉経前の5年間と閉経後の5年間を合わせた約10年間は更年期がもたらす症状によって不調を感じる人が多くいます。これは、卵巣機能の低下によるエストロゲンという卵巣ホルモンが消退してしまうのが原因です。
ホルモンバランスの乱れは、自律神経へも影響します。自律神経はすべての臓器とつながり、体全体を調整する役割があるため、自律神経が乱れてしまうとことで全身の不調を引き起こすのです。
2.女性ホルモンのバランスが乱れることで起こる症状
女性のホルモンバランスは非常に繊細であり、さまざまなきっかけで乱れる傾向があります。さらに、その影響によって心身にあらゆる症状をもたらすものです。
2-1.更年期によるもの
更年期を迎えると、女性ホルモン(エストロゲン)のバランスが不安定になり、少しずつ減少していきます。それによって更年期障害が起こり、あらゆる不調が生じるようになります。
また、更年期による不調はホルモンバランスだけでなく、育ってきた環境や元来の性格などの心理的な要素(内的要因)、家庭や仕事などの人間関係など社会的な要素(外的要因)などが複合的に関与していると考えられています。
更年期障害では、以下のような症状が現れます。
2-2.PMS(月経前症候群)
月経前3~10日の間に起こる心身の不調を、PMS(月経前症候群)と呼びます。PMSの原因は明確ではありませんが、女性ホルモンがバランスを崩したり、ストレスが影響したりして起こるのではないかと見られています。
PMSでは、以下のような症状が現れます。
2-3.ストレス
近年、「ストレスは万病の素である」といった研究テーマが各方面で話題を集めています。ホルモンバランスは、脳へ加わったストレスが原因で崩れるとされており、併せて自律神経へも影響するものです。
自律神経の乱れによって起こる自律神経失調症では、以下のような症状が起こります。
3.女性ホルモンのバランスを整えるためにできること
女性ホルモンのバランスの乱れや減少は、加齢による生理現象なので、それが起こらないようにすることは難しいものです。しかし、ホルモンの減少を緩やかにしていくことはできます。
そのためには、以下のような日常生活の工夫が大切です。
まず一つ目は、質の良い睡眠をとることです。就寝前は、ぬるめのお風呂に入るなどゆったりと過ごし、脳を覚醒させないようテレビやパソコンは見ないようにしましょう。
次に、栄養バランスの良い食事を摂ることも重要です。女性ホルモンの合成に関わるビタミン・ミネラル類、女性ホルモンの働きを助ける、ねぎ類や大豆製品・根菜類を積極的に食事に摂り入れることをおすすめします。
さらに、運動の習慣もつけるとなおよいでしょう。気軽な運動としては、歩行時には大股や速足で歩くこと、散歩の際には階段や坂道など脚の筋力を使うような道を選んで行なうなどがおすすめです。
日頃からストレスをためない工夫や、女性ホルモンの働きを高める食生活、適度な運動習慣を心がけて上手にセルフケアをしましょう。
ホルモンバランスを整えてイキイキとした毎日を
女性ホルモンが乱れる原因は、閉経にともなう更年期障害、PMS、ストレスなどによるもので、それぞれ頭痛や動悸、情緒不安定、睡眠障害など、心身にあらゆる不調をもたらします。
これらの症状をなるべく緩和させるには、ストレスをためず、バランスの良い食事と質の良い睡眠の維持が大切です。
今回ご紹介したケアの方法も参考にして、ホルモンバランスの乱れによる不調に負けない体づくりをしましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。