1.なぜ日焼けがいけないのか?日焼けがもたらす悪影響
まずは、日焼けによる悪影響から見ていきましょう。日焼けには、体にすぐ変化が見られる急性の影響と、しばらく時間が経ってから変化が出てくる慢性の影響とがあります。
1-1.日焼け直後に生じうる悪影響
日焼けをしてすぐに出るおもな悪影響は以下のとおりです。
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・サンバーン
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・サンタン
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・紫外線角膜炎
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・免疫機能の低下
日焼けをして皮膚が赤くなったという経験をした方も多いでしょう。それは、サンバーンでよく見られる症状です。サンバーンとは、紫外線によって起こる皮膚のやけどのことを指します。UV-Bによって皮膚に炎症が起こることが原因です。
日焼けから数日後、紫外線によって刺激された色素細胞の影響でメラニンが増加した結果、色が黒くなるサンタンが起こります。この状態は、皮膚が障害されていることを意味するため、色が黒くなるほどの日焼けはおすすめできません。
日焼けが影響を与えるのは肌だけではありません。私たちの目にも影響をおよぼします。よく見られるのが紫外線角膜炎です。充血や涙、異物感、眼痛などを生じます。その他、稀ですが免疫機能の低下が見られるケースがあるのも特徴です。
1-2.日焼け後しばらくしてから生じうる悪影響
日焼けして、しばらく時間が経って現れるおもな症状は、以下のとおりです。
長年にわたって紫外線を浴び続けていると、シミやシワができるのはよく知られています。
翼状片とは、白目が黒目の部分に侵入してくる疾患のことです。30歳以上で発症することが多く、屋外での活動が長い農業や漁業などをしている方によく見られます。
白内障とは、水晶体が濁ることで網膜まで光が届かなくなる疾患です。水晶体が硬くなることで老眼が進んだり、水晶体が濁って視力が低下したりします。さらに進行すると失明することもあるため、注意しなければなりません。
2.日焼けで得られる驚きの効果
日焼けはサンバーンやサンタン、シワやシミなどさまざまな悪影響をもたらします。しかし、日焼けは体に悪いことばかりではありません。健康を守るうえで、次のような大切な役割も担っています。
2-1.骨の成長や腸内環境などに重要なビタミンDを生み出す
ビタミンDは、骨の健康を守るために必要な栄養素です。私たちは、紫外線を浴びることによって皮膚でビタミンDを作っています。骨といえばカルシウムを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、ビタミンDも必要不可欠です。
ビタミンDは、腸から吸収されるカルシウムの量を2~5倍に増やしてくれます。カルシウムだけ摂取していても、ビタミンDが不足していたら十分に吸収されません。食品にもビタミンDは含まれていますが、必要な量を食事だけで摂ることは難しいものです。
特に、母乳だけで育っている赤ちゃんはビタミンD不足になりやすいので注意しましょう。日頃から適度に日差しを浴びるように心がけましょう。
2-2.セロトニンが分泌されストレス解消や集中力が向上する
日光浴をすると、セロトニンの分泌が促進されます。セロトニンは、神経伝達物質の一つです。ドパミンやノルアドレナリンなど体を興奮させる物質の働きを抑え、精神的に落ち着かせてくれる働きがあります。
セロトニンが不足すると不安な気持ちが強くなったり、うつ状態になってしまったりするといわれていることからも、セロトニンの精神安定効果が伺えるでしょう。
また、セロトニンの分泌を高めると、集中力の向上にも効果があります。一日に20分程度で良いので、散歩に出かけたりウォーキングをしたりして日光を浴びるようにしましょう。
過度な日焼けは避けて適度な日光浴を習慣にしよう
日焼けはサンバーンやサンタン、シミやシワなどさまざまな悪影響をもたらします。
日焼けは、白内障や翼状片の原因となることも知られています。一方で、日焼けは、骨の健康に欠かせないビタミンDを作ったり、ストレス解消や集中力の向上に効果があるセロトニンの分泌を促したりする働きもあることが特徴です。
過度な日焼けは健康を害する原因となりますが、適度な日光浴は健康を守るために必要です。
長時間にわたり外に出るときは帽子や日焼け止めで紫外線対策を行ない、適度に日光を浴びるように心がけましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。