睡眠の質を上げる方法とは?質が重視される理由についても解説

たくさん寝たはずなのになんだか疲れが取れない……。「もしかして睡眠の質が悪いのかも」と、気になったことがある方もいるかもしれません。

忙しい毎日のなかで、なにかと犠牲になってしまうのが睡眠時間ですが、最近は睡眠の「量」ではなく「質」が重視されるようになってきています。

今回は、睡眠の質を上げる方法や、睡眠の質が重視される理由を解説します。

1.睡眠の質が重視される理由

睡眠には、心と体の疲労を回復させるほか、記憶の定着やホルモンバランス、自律神経の調整、免疫力の向上、脳の老廃物の除去など、さまざまな重要な働きがあることがわかっています。

私たちの体にとって重要な「睡眠の質」が悪くなると、生活習慣病のリスクを高めたり、症状を悪化させたりするなど、健康上の問題や生活に支障が生じるおそれがあります。

しかし、睡眠の質の良し悪しを、自分で正確に判断するのは大変です。そんなときには、「ぐっすり眠れた」「スッキリした」「疲れがしっかり取れた」といった、主観的な感覚で判断して問題ありません。

2.睡眠不足がもたらすリスク

睡眠の質を追求する前に、そもそも睡眠時間が足りていない方もいるのではないでしょうか?

日本人の睡眠時間は、世界一短いといわれています。働く世代の平均睡眠時間を比較すると、ヨーロッパのほとんどの国で男女とも8時間を超えているのに対し、日本は男性が7時間52分、女性が7時間33分で、睡眠時間の短い人が多いというデータがあります。

睡眠不足は、生活習慣病の引き金になってしまうこともあるため、要注意です。

睡眠不足が続くと緊張状態を保つ交感神経が優位になるため、高血圧の原因になるとされています。また、睡眠不足は、血糖値の上昇を抑えるインスリンの働きを悪くするため、糖尿病の発症リスクを高めます。さらに、インスリンのほかにも食欲を調整するホルモンにも影響し、食欲を増大させるため、肥満にもつながると考えられています。

適切な睡眠時間は人それぞれ異なりますが、平日と休日を比較し、休日に1時間半以上長く寝ている人は、慢性的な睡眠不足の疑いがあるかもしれません。

3.睡眠の質を上げる方法

心身の健康に大切な「睡眠の質」ですが、具体的にはどのように高めていけば良いのでしょうか?

ここからは、睡眠の質を上げる方法を解説します。

3-1.規則正しい生活

睡眠の質を上げるためには、「規則正しい生活」が何よりも大切です。

人間の体には、生命活動を営むための「体内時計」が備わっています。体内時計は、朝の光を浴びるとリセットされ、1日24時間のリズムに体を合わせていきます。この体内時計のリズムに合わせて規則正しい生活を送っていれば、夜になると自然と睡眠の準備が整い、質の高い眠りを得られるのです。

まずは、規則正しい生活を送り、一定の睡眠時間を確保しましょう。

体内時計を正しく刻むうえで、重要なのが「光」です。日中は太陽の光を浴び、夜はなるべく光を避けましょう。スマートフォンやテレビは良質な睡眠の妨げになるので要注意です。

3-2.運動習慣を身に付ける

運動の習慣によって、寝つきが良くなり、深い睡眠が得られるようになります。

激しい運動は逆に睡眠を妨げてしまうため、早足の散歩や軽いランニングなど、負担が少なく長続きするような有酸素運動がおすすめです。

睡眠の質を上げるのに特に効果的なのは、夕方から就寝約3時間前のタイミングで行なう運動だといわれています。眠る直前の運動は体を興奮させてしまうため、やめておきましょう。

3-3.入浴して体を温める

ホルモンの生理的な変動で体温は日中に上がり、夜に下がる性質があります。入浴で体温を一時的に上げ、風呂上がりに自然に下がっていくことで入眠がスムーズになり、睡眠の質が高まります。

入浴のタイミングは、就寝の2~3時間前が効果的です。38~39度のお湯なら30分程度、42度の熱めのお湯なら5分程度の入浴で体温を0.5度くらい上昇させることで、寝つきが良くなります。

半身浴でも同様の効果があるため、体調や好みに合った入浴を選択しましょう。

3-4.寝るための準備をする

寝室の環境は睡眠の質と関係しているため、寝るための準備も大切です。

温度・湿度・照明・音・寝具や寝るときの服装に気を配り、静かで暗く、季節に合わせて快適と感じる温度・湿度を保ちましょう。

また、コーヒーや紅茶など、カフェインが入っている飲み物を就寝前3~4時間以内に飲むと、睡眠の質が下がったり、途中でトイレに起きたりすることがあります。カフェインの摂取は夕方までにし、就寝前の喫煙や節度を超えた量の飲酒も避けましょう。

寝る前にスマートフォンを触るのが日課という人も多いかもしれません。しかし、寝る前に強い光を目に入れたり、脳が興奮する情報に接したりすると、睡眠の質が低下します。寝る前にはスマートフォンやパソコン、ゲーム画面やテレビなどを見ないようにしましょう。

睡眠は量より質

一日約8時間眠るとすると、人生の約3分の1は睡眠時間です。睡眠は、疲れた心と体を休ませるために欠かせません。

「ぐっすり眠れた」「スッキリした」「疲れがしっかり取れた」といった感覚がない人は要注意です。睡眠の質が低下すると、健康上の問題や生活に支障が生じることもあります。

この機会に、規則正しい生活や運動習慣、入浴や寝るための準備といった身近な生活習慣からコントロールし、睡眠の「質」を見直してみてはいかがでしょうか?

監修者情報

氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。