1.血管年齢とは?
血管年齢とは、血管の老化の進行具合を意味する言葉です。血管は加齢によって老化現象が進行すると、血管の壁が老化して硬くてもろい状態になり、血液の流れも悪くなってしまいます。
血管年齢の老化が進む原因は、加齢だけではありません。偏食や運動不足、喫煙などの影響で、実年齢以上に老化が進んで血管年齢が高くなることが知られています。
実年齢が若い人でも、血管年齢が高いとさまざまな病気を発症するリスクが高くなるので、血管年齢は健康寿命を左右する重要な要素といえるでしょう。
自分の血管年齢を知るためには、専門機器による血管状態の検査が必要です。病院でCT検査やMRI検査、頸動脈超音波検査などを行なうと、血管年齢が推測できます。
血管年齢は、生活習慣を意識的に改善すれば、何歳からでも若返らせることができるといわれているので、生活習慣の見直しをしてみてはいかがでしょうか。
2.血管年齢の老化が進む原因
血管年齢が高くなる原因として、加齢が挙げられます。
また、血管年齢を高めてしまう要因として、生活習慣の乱れもあります。具体的には、バランスの悪い食生活や運動不足、喫煙、睡眠不足、ストレスなどが挙げられるでしょう。
食事では、食塩を過剰に摂取すると血液中のナトリウム濃度が高くなり、浸透圧の影響で血液量が増え、血管内部の圧力が高くなり高血圧を招きます。また、脂質や糖質を摂りすぎると血液の粘度が高くなり、血管の内皮細胞を傷付けるリスクがあるので注意が必要です。
運動不足だと血流が滞りやすくなったり、筋肉量が減って血管への刺激が少なくなったりして血管内皮細胞の衰えにつながります。運動不足で肥満になると、血管への負担も大きくなるので注意しましょう。
喫煙も、血管年齢を老化させる代表的な要素です。たばこに含まれている有害物質が血管内を傷付けたり、ニコチンが交感神経を興奮させて血圧上昇を招いたりするとされています。
ストレスは交感神経を興奮させるものです。そのため、継続的にストレスにさらされ続けていると自律神経のバランスが崩れ、血圧などへの悪影響を起こすことが考えられるでしょう。睡眠不足だと心身の疲労がたまり、ストレスへの対処が困難になるので注意が必要です。
3.血管年齢の改善を図るためにできること
血管年齢を若く保つには、前述の血管年齢の老化が進む原因を、日常生活から一つずつ取り除いていくことが大切です。具体的な方法を紹介していきます。
3-1.減塩と栄養バランスの良い食生活を送る
血管への負担を減らすには、減塩などで血圧を適正に保つことが欠かせません。食塩の一日あたりの摂取目安量は、成人男性で7.5g未満、成人女性で6.5g未満とされています。減塩調味料や酢、香辛料を上手に使って塩分の摂取量を減らしましょう。
参照:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
野菜・果物類を積極的に摂るとカリウムや食物繊維を摂取でき、塩分や脂質などの吸収を抑えるのに効果的です。
ただし、腎疾患などで食事制限を受けている場合には、必ず主治医の指示にしたがってください。
3-2.適度な運動習慣を続ける
ウォーキングなどのような有酸素運動は血行促進効果があり、血管内皮細胞に適度な刺激を与えるので血管の若返りが期待できます。息切れを起こすほどの運動は必要ないので、無理なく楽しめるような運動習慣を身につけましょう。
例えば、ウォーキングであれば最初は5~10分、慣れてきたら20分以上を目標とするのがおすすめです。全身の血流が良くなったり、中性脂肪が減ったり、心肺機能が高まったりとさまざまな効果が期待できます。
3-3.その他の生活習慣も見直す
たばこを吸っている方は、血管年齢を上げないために禁煙することをおすすめします。たばこは、副流煙にもニコチンなどの有害物質が含まれているため、家族や周囲の人へ悪影響がおよばないようにするためにも、ぜひ禁煙を検討してみてください。
日頃から、可能な限りストレスを溜めないように意識して、気分転換の機会を多く持ちましょう。睡眠不足を解消するのも、自律神経のバランスを整えて若々しい血管を保つうえで重要です。
血管年齢を若く保つには、食習慣・運動・生活習慣が大切
年齢を重ねると、実年齢とともに血管年齢も高くなるものです。その際、食事や運動など生活習慣が乱れていると、血管をますます老化させる原因となってしまいます。
減塩や野菜豊富な食生活、適度な有酸素運動の継続など、日々の健康への意識が血管年齢を若く保つことにもつながります。無理なくできることから、一つずつ取り入れていきましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。