1.喘息の発症原因
喘息は気道の慢性的な炎症によって、わずかな刺激にさらされるだけでも気道が敏感に反応します。その反応が咳や痰、喘息における発作などの症状として現れるのです。
喘息が起こる機序は、感作とアレルギー反応の2つの段階があります。
まず、ダニやほこり、花粉、食物など、アレルギーの原因となる物質であるアレルゲンが体内に侵入します。体内に侵入したアレルゲンは、体内を巡る免疫細胞に異物として認識され、体がアレルギー反応を起こす準備段階に入ります。この状態が感作です。この時点では具体的な症状は現れません。
そして、アレルゲンが再び体内に侵入したときに、炎症を引き起こす物質が放出され、気道に炎症が起こります。
小児喘息は9割以上にアレルゲンが関係し、これはアトピー型喘息として分類されるものです。成人喘息ではアトピー型喘息が6割、アレルゲンが発見できない非アトピー型喘息が残りの4割を占めます。成人喘息は小児喘息が持ち越されたり、一度治癒したあとに再発症したりするケースもありますが、成人になってから発症するケースも少なくありません。
喘息の発症要因としては、遺伝子素因、アトピー素因、気道過敏性、性差、出生時体重や肥満などの個体因子、喫煙、呼吸器感染症、大気汚染、食物、鼻炎などの環境因子などがあります。これらが複雑に絡み合って、喘息として発症するようです。
2.喘息症状の特徴
喘息患者では、夜間や早朝に息苦しさ、咳、息切れ(呼吸困難)、胸の苦しさなどの症状が現れます。また、呼吸のたびに「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音がする喘鳴が特徴的です。
症状は一過性のことが多いですが、繰り返し起こります。
刺激により気道の過敏反応が起こるため、運動したり冷気や煙にあたったり、ハウスダストを吸い込んだりすると息苦しさや咳が出ます。また、台風や季節の変わり目などにも症状が現れやすくなります。
3.長引く咳で疑われる喘息以外の原因
長引く咳で疑われる病気は数多く存在します。2~3週間以上咳が長引く場合は、喘息以外の病気である可能性もあります。特に、8週間以上咳が続く場合は「慢性の咳」に分類され、感染症以外の病気が原因であると疑われるでしょう。
3-1.咳喘息
喘息同様、アレルギーがある人に多く見られます。痰がほとんど出ない乾いた咳が続きますが、喘鳴や呼吸困難の症状は現れません。放置したままにすることで、喘息へと移行するリスクが高まります。
3-2.慢性閉塞性肺疾患(COPD)
現在あるいは過去に喫煙歴がある人で、痰をともなう咳が長期間続くときはCOPDである可能性があります。たばこの煙などが原因で気道や肺に炎症を呈し、呼吸機能が低下するため、咳や痰以外にも階段を昇ることで息切れが生じるなどの症状が現れます。
3-3.後鼻漏(こうびろう)
アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎などが原因となって、鼻汁が喉の後ろに流れ込む状態のことをいいます。この後鼻漏が長引く咳の原因になりえるのです。
3-4.胃食道逆流症
胃酸が食道へ逆流することにより、胸やけや酸っぱい液体が上がってくるなどの不快症状を感じたり、食道の粘膜がただれたり(食道炎)する病気です。慢性咳嗽の原因にもなります。
3-5.アトピー咳嗽
アレルギー体質の人に現れることがあります。喘鳴はなく、継続した乾いた咳が特徴です。喘息に移行することはないでしょう。
3-6.一部の感染症
百日咳やマイコプラズマ肺炎などの感染症が原因となることがあり、咳が数週間続きます。百日咳はワクチン接種が普及しており、発生数は大きく減少しています。また、マイコプラズマ肺炎は子どもや若年層の肺炎の原因としては比較的多く、年間をとおしてみられますが、冬にわずかに増える傾向があります。
3-7.薬の副作用
高血圧治療薬として使用されるアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬が原因となり、長引く咳が起こることもあるようです。
喘息を疑ったら、まずは病院を受診しよう
喘息をはじめ、長引く咳にはさまざまな病気が考えられます。
喘息の場合、気道に炎症が起こっていることから、気道への刺激となりうる運動、煙、冷気などには注意を払う必要があるでしょう。台風の接近や季節の変わり目にも症状が出やすいため、天候の変化にも注意が必要です。
数週間にわたり咳が続く場合は、喘息以外の病気の可能性もあります。代表的なものとしては、鼻炎にともなう後鼻漏や胃食道逆流症など、呼吸器と一見関連のなさそうな疾患から起こるケースもあるので、咳が長引く場合は医療機関への受診がおすすめです。
監修者情報
氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医