腸活とは?期待される効果と方法を解説

腸活という言葉はよく聞くけれど、「そもそも腸活とは?」「具体的に何をすれば?」など、疑問を持っている方もいらっしゃるかもしれません。

今回は、腸活に関する基本的な知識をはじめ、期待される効果や方法について解説します。

1.腸活とは?

腸活とは、腸内環境を整えて良好に保つことをいいます。

そもそも腸は、人間にとって不可欠な栄養素を吸収し有害な物質を排出する器官です。その腸の健康を保つ重要なポイントの一つが腸内環境にあります。

人間の腸内細菌は200種類以上、100兆個以上存在するとされています。そのうちの約20%が善玉菌、約10%は悪玉菌、残りはどちらにも分類されない日和見菌です。健康的な腸では善玉菌が活発になる一方で、悪玉菌はあまり活動していません。

善玉菌は、乳酸や酢酸を生み出し、腸内を酸性にする役割を持ちます。これにより悪玉菌の増殖が抑制され腸の動きを活発にし、食中毒菌や病原菌による感染を予防します。

このような良好な腸内環境が何らかの原因で乱れてしまうと、下痢や便秘のほか、全身に悪影響をおよぼすとされています。

つまり、腸内環境を良好に保つためには、腸活によって善玉菌、悪玉菌、日和見菌を丁度良いバランスに保つのが大切です。

2.腸活で期待される効果

腸活によって腸内環境を整えることで、どのような効果が期待できるのでしょうか。

ここからは、腸活で期待できる「太りにくくなる」「快便が期待できる」「免疫機能が高まる」という3つの代表的な効果を紹介します。

2-1.太りにくくなる

体型は遺伝に影響されると思われがちですが、実際は遺伝よりも腸内細菌の種類に影響を受けているのではないかという報告もあります。

具体的には、太り気味の人の腸内では、エネルギーや脂肪を蓄えたがる肥満型細菌が優勢です。それに比べて、痩せ気味の人の腸内では、脂肪や糖を好まない痩せ型細菌が優勢で、このことが体型の違いに大きく影響しています。

肥満型細菌が優勢になるか、痩せ型細菌が優勢になるかは、どのように決まるのでしょうか?答えは、腸内の悪玉菌と善玉菌のバランスです。

悪玉菌が多いと肥満型細菌が活発に働き、悪玉菌がさらに増えていきます。その結果、痩せ型細菌は少なくなり、ダイエットしても痩せられず、太りやすくなってしまいます。反対に善玉菌が多いと、痩せ型細菌の影響で善玉菌がさらに増え、太りにくい体を維持できるでしょう。

体型が気になる人は腸活にチャレンジし、善玉菌が優勢の健康な腸を育てておくのがおすすめです。

2-2.快便が期待できる

腸内環境が悪化したときの自覚症状は、悪玉菌が作り出した有害物質が溜まることによる慢性的な便秘や下痢、おなかの張りです。このような状態が続くと、腸内の免疫細胞の働きが弱まり、腸をはじめ全身のさまざまな部分で病気の罹患リスクが高まります。

これを回避するには、腸内環境を整えて善玉菌を優勢にすることです。それによって悪玉菌が減り、便通の改善にもつながるでしょう。

腸の健康状態は年齢よりもむしろ個人差が大きいとされています。慢性的な便秘がない人のほうが高い生存率を示すという研究結果も出ており、腸活によって快便を保つことは、長期的な健康維持にも役立ちます。

2-3.免疫機能が高まる

人の体は、口から胃、腸から肛門へと続くトンネルのような構造になっています。そのため口から食事や呼吸をするたびに、腸は食べ物だけでなく、細菌やウイルスにも触れることになるのです。

その際に働くのが、腸に存在する免疫細胞です。その数は免疫細胞全体の約6割にもおよび、体全体の免疫力を大きく左右します。

健康的な腸内では善玉菌が優勢で、その他の菌が劣勢の状態です。善玉菌は乳酸や酢酸などを生成し、腸内を酸性にすることによって悪玉菌の増殖を抑制、腸の動きを活発にし、病原菌や食中毒菌などの感染予防に寄与します。また、善玉菌の体を構成する物質には、体の免疫機能を高める効果も報告されています。

つまり、腸活によって善玉菌が優勢な腸内環境に整えることで、免疫細胞の働きを強化し、免疫力の向上が期待できます。

3.おすすめの「腸活」を紹介

腸活には、いくつかの方法があります。

ここからは、健康のためにさっそく始めてみたいという方に、おすすめの「腸活」を3つ紹介します。

3-1.起床時に水を飲み腸の動きを促す

朝起きたらすぐに、コップ1杯(200~300ml)の水、またはお茶を飲みましょう。飲み物の重みで胃が下がることで腸が刺激され、腸の動きが活発になります。ゆっくりと飲むのではなく、勢いよく一気に飲んだほうが腸活には効果的です。

また、水分不足は便秘の原因にもなりえます。水分補給はその解消にもつながり、快便にもつながるでしょう。水分を普段あまりとらない方は、昼や夜にも、それぞれの食事の前にコップ1杯の水を飲むのがおすすめです。

3-2.善玉菌を増やす食事を心がける

腸活に良い食事には、大きく分けて2種類あります。

1つめは、生きた善玉菌であるプロバイオティクスを食品から摂取する方法です。プロバイオティクスは、納豆・漬物・乳酸菌飲料・ヨーグルトなど、ビフィズス菌や乳酸菌を含む食品のことを指します。ただ、これらの菌は腸内に一定期間は存在しますが、定住することはないとされています。そのため毎日継続的に摂り、腸に補充し続けることが重要です。

2つめは、すでに腸内に存在している善玉菌を増やす働きを持つプレバイオティクスを摂取する方法で、善玉菌が好むエサを優先的に与えて、数を増やそうという考え方です。プレバイオティクスは、オリゴ糖や食物繊維といった成分のことを指します。オリゴ糖は、大豆・ごぼう・ねぎ・たまねぎ・にんにく・バナナなどの食品に多く含まれているため、これらの食材を積極的に取り入れるとよいでしょう。

3-3.腸に刺激を与える運動をする

水分補給や食事は体の内側から腸内環境を整える方法ですが、体の外側から刺激を与えて腸を活性化させる方法もあります。下半身を動かしたり、腹部をひねったりする運動が適していて、自律神経のバランスを整え、腸の働きを促す効果が期待できます。

一日のうちいつ運動しても腸の機能を高める効果がありますが、便通改善効果を期待する場合は、お通じの時間帯である朝に行なうとより効果的です。

腸活で健康で快適な毎日を送りましょう

腸は、人間にとって不可欠な栄養素を吸収し有害な物質を排出する器官です。腸の健康は全身の健康に直結します。

そんな腸の健康を保つ重要なポイントの一つが腸内環境にあります。腸内環境を整えて良好に保つ「腸活」は、手軽にできる健康法として注目されています。

腸活には、「太りにくくなる」「快便が期待できる」「免疫機能が高まる」といったうれしい効果が期待できます。毎日を健康に過ごすためにも、ぜひ始めてみてはいかがでしょうか。

監修者情報

氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。