男性ホルモンの一種である
テストステロンの減少で起こる症状や増やすための方法

「年齢を重ねるにつれて、若いころは見られなかった不調が現れるようになってきた」という方もいるのではないでしょうか。その不調は、男性ホルモンの減少によるものかもしれません。

男性では、一定の年代を境に男性ホルモン(テストステロン)の分泌が低下しはじめ、身体的にも精神的にもさまざまな症状が現れます。

そこで今回は、テストステロンの減少により起こる症状と、テストステロンを増やすために取り入れたい生活習慣を紹介します。

1.男性ホルモン(テストステロン)とは?

男性ホルモンの一つであるテストステロンは、おもに精巣から分泌されるものです。テストステロンには、生殖機能の維持や骨格・筋肉の形成、内臓脂肪の蓄積を抑制するなど、さまざまな働きがあります。テストステロンは、男性が毎日エネルギッシュに活動するための原動力ともいえるホルモンです。

なお、男性ホルモンと呼ばれていますが、男性だけに分泌されるものではありません。男性よりも少量ではあるものの、テストステロンは女性でも分泌され、同じように生殖機能などを司っています。

2.男性ホルモン(テストステロン)が減少するとどうなる?

男性の健康や活力をサポートするテストステロンですが、分泌量が低下するとさまざまな体調変化が見られます。

2-1.男性ホルモン(テストステロン)が減少する年代

男性では、テストステロンの分泌は20代がピークで、そのあとは加齢とともに分泌量が低下していきます。テストステロンの分泌低下にともない、40代から60代の男性ではさまざまな体調変化を感じる方が少なくありません。

ただし、テストステロンの分泌量は同じ年代でも個人差が大きく、症状の有無も異なります。また、症状の発生原因には、加齢だけではなく生活環境の変化やストレスなども関係していると考えられます。

なお、女性の場合は、エストロゲンの分泌が急激に低下する閉経前後に更年期障害の症状が現れますが、数年で症状が落ち着くのが一般的です。しかし、男性のテストステロンの分泌は徐々に低下するため、いつまでも体調変化に悩まされるおそれがあるでしょう。

2-2.男性ホルモン(テストステロン)の減少で起こりうる症状

テストステロンの分泌低下による男性の更年期障害は「加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)」と、呼ばれます。テストステロンが減少する、40代から60代の男性が発症しやすく、さまざまな症状が現れます。

LOH症候群では、ほてり・発汗・肩こり・不眠など、女性の更年期障害と同じような症状が現れるのが一般的です。日本人は欧米人と比較して、意欲低下や不眠などのうつ症状が現れやすい傾向にあります。

また、テストステロンは生殖機能や骨格・筋肉の形成に関与しているため、テストステロンの減少にともない、性欲低下や勃起障害、体力・筋力の低下などが現れることも少なくありません。その他には、内臓脂肪が蓄積しやすくなり、メタボリックシンドロームのリスクも高まるでしょう。

女性のエストロゲンの分泌低下と比較して、男性のテストステロンの分泌低下は徐々に起こるものです。そのため、加齢にともなう体調変化と思われ、LOH症候群と認識されないことも多いとされています。

また、男性では精神症状が強く現れやすいため、心療内科や精神科を受診される方が少なくありません。

3.男性ホルモン(テストステロン)を増やすには?

加齢によるテストステロンの減少はだれでも起こりますが、生活習慣の見直しによって分泌低下を防いだり、分泌を活性化したりすることは可能です。

まずは体作りのもととなる食事ですが、塩分は摂りすぎないようにして、魚や野菜を中心にバランス良く栄養を摂取するようにしてください。メタボリックシンドロームだと、男性ホルモンの分泌量がさらに低下しやすくなるため、健康的な食生活を意識することが大切です。

強いストレスも、男性ホルモンの分泌を低下させる要因の一つです。ストレスを感じて考え事ばかりしてしまうときは、散歩をするなどして体を動かすとよいでしょう。

疲れを感じているときは、無理せずしっかりと睡眠を取ってください。入浴して、気持ちをリフレッシュさせるのもおすすめです。

さらに、適度な運動には、男性ホルモンの分泌を高める効果があります。実際に、平均年齢65歳の男性を対象にした研究では、一日30分の有酸素運動と筋肉運動を3カ月続けたところ、男性ホルモンの分泌量が増加したという結果が出ました。また、一日合計30分程度の有酸素運動を週3回以上行なうと、生活習慣病の予防・改善につながるとされています。

男性ホルモンを増やす生活習慣を取り入れよう

男性ホルモンの一つであるテストステロンは、20代をピークにして年齢とともに徐々に分泌量が減少していきます。それにともなって現れやすいのが、男性更年期とも呼ばれるLOH症候群の症状です。

男性ホルモンの分泌量を増やすためには、バランスの取れた食事、十分な休息、適度な運動などが大切です。男性ホルモンの減少が気になる方、年齢を重ねて体調変化を感じている方は、生活習慣を見直して男性ホルモンを増やす生活を心がけましょう。

監修者情報

氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。