1.DHA(ドコサヘキサエン酸)の働き
まず、DHAの特徴や働きについて説明します。
1-1.DHAとは?
DHAは氷点下でも固まりにくいサラサラとした魚油に含まれる成分で、不飽和脂肪酸の一種です。
不飽和脂肪酸のなかでも、DHAは体内で生成されないため食事で摂取する必要がある必須脂肪酸であり、EPA(エイコサペンタエン酸)やα-リノレン酸と同じオメガ3(n-3系)脂肪酸として知られています。
魚の体内では眼球の裏の脂肪に多く含まれており、人間の体内では脳の灰白質や網膜、神経中に存在していることがわかっています。
1-2.DHAの働き
DHAは健康維持や思考力、記憶力の維持など大切な役割を持っています。
1989年に、日本の子どもの知能指数が高い理由として魚を食べることと予測されたのがきっかけで、DHAに注目が集まりました。
DHAはEPAとともに魚油とも呼ばれることがあり、魚油の働きとしては中性脂肪の低下や、血小板の凝集予防により血をサラサラにすること、また、血圧を下げる作用や、炎症やアレルギーを抑える作用などさまざまな役割が知られています。
2.DHAを多く含む食品
DHAはおもに青魚に多く含まれる栄養素です。
具体的には、まぐろ100gあたりに約3,200mg、さば100gあたりに約2,300mgと多く含まれており、ぶりやさんま、うなぎ、いわしなどでは100gあたり約1,300~1,700mgが含まれています。
オメガ3系脂肪酸の一日あたりの摂取目安量については、男性で2,000~2,400mg、女性は1,600〜2,000mgとされています。
※目安量:ある性・年齢階級に属する人々が、良好な栄養状態を維持するのに十分な量。
体に良い成分ではありますが、オメガ3系脂肪酸を一日に3,000mg以上を摂取すると出血しやすくなることやお腹がゆるくなること、LDLコレステロール値が上がるといった作用もあるため、摂り過ぎには注意が必要です。
また、魚介類ほど多くはありませんが肉類や油などにもDHAが含まれており、豚肉や鶏肉、えごま油などからも摂取できます。
ただし、えごま油やあまに油には、DHAと同じオメガ3系脂肪酸であり体内で一部がDHAやEPAに変換されるα-リノレン酸が含まれています。魚を食べることができない場合はα-リノレン酸を摂ることも手段の一つといえるでしょう。
3.青魚は調理によってDHA・EPAが減少する可能性も
DHAは火を通すなどの調理方法によって摂取できる量が減ってしまいます。
お刺身の状態で食べる場合を100%とすると、焼いたり煮たりした場合は約80%に、油で揚げた場合は約50%にまでDHAの摂取量が低下します。
これは、調理することにより魚の脂が落ちてしまい、脂に含まれるDHAやEPAも同時に損なわれてしまうことが理由です。そのため、お刺身以外で食べる場合は、煮汁なども飲むようにすることや、蒸し料理にして魚の脂を逃しにくくするなどの工夫ができるとよいでしょう。
より効率的にDHAを摂取するには旬の時期に獲れた青魚を食べることも良いと考えられています。
旬の時期は脂がのっているため、より多くのDHAやEPAが摂取できるでしょう。
また、DHAやEPAには酸化して壊れやすい特徴があります。その一方で、ゴマの成分であるセサミンがDHAやEPAを酸化から保護するという結果もあるので、食事のときは食材の組み合わせについても考えるとより効率的に摂取できる可能性があります。
DHAを効率的に摂取して健康維持に役立てましょう
DHAの働きや多く含まれる食品、摂取するときの注意点などについて説明しました。
DHAはEPAやα-リノレン酸などと同様に、健康維持に重要な役割を担っています。多くは青魚から摂取することができますが、調理方法によっては脂が落ちてしまうため、摂取量が少なくなることに注意が必要です。
また、旬の時期に獲れた青魚を食べることや、できれば蒸し料理、お刺身で食べるなど、摂取方法の工夫ができるとDHAをより摂取しやすいでしょう。
魚以外でも、豚肉や鶏肉にもDHAは含まれており、あまに油やえごま油に含まれるα-リノレン酸の一部が体内でDHAに変わります。ゴマに含まれるセサミンにはDHAやEPAの酸化を防止する効果もありますので、これらの食品をうまく組み合わせ、健康を維持しましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。