加齢による体力低下の原因とは?今日からできる予防・改善方法

年齢を重ねるごとに、疲れやすくなったと感じる方もいるでしょう。体力の低下は、加齢によるものもあります。しかし、なぜ加齢によって体力が低下するのでしょうか。また、同じ年齢なのに体力に差が出るのはなぜなのでしょうか。

そこで本記事では、体力が低下する時期や原因などについて解説します。今日からできる体力低下の予防や改善方法についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

1.体力は何歳から低下するのか

体力低下は、加齢によって引き起こされます。
しかし、いつから体力が低下するか、そもそも体力とは何を指すのか、はっきりしない方もいるでしょう。
ここでは、体力の意味と体力の低下が起こる年齢について解説します。

1-1.体力の定義とは

体力の定義は、一般的に「行動するための身体的な体力」と「病気やストレスから体を守る防衛力」に分けられます。

身体的な体力とは、次のような体力測定で数値化できる能力を指します。

  • ・持久走

  • ・反復横跳び

  • ・上体起こし

  • ・ジグザグ走

外部の刺激から体を守る体力は、次のとおりです。

  • ・感染症など病気に対する抵抗力

  • ・精神的なメンタルの強さ

  • ・意志や判断力を維持する力

このように体力には、さまざまな意味が含まれています。

1-2.体力の低下が始まる時期

体力は、男女ともに6歳頃から運動するための体力が向上し始め、男性で17歳頃、女性で14歳頃に最大値に達します。体力の低下が顕著に見られるのは2段階あり、20歳以降と50歳以降のタイミングです。

20歳以降は体力が少しずつ低下するものの、筋肉量は40代頃までは維持されるといわれています。そして、50~60代を迎える頃には体力・筋肉量ともに急激に低下するのが特徴です。

このような50歳以降で感じる体力の低下は、加齢が原因のため、避けられません。しかし日頃の運動習慣によっては、体力の衰え方に個人差が出ます。

2.加齢によって体力が低下する原因

加齢によって体力が低下するおもな原因は、筋力や活動量の低下などです。

年を取るごとに、人の体は徐々に筋力が低下し柔軟性がなくなり、さらに老化が原因で神経の伝達速度が遅くなることから、素早く動けなくなってしまう傾向が見られます。

このように筋力の低下や神経の伝達速度などが影響し、運動量が落ちてしまうのです。

また、加齢によって次のような影響も見られます。

  • ・血管や心臓など循環機能に変化を与える

  • ・骨密度や骨量が低下する

  • ・関節軟骨が減少し、関節に変形をもたらす

これらの変化は、加齢によって体をうまく動かせなくなっていることが原因です。

また、基礎代謝の減少には加齢による筋力低下が主に関係しています。基礎代謝とは、体の生命活動を維持するために必要なエネルギーです。そのため、特に運動をしていなくても人の体はエネルギーを消費しています。

基礎代謝は平均して男性が18歳、女性が15歳でピークを迎え、以降、徐々に減少傾向に転じます。加齢によって基礎代謝が減ると、その分消費できるエネルギー量も減ります。以前と同じ食事や運動量でも体重が増えてしまうのは、基礎代謝によるエネルギー量が減少しているためです。

基礎代謝が落ちることで体重は増加し、結果的に体脂肪が増えてしまいます。体脂肪が増えることで筋肉へかかる負担も大きくなるため、疲労を感じやすくなるでしょう。

3.日常的な運動が体力低下を予防・改善する

老化現象の現れ方には、性別や生活環境が大きく影響しており、個人差があります。
年齢のわりに動きがスムーズで、体力もある人は、日頃から運動習慣が身に付いていることが原因かもしれません。

そのため、運動習慣を付ければ、今からでも体力低下の予防や改善が期待できます。日常的に続けられるような、軽い運動から始めてみましょう。

ここでは、おすすめの運動を紹介します。

3-1.ゆっくりストレッチをする

ストレッチは室内で、身一つで行なえるためおすすめです。

筋肉の柔軟性は加齢によって損なわれるため、体が縮こまって動きが小さくなり可動域が悪く、活動量も低下します。また、柔軟性がない体は、けがをしやすくなるでしょう。

ストレッチをするタイミングは、お風呂上りや就寝前がおすすめです。太ももやお尻、ふくらはぎなど下半身のストレッチを行ないましょう。

ただし、反動をつけて無理に伸ばすと、筋肉に負担がかかり過ぎるため注意が必要です。ゆっくり伸ばして、無理をせず安全に行なってください。

3-2.ウォーキングをする

通勤時間や空いている時間を利用して、ウォーキングをするのもおすすめです。

普段の歩行よりも大股で、かかとからつま先へ重心を移動させると運動の効果が高まります。手は後ろに大きく振り、前に軽く振るのがポイントです。両手を歩行に合わせて振ることで肩甲骨の運動にもなります。

3-3.極力階段を使う

さらに時間がない人は、オフィス内や通勤路、買い物先などで階段を使うことをおすすめします。

階段を上るのが負担に感じる方は、下りだけ階段を使うのも有効です。下りのほうが楽に感じますが、実は筋肉への負担が大きいため、高い運動効果が期待できます。

加齢による体力低下は適度な運動で予防・改善しよう

加齢にともない、体ではさまざまな変化が起こります。体力低下や基礎代謝の低下はその代表的なものであり、完全に食い止めることは難しいものです。

しかし、運動を日常的にすることで体力の低下を緩やかにし、元気な体を維持できるでしょう。急に激しい運動をするよりも、毎日続けられる軽い運動をすることがポイントです。

動ける自分をキープするためにも、ぜひ軽い運動を取り入れてみてください。

監修者情報

氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。